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遅くなりました
2〜3日に1話のペースで頑張りたいと思います
案の定、俺より早く試験が終わっていたらしくマリリンが待っていた。
「随分早く終わったんですわね」
「まぁな。お前の口調はもっと崩していいぞ?親戚なんだからもっと親しい感じにしとかないとな」
「わかったわ」
「よし、素直な奴は嫌いじゃないぜ。とりあえず、今日泊まる宿を探さないといけない。俺は明日から寮に入れるらしいからな。後、なんか特待生になっちまった」
「当たり前よ、リッパーだもの」
「あ、そうだ。親しい奴は呼び方を変えよう。そうすればもっと親戚感が出るはずだ。何にしようか?」
「じゃあ、リーなんてどうかしら」
「思いつかないし、それでいいや」
所詮愛称だしな。グリムリッパーからリーって大分短くなったな。
「宿探しするか」
「そうね」
「その口調なんだかんだで合ってるな。これからずっとそんな感じでいいぞ」
俺たちは仲良く手を繋ぎながら歩く。門を出てから暫くすると宿屋を見つけることが出来た。けど、面倒なことにさっき無視して素通りした、えーと…誰だっけ?誰が必死に俺たちを探していた。俺たちがこの街に来たのは朝方で今は夕方だから大分長いこと探していることになる。こいつら暇なのか?マリリンに至っては微笑んでいる。瞳にはかなりの殺意が灯っているがな。
「先に身分を証明出来るものを作る為にギルドにでも行くか?」
「そうね、どのギルドにするの?」
「一応選択肢を聞いておこうか」
「ギルドの大元は冒険者ギルドで、職業ごとで色んなギルドに分岐してるわ」
「なら、暗殺者ギルドとかあるか?」
「あるわ」
「そこにしよう。どっちにあるかはわかるか?」
「冒険者ギルドの位置はリーを待っている間に聞いておいたわ。幸運なことにこから左よ」
正面の俺たちを探している誰かを軽く睨みつけながら、マリリンは俺の手を引いて行く。こういうのも悪くないな。
冒険者ギルドは非常に大きく、中にたくさんのギルドが入っていて賑やかだった。入って直ぐの広場では各ギルドのメンバーがパーティを組む為に必死に交渉をしている。俺の目的のギルドは中央奥のギルドだ。中央をくり抜いてある為、二階のギルドの看板も見える。こういう造りも悪くないな。
「俺は暗殺者ギルドだけどマリリンはどうするんだ?」
「私は魔法使いギルドにでもするわ」
「なら終わったら此処で待ち合わせな。またな」
俺は暗殺者ギルドに踏み込んだ。中に入った瞬間に色んな奴に睨まれた。殺気立ってるな。
「ガキが何しに来た。冷やかしならさっさと出て行け」
受付はハゲのおっさんだ。俺がガキだから冷やかしだったと思ったのだろう。そういう時は実力を見せるに限る。俺は時空魔法は使わずに単純な個人の能力の瞬間移動でハゲの後ろに移動した。その流れる動作で首元にナイフを当てる。
「…なん…だと…!?」
「これでもか冷やかしだと思うか?」
ハゲは驚きで言葉に出来ないようだ。回りの暗殺者達は二〜三人を除き、驚きを隠せない様子だ。
「そこまでにしてやってくれ。エゲタさんは忠告しただけだからな」
俺はナイフをフードの中に納め話しかけて来た男に向き直る。男は一般人のような格好をしていて音を立てずにやって来た。こいつは驚いてなかったやつの一人だな。相当な実力者のように見える。
「あんたは?」
「俺はネトだ。俺自身はSランクでソロで行動している。君は?」
「俺の名はリッパーだ。呼び辛かったらリーと呼んでくれて構わない。俺はこの暗殺者ギルドに登録したくてやって来た」
「なるほどね。エゲタさん、登録希望だって。早くしないと期待の新人を逃しちゃうよ」
「お、おう。リッパーと言ったな?お前は他のギルドには入っていたか?」
「好きに呼んで構わないぞ。いや、入っていない」
「暗殺者ギルドについての説明はいるか?」
「あぁ」
「このギルドには暗黙のルールというものが存在する。それを破るとギルドから追放されるから忘れないで欲しい。一つ目のルールは真名と偽名を使い分けることだ。暗殺者ギルドは裏稼業だ。正体がバレると復讐される可能性があるからな。正式にギルドに入ると偽名が与えられる。仕事の時はそっちを名乗ってくれ。もう一つはギルドの仲間に暗殺依頼が来ても断ることだ。ここには訳ありの奴らが集まるからな。最初はこのぐらいを知ってればいい。追い追い他のも教える。ここまでは大丈夫か?」
「あぁ」
「質問はあるか?」
「ない」
「ではここに必要事項を記入してくれ」
またかよ。俺は名前と年齢を書いた。
「これで登録は完了だ。次は偽名だな。仕事で使い続けることになるからな。ちゃんと決めないとな」
「任せる」
「安直だが"影"でどうだ?」
「なんでも構わない」
「じゃあ決定だ。何か依頼を受けて行くか?」
「いや、俺も一応学院生だから数はこなせない」
「なんだと!?その歳で学院生なのか!」
「明日から寮生活だからな。空いた時間に受けに来るようにするよ。またな」
登録が終わったので俺は早々に暗殺者ギルドを出ようとしたが止められた。
「待て!暗殺者ギルドは他ギルドが疎まれる傾向があるから裏口から出入りするようにしろ。それとこれを」
俺はエゲタが投げて来た仮面を受け取る。仕事用と出勤用の仮面だ。大事に使えよ。その仮面は骨張った顔が描かれていた。でも、悪くはないな。俺は仮面をつけ案内された裏口から出た。面倒だが冒険者ギルドを半周回って正面の入り口に戻ってきた。待ち合わせの場所に行くと人集りが出来ていた。
その中心にいたのはマリリンだった。