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「お前らを見つけるのにかなり時間をかけてしまった。だが俺は二度も同じ失敗はしない。ここで大人しく捕まれ!」

「断る、以上」

「お前に拒否権はない」



この先のこともあるし早々にこいつとはかたをつけておきたい。和解案を提案するか。



「じゃあ、どうしたら許してもらえるんだ?」

「まず言葉遣いを正せ」

「すまんが生まれてこのかた敬語を知らないから無理だ」

「ふん、なら身分証明書を見せろ」

「ほらよ」



冒険者ギルドで登録時に渡されていたギルドカードという物を渡した。名前と種族と年齢が書いてあるだけのただのカードだ。こんなのを見てどうするっていうのだろう。



俺が疑問に思っているとマリリンが小声で教えてくれた。



「あれは犯罪履歴や指名手配されてないか確認してるのよ」

「どうやって?」

「その二つのことがあるとカードが赤く染まるのよ」

「なるほどな」



そういえば、こいつって俺らの顔を知らないんじゃないか?前回こいつに会った時にはフードを深々と被っていて、今も深々とフードを被っている。だから学院に入ってもバレることはないんじゃないか?



「おい、いくら言葉遣いが悪くても態度って物があるだろう!フードを取れ!」



これはあれだな。物的証拠が見つからなかった時にやる八つ当たりだな。ここでまた拒否したら不敬罪とか言うんだろうな。なら素直に取ろう。



「これでいいか」



俺はすんなりフードを取った。マリリンはそれが意外と思っているのか驚いている。マリリン、俺も驚いている。だが、俺も多少はこの身体になってから自信がある。目が細すぎるのが難点だが他は整っている。三人に一人にはかっこいいと言われてもおかしくないはず。マリリンは十人中十人が美人と言うような美人だけどな。そのマリリンはフードを被ったままだった。



「くっ…!そこの大きいの!お前もだ」



俺が意外とかっこよかったと感じたのか、若干悔しがりながらも次はマリリンに標的を変えた。マリリンは恐る恐るフードを取った。



次の瞬間、そいつはマリリンの前に跪き名乗っていた。



「私の名前はカトレーヌ・ベルズ・ヌジケスと申します。先程までの数々の非礼、本当に申し訳ございませんでした。なので、まずはお友達から仲良くしてもらえませんか?」



凄い態度の変わりようだ。俺はそういう奴は嫌いじゃない。



「親戚のリー共々よろしくですわ」

「はい。先程までの全て無かったことにします。リー、仲良くしてくれ。というよりも困ったことがあったらすぐに俺を呼んでくれ。友の為なら何者をもいとわない」

「お、おう」

「これから学院ですか?」

「ええ」

「送ります。二人とも」

「どうやって?」

「これで」



そう言ってヌジケスは後ろの馬車を指差した。昨日は馬乗って探してたのに今日は馬車でやって来たのか。俺たちは馬車に乗った。



道中にヌジケスは色々とマリリンに話しかけて気を引こうとしていた。無駄だと思うがな。



それからしばらくして学院の門まで着いた。基本的に学院は閉鎖的のため、課外授業の時以外は門は堅く閉ざされている。別れを惜しむ言葉をかけてくるが、ヌジケスに対してそんなに思い出はないので聞き流した。



前回受付が設置されていた場所には既に何も無く、代わりに案内板が立っていて新入生は左の扉から、新任の教員は右の扉からだ。入口が違うらしく俺とマリリンはお互いに軽く声をかけ別々の道を歩む。



扉を開けると中は喧騒に包まれていた。話を盗み聴きしたところ、右は教室棟になっていて、左に行くと寮に繋がっているようだ。俺の用は左の寮のため、たくさんの生徒の間を抜って行く。比較的に大きい奴が多かったせいで寮への道は見えていなかったがなんとか辿り着いたようだ。寮に向かうには階段を登らないといけないみたいだ。階段は正方形のエリアに作られていて中央が吹き抜けになっている。軽く上を覗いてみるとかなりの高さがあった。俺が呆然としていると下から声が聞こえてきた。多少驚いたが地下もあるみたいだ。どうしたものかと考え、突っ立っていると声をかけられた。



