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洗礼

「お待ちしてましたわ」

 

 どこから現れたのか、気がつくと目の前に英雄機関のヒーロー、神前六花(かんざきりっか)が目の前に立っていた。


 神前桜花の2つ年の離れた妹で、英雄機関サイタマ支部では最年少のヒーローだ。

 しかしその実力は、折り紙付きで英雄機関サイタマ支部においても、姉の桜花に次ぐ能力を持っていた。


 普段から桜花に似た好戦的な眼差しをしている、と紅太郎は思っていたが、今日はいつにも増して険しい目つきをしていた。

 

「あなたが九条紅太郎ですわね」

「ああそうだが」


「初めまして。私、神前六花と申します」


 もちろん紅太郎は六花の事を知っていた。ナインライブズの怪人、ブラックガードとして、幾度となく戦闘を繰り広げている相手だからだ。


「ああこちらこそよろしく!」


 今後の事も考えて、対人コミュ力の低い紅太郎はできる限り爽やかな笑顔を浮かべ、六花に一歩近づく。


 しかしそれに対し、六花は警戒心を隠そうともせず、紅太郎が詰めた距離の分よりも大きく距離をとる。


「あ、あのーどうかしました?」


 紅太郎は困惑した様子で尋ねる。すでに顔に浮かべた笑みは引きつっていた。


「早速なのですが、あなたにはこのまま英雄機関に入ることなく引き返してもらいます」


 六花から紅太郎に向け殺気が放たれる。


 ーー既に作戦がばれているのか?


 そう思った紅太郎は周囲の気配を探ってみるが、既にヒーロー達に包囲されている、というわけではなさそうだった。


「それは私もですか?」

「……い、いえ英雄機関はいつでも強い正義の味方を募集しています。どうぞお入りになってください」


 六花は雪乃には中に入るように促す。


「なんで俺だけ入れねーんだよ」

「あなたに話す必要はありませんわ」


 キュイン


 言いながら六花の体は光に包まれる。


 ーーまさかっ変身!?


 嫌な予感を感じ、紅太郎は横っ飛びにその場を跳躍する。


 ザシュウッ


 その直後、紅太郎のいた空間にレーザー光線が突き刺ささる。背後にあった英雄機関の外壁が、バターの様に切り崩される。


「てってめえ何考えてんだよ!当たったら死んでたぞ!!しかも今のお前の必殺技のフォトンレーザーだろ!?ヒーローが一般人殺してどーすんだよ!!!!」


「だ、大丈夫ですわ。次からはセーフティをかけて訓練用の弾にしますわ。よほど打ち所が悪くない限り死んだりしませんことよ」


「次からって……やっぱ最初の攻撃食らってたら死んでたんじゃねーかよ」


「………………」

「………………」


 六花の頬をつたう一筋の汗が、全てを物語っていた。


「くっ問答無用ですわっ」


 六花は、両手に拳銃を持ち替え、紅太郎に向けて弾丸を放つ。

 弾が訓練弾かどうかまではわからなかったが、弾速は遅い。


 ーーこれならばっ


 瞬時に弾丸の軌道にシールドを張り、弾丸を迎え撃つ。


 キンッ


 紅太郎の張ったシールドは、怪人の時よりも比べものにならないほど弱くなっていたが、どうにか弾を防いでいた。


「っ!?これはっ!ずいぶん悪趣味な能力をお持ちのようですわねぇ」


 コメカミにに青筋を浮かべながら、手に持っていた拳銃を投げ捨て、代わりに背中から銃を取り出す。明らかに先程の銃よりも殺傷能力に優れた大口径の銃をこちらに向ける。


「お姉さまは誰にも渡しませんわっ!!」


 ズドドドドッ


 ーーこれは!まずいっ!!


 シールドを多層展開して弾丸を防ぐが、その強度はもろく、次々と弾丸が貫通し始める。


 全力でシールドを展開するが、今の紅太郎の演算能力では防ぎきる事は出来そうもなかった。


「ぐっ!?」


 貫通した弾丸が紅太郎の肩口を捉える。


 実際、六花の放っている弾丸は訓練弾に変えられていて、紅太郎に深刻なダメージを与えるほどではなかった。


 しかしその衝撃は無視できる程度のものではなく、紅太郎の集中力を乱す。


 その結果、シールドの強度が弱体化し、更に無数の弾丸が紅太郎に襲いかかっていった。

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