第三十二 『三十二』
僕はこの文字を書きたくて仕方がなかった。だけど、どのように終わらせばいいのか分からなかった。だから、こんなどうでもいいことをグダグダと書いているんだ。もうこれで終わりにしよう。この世界で終わりにしよう。そうしなければならない。もう最後にこだわるのはやめにしよう。僕は自分の足で進みたい。もう、僕はこんなところにいたくないんだ。
『ガタン、ガタン、ガタン』
電車が動き始める。この電車は公共のものなのか?僕はふとそんなことを考えていた。どちらでも一緒だ。僕の心を惑わすことに変わりないんだから。
『ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン』
僕は歌を唄いたくなった。だけど、周りには人がいる。迷惑だ。僕は他人に対して配慮しなければならない。それが僕の役目だ、と知っている。この世界では常識なのだ。
「革命を起こすんだ、夢を見るんだと誰もが今夜祈るわけは」
僕は唄い始めた。唄い始めた僕を止める奴なんていない。
「革命を起こすんだ、風を待つんだと誰もが胸躍らせるわけは、あ~あ」
良い気分だ。
「リンリンリンと電話が鳴って、呼んでるんだ、熱が騒ぐんだ」
このあとにサビが来る。
「100回1000回10000回……」
『うるせえ!』
僕はいつのまにか電車から降りていた。皆の冷たい視線が僕の元へ集まって来たからだろう。だから、やめて欲しいんだよ。いや、自分が唄っていたせいだからか。まあ、そういうときもあるさ。僕はこれから何をすればいいのかを忘れる。あれから何年経ったのだろうか?もう覚えていない。ただ、僕はこの世界に居続けることにした。もう、色々な世界へと行くのが疲れた。どうでもいい、と思った。そう感じた瞬間、僕の世界に終わりを感じた。
僕はもう子供ではない。大人なのだ。社会へと向かっている。まだ社会人にはなっていないけど。これからまた一社行かなければならない。僕は誰かが採用してくれないかを待つ。だが、誰も僕を見ない。興味がないみたいだ。僕はそのことをいちいち気にしていない。さっさと僕を採用して欲しかった。もう一回だけ別の世界に行こうかな、と思い始めている。よし、今度の土曜に行くか。
僕は歩き出す。このスクランブル交差点のなかへと。僕はひとつの風景となる。もう僕個人の姿は見えない。僕の世界が薄れていく。ここが現実。物語ではない。今日の僕は昔の僕ではない。いつか戻ろう。もう一度だけ。昔の自分に。それが土曜だ。土曜の夜に僕はあそこに行こう。そうすれば、何か変わるかもしれない。一体、僕は進みたいのか戻りたいのか、よく分からなくなってしまった。それでも、今いる世界を変えて欲しい。ここが現実だ、と思いたくない。今の僕の精神にも昔の僕の精神が残っている。そうして、僕は世界へと溶け込んだ。




