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「烈夜?話聞いてるの?」



ん?ここはどこだ。辺りを見回してみると、ここは懐かしさを感じる玲の部屋だった。俺はベットに腰をかけている。太腿の上には玲の顔があった。その顔は少し頬を膨らませて俺を見上げていた。



「俺の半分が寝ていて、もう半分はぼーっとしていた」



話の内容はよくわからないが誤魔化しておこう。



「ちゃんと聞いててよねー」



懐かしい玲の声、表情、仕草を感じてつい頬が緩んでしまう。俺の微笑を見て玲は表情をなくして言った。



「烈夜のせいだからね」

「…え?どういうことだ?」

「烈夜が守ってくれれば私は死ななかったのに。そんなことを烈夜に望むのは酷だったね。ならこう言うしかないよね」



驚きで目を見開いている俺は一度瞬きをした。瞬きによって世界が変わった。



真っ暗な世界の中に玲らしき人がいた。そう、首がない人がいた。首のない玲は続ける。



『烈夜さえいなければ』



その言葉と共に首のない玲は闇の彼方に吸い込まれていく。



「待ってくれ…。玲、待ってくれよ…。玲、玲、れ…い」



言葉を絞り出しても全て虚しい虚空に吸い込まれていくだけだった。焦り、悲しみなどの不安の渦に飲み込まれ、俺はだんだん意識が遠のいていき、遂には意識を失った。



ーーーーーーーーーーーーーー



「…リ…リー…リー!」



断片的に音を拾うことが出来る。薄っすら目を開くと俺はネイトに見下ろされていた。なんだこの状況は。とりあえず、身体を起こすことにしよう。



「ネイト、どうかしたのか?」



俺はしっかりと目を開けてネイトに問うた。



「やっと気がついたか。リー、君はだいぶ苦しそうだったぞ。うわ言も言っていた」



そっか、さっきまでのは夢だったのか。ふわふわしたこの気持ちは良いものではないなと感じた。



「すまん、少し昔のことを夢に見ていた。もうなんともない」

「何かあったら言ってくれよ、あまり役に立たないかもしれないがサポートはするから」



こんな弱気になるとは思わなかった。気をつけないとな。でも、いくらなんでもあの夢は見たくなかった。



陽は一つから二つになり、落ちきる寸前だ。直に暗くなるだろう。



陽は東と西から昇る二つがある。さらに満月になると接する二つの月もある。一年は三百六十日あり、季節は春夏秋冬あり一月三十日で三ヶ月区分だ。今はまだ春だ。



「春になったばかりだからか、まだ少し肌寒いね」

「あぁ」

「そろそろ戻ろうか」

「あぁ」

「私はシャワーを浴びたいからその後にでも食堂にでも行かないか?」

「わかった。シャワーを浴び終えたら迎えに来てくれ」

「うん、では行こうか」



ネイトはゆっくりと立ち上がり俺の方に中腰になって手を伸ばしてきた。



「ほら、行くよ」



俺はネイトの手をしっかり握り、起き上がらせてもらった。俺たちは無言のまま部屋の前まで向かった。



「一時間後ぐらいと見積もっていてくれ」

「わかった。金はどのくらい必要なんだ?」

「君は特待生だろ?特待生は悪いことをしない限りどの施設も利用できる特権があるんだよ。普通の生徒では閲覧できない資料を見たりでき、すごいことなんだよ。それと、普通は入学費とかで施設維持費とかは確保されているから食堂は無料だよ」

「それは知らなかった」

「だから手ぶら来てくれてもいいぞ。では後でな」



軽く手を振り自室に戻って行った。俺はそれを見送り部屋に入ろうとしたが気づいた。鍵がない。結果から述べるとすぐに見つけることは出来た。玄関の横にポストが付いていたのは驚きだった。そこを開けると大量の学生ギルドからの募集と鍵が入っていた。鍵は魔法で体内に保存されて部屋の鍵の開け閉めは手で触れるだけで出来るようだ。非常に万能だ。



俺は部屋に入ると、まず第一に部屋の広さに驚いた。寝室や勉強部屋など分けられていることに嬉しさを感じた。リビングには【新入生へのしおり】とかいうのが置いてあり、一通り目を通した。ここでまた驚いたことは冷蔵庫もどきこと魔道具の中には食材が入っていて使用した具材は一時間経つと補給されるらしい。ここにゲームなどがあったら完璧ニート生活を送ることが出来るぞ。



時間はまだ余っていたから一応俺も風呂に入った。この世界では洗髪料とかはない。だから俺はシャンプーなどを作り出し久しぶりの風呂を味わった。ちなみに、生活魔法で身体を洗うことは出来るらしく魔力があれば平民でも使っている。この世界の文明はかなり発展しているようだ。



風呂を上がってもまだ時間が余っていたため、学生ギルドからの募集用紙を眺めていた。見ていてわかったことは、冒険者ギルドとは別にこの学院にいる生徒は必ずどこかのギルドに所属しなければいけないらしい。友達などとギルドを作っても良し、学年ギルドに入っても良いらしい。優秀な生徒が集まっているギルドほど募集条件は厳しい傾向がある。ギルドは最少人数で3人は必要らしい。一人でギルドを作ってのんびりしようと思ったがそう簡単には行かないようだ。学生ギルドは課外授業時に活動をするが冒険者ギルドでそのまま登録することも可能らしい。まぁ、俺には全てどうでもいいことだ。学年ギルドにでもいれば適当にサボりながらでもやっていけるだろう。



コンコン



募集用紙を見ていたら時間が来たらしい。色々な情報を得ることが出来たこの一時間はかなり有意義なものとなった。学院に来たのは正解だった。



「さぁ、行こうか」



俺は頷き魔法陣の上に乗った。転移した瞬間、いきなり辺りが騒がしくなっていて、さらに食欲をそそる良い匂いがする。俺が不審な動きを見せていると、ネイトが笑いながら教えてくれた。



「あの魔法陣は行きたい場所を願えば禁止区域以外はどこでも行けるんだよ。便利だと思わないかい?」

「思う」

「とりあえず席を確保してからご飯を選びに行こう」

「わかった」



直ぐに二人席を確保した俺たちは各々の好きなご飯を取って戻ったが、変な奴らが座っていた。ネイトの耳打ちによると学院の問題児だそうだ。面倒なことになりそうだが、俺の手駒にもなるかもしれないから慎重に行動しよう。

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