「君は新入生かな?」

「あぁ」

「名前を教えてもらえるかな?教えてもらえれば部屋を案内出来るんだけどね」

「お前は誰だ?」

「おっと、これは失礼したね。私はこの学院の生徒会長をしている、エリンダ・ノーレント・ネイトだ。一応この国の第一王女でもあるが、敬語とかは使わなくていい」

「わかった。俺の名前はリッパーだ。何処に部屋があるのか全く見当がつかないから案内してもらえるのはありがたい」



無意識のうちに警戒しているのか、この王国に来てから妙に口調が堅くなってしまう。直すように心がけよう。



「ええと、リッパー君ね…、あった!君、すごいじゃないか!!今年の新入生は過去最多の五百名いると聞いていたが、十人しか入れないSクラスとは驚きだ」

「はぁ」

「ということは、やはりな、最上階の一室の0001号室だ。通常は四人で一部屋なんだが、Aクラスは二人で一部屋、Sクラスは一人一部屋と破格の待遇になっている。では、案内するからついて来てくれ」



そう言って階段を登るのではなく中央に向かって歩いて行きこっちに振り返って止まった。俺とネイトは数秒見つめ合う。



「何しているんだい?」

「こっちのセリフだ。ネイト、お前はそこに突っ立って何しているんだ?」

「あ、説明が足らなかったね。僕の足元を見てごらん」



俺は言われた通りに視線をネイトの足元に落とすと魔術式を確認した。



「魔術式か…」

「ん、古い言葉を知っているんだね。今は魔法陣と呼ばれているよ。昔の魔術を研究していた…」

「グイヤス・ルベルのことか?」

「よく覚えているね。その人が開発した魔術式に少し改良を加えて、今の魔法陣は出来たんだよ。説明はこれくらいでいいだろう。ほら、私の横においで」



俺がネイトの隣に行くと急に魔法陣が光り、次の瞬間には景色が変わっていた。周りにいた沢山の学院生が消え、喧騒もなくなり静寂になっている。俺は中央の吹き抜けの上下を見直したが上は天井で、さっきまで辛うじて見えていた最下層が全く見えなくなっていた。ようやく転移したってことに実感した。



「リッパー君、この0001号室自由に使って構わないよ。ちなみに「部屋を改造してもいいけど壊すな」が学院からの通達だからね」

「わかった」

「わかんないことがあったら気軽に0002号室に来てね」

「何故隣にいるんだ?」

「新入生の面倒は上級生が見ることになっているからね。だから普通子のの両隣は上級生になっているんだけど、首席の子だけには一人しかいないのよ」

「その首席は俺なのか?」

「そうよ」

「わかった。ネイトとは付き合いが長くなりそうだな」

「そうだね。まだ後三年は学院にいるしね」



この学院は最短で三年で卒業出来る。そんでもって、二十歳までに卒業をしなくてはいけない。卒業単位が取れなかった場合は中退扱いとなる。力こそが全ての弱肉強食な学校となっている。そのため、生徒会も学院で強い者がなる。ようするに、現生徒会長であるネイトは学院で一番強いというわけだ。仲良くしといて損はない。あわよくば、仲間とすることも悪くないだろう。



「俺のことはリーって呼んでくれ。呼びづらいだろうからな」

「わかったよ。でも、なんで急に?」

「いや、友好を深めておいて悪いことはないからな。俺は変な絡まれやすい体質みたいだから友達なんか出来なそうだしな」

「なるほどね。これから時間は空いているかい?」

「あぁ」

「ならちょっと面白い所に行かないかい?」

「構わない」

「よし、行こう!」



ネイトはまた俺に背を向け歩き出す。こいつといると面白いことが起きそうで興味が尽きないな。一体何処に連れて行ってくれるのだろうか。

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