目覚めるとそこは
目を開けると、紅太郎はベットの中に横たわっていた。
……ここは……どこだ
布団に入ったまま首を動かし、あたりの様子を伺ってみる。しかしそこはまるで見覚えのない部屋だった。
周囲の様子を確認しようと起き上がろうとする。
「ぐっあててて」
紅太郎は身体を走る痛みに声を上げていた。
それと同時に、先程の六花との戦いを思い出す。
「あの野郎むちゃくちゃしやがる」
自分の体をチェックしながら、紅太郎はつぶやく。
六花に体当たりを食らわし、動きを止めたところまでは良かったのだが、その体勢、いやつい口から出た言葉が悪かった。
自身の身体を軽く動かして怪我の具合を診てみるが、どうやら不自然な程に怪我はない。
怪我は既に完治していて、先程の痛みは治療の名残である事に気づく。
「?」
怪人状態の紅太郎ならともかく、いまの紅太郎が六花の全力攻撃を受けてこの程度で済むわけがない。
おそらくは気絶した紅太郎をここに運び、治療を施した者がいるのだろう。もしかしたらやり過ぎたと思った六花、本人かもしれない。
とりあえず身体に異常が無いことは確認できたため、部屋の中を調べる事にした。
組織の俺の部屋とも異なるし、かといって治療室でもない。そもそも自分はいま英雄機関に来ているはずだ。とすると……紅太郎が可能性の一つに思い当たったところで、突然ドアが開いた。
「あっ」
目の前には紅太郎の宿敵、兼ターゲットの神前桜花がドアの前に立っていた。
魔力精製!身体機能強化っ!!
とっさに自身に魔力を循環させるが、手遅れな事に紅太郎は気づいていた。この距離はこの女にとって、必殺の間合いだ。
「紅太郎っ」
紅太郎に向かって突進する桜花。そのスピードに反応できるわけもなく、紅太郎はなすすべもなく床に倒されーーそのまま抱きしめられていた。
「うぅっ。紅太郎っ。紅太郎っ!良かった本当に良かった!うぁあああー」
紅太郎は自分の胸の中で泣きじゃくる、宿敵にどうしていいのかわからず、そのまま呆然としていた。