第二話 創造魔法
逃げよう。
少年はなにやら危ないものをこちらに投げてくる人達から全力で逃げていた。
どこから出したのか分からない刃物の類いが日の光で煌めいています。
なんだか逃げてばかりで我ながら情けないな。
「当たったら死ぬ!当たったら死ぬ!話聞けよ!?」
そんな言葉で話を聞いてくれる訳もなく、相変わらず追いかけてくる。
てか怒ってんのはわかるけどなんか着て?
しばらく逃げていると洞穴を発見した。
今は追っ手の姿は見えないので、ここに入ってなんとか乗り切れるかもしれない。
そして三時間ほど経ち、ようやく人の声がしなくなった。いつまで探してんだよ。
それと今の自分の格好を思い出す。自分もすっぽんぽんでした…
そうとなれば着る物を作ろう。こんな格好してたら買い物もできない。お金ないけど。
作る、と言っても服の材料が森の中に落ちてる訳もないので そこら辺に落ちているテキトーな木の棒を削り魔力操作ができるよう加工する。いわゆる杖と言う奴だ。
杖があれば創造魔法を使う事ができる。服の創造魔法は、魔力さえあれば使える初級の魔法なのだが、中級並みに魔力を喰う癖に具現時間が短いので、使い手は全くと言って良い程いなかった。
それでも覚えていれば使える時も来る。そう!今の様にね!
杖が完成!早速詠唱を始める。
「精霊よ、我が魔力を用い服を創造せよ」
魔法というのは、魔力という力を媒介に理を曲げる力だ。中には精霊の力を借りるものがあり、今使った創造魔法なんかもその1つである。
ちなみに魔法を発動するだけならば詠唱は必要としない。その場合、詠唱による補正は一切無くなり、魔法技能が同程度なら威力、効果に差違は無くなる。
そして魔法の威力、効果は詠唱で大きく変わる。だが、威力、効果を上げるのは容易ではなく、魔法に合った詠唱の他に、自分に合った詠唱が必要になるので、詠唱の最適解は人によって変わる。
そうなると、まず詠唱をしない、という人が一定数居るのだが。
「ふぅ…こんな感じでいいかな」
格好に気を使ったことがないので記憶の中で最後に来ていた服を再現した。もちろん制限時間があるので新しい服を早く探そうと思う。
「これで持って1日ってとこか…あまり長くないな、早いとこ出発しますかね」
少し歩くと幸運なことに街があった。かなり森を走ったからな…幸運な事に森近くまでこれていたみたいだ。
門番に止められるかと思ったが特にそんな事も無く街に入る。
街の雰囲気は、落ち着いた感じ…なのだが街の人達は街の雰囲気とは違いどこかピリピリしていて、鎧を着込んだ大男ばかりだ。
そんなことより最初の目標はちゃんとした服の確保、次に収入の確保だ。
服がなければ行動を起こそうにも起こせない。
今、具現化している服は1日ほどで無くなるからな。目標の確認も終え、服探しと職探しの散策を始めた。
まずは街の大通りらしいところに出ることにした。
街の中心に近づくほどピリピリした雰囲気が消え、穏やかなそうな人達が増えてきた。
この大通りには様々な店が構えており活気に満ちている。
美味しそうな匂いがどこからともなく漂って来て、食欲を刺激する。そういえば目が覚めてから一度も食べ物を口にしていない。
「腹減った…」
お金が無いので買えない。ちょっと前までお金が無くても食べていけてたんだけどな…
過去の事を考えても仕方ない、ともう一度歩き出そうとした時、突然、けたたましく鐘が鳴り出す。
すると回りの人達の落ち着きがなくなった。顔つきも心配そうな表情になっている。
泣き叫ぶ子供、家に入り鍵をかける者、皆がなにかに怯えていた。
少年も歩き出す。皆が逃げる方向…とは逆に。入ってきた門の方向だ。
「気になるもんな!仕方ないよな!」
声を出して自分に言い聞かせる…いや、言い訳をした。
今、少年はかなりの割合で好奇心により動いている。
数分歩き、門の所まで来たのだが…その様相に息を飲む。
あまりにも自分の記憶と重なってしまった為に。
人が倒れ、逃げ惑い、建物が壊れ…そして一人の少女がその元凶と思われるものと対峙していた。
9/19 改稿しました