ある日やってきた猫
ある日、ぼくの家に猫がやってきた。初めて会った時、その猫は大きな怪我をしていた。話に寄れば、外で倒れていた所を拾ってきたらしい。もっとも、そんな理由はどうでもよかった。ぼくは猫が苦手なのである。汚いし臭いし、なによりぼくを見下すような目で見てくる。
でも、時には優しくしてくれることもあった。ぼくが落ち込んでいたら、そっとそばに近づいて、「にゃー」と一言声をかけてくれる。
次第にぼくは、猫をかわいいと思うようになっていた。これからもずっと一緒にいたいと考えるようになっていた。
けれど、猫は死んだ。
もともと病弱な身体だった上に、怪我をしたから、余計に危ない状態だったらしい。そうとは知らずに、ぼくは猫に幾つかの悪いことをしてしまった。それだけで、涙が出そうだった。
家の前に、猫の墓が建てられた。ぼくは墓に近づいて、小さく鳴いた。
「ワン!」
天から、猫の声が聞こえた気がする。