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まずは受付を探そう。キョロキョロ辺りを見渡しているとマリリンが先に見つけたみたいだ。



「グリムリッパー様!見つけましたよ」

「マリリン、俺のことは今日からリッパーと呼べ。一応偽名にしておくに越したことはないからな。後、様はいらない。逆に怪しまれてしまうからな」

「わかりましたわ。リッパー、行きましょう」



俺はマリリンに手を握られ歩き出す。いくらなんでもこの歳で手を繋ぐのは恥ずかしいな。マリリンは学院に着いてからフードを脱いでいる。その為、外見で回りを引きつけてしまっている。神界では魔神で七罪の一柱を担っている嫉妬でも、この世界に降りてからはマリリンという一人の女だ。なんか妙に誇らしいな。



なんだろう、俺には無駄な感情が多いような気がする。学院に入ってからは常に回りに気を配り冷徹にいよう。俺はここで青春ごっこをしに来たわけではない。この魔法学院では今の世界のレベルを見極め、優秀な部下になりそうな者を探す。ちゃんとしなきゃな。じゃないとまた同じ過ちを繰り返してしまう。



いつの間にか受付の前にまで来ていた。



「私は教師になりに、親戚のリッパーは入学しに来たんですけど、どうすれば入れます?」

「まずはこの紙に必要事項を記入して下さい」



渡された紙には名前、歳、種族、出身国の四つの項目があった。名前と歳は大丈夫だが後は書けない。でも、種族は一応人族でいいか。出身国はどうしようかと思いマリリンを伺うと、とても悩んでいた。この手はありかな?



「書き終わった」

「はい、ありがとうござい…出身国はどちらですか?」

「秘匿って無理か?」

「可能です。では、秘匿でよろしいですか?」

「あぁ」

「はい、私も同じですわ」

「二人とも受付は終わりました。次は試験を受けてもらいます。教師志望は右手の受付へ、入学希望は左手の受付へ行ってください」

「質問いいか?」

「答えられる質問なら」

「試験の内容を教えてくれ」

「魔法の才能、ただそれだけです。他にありますか?」

「ない」

「では、頑張ってください」



俺とマリリンは一度受付を離れ落ち合う場所を決めた。試験が終わったら校門で落ち合う。何かあった場合は魔法を高々と打ち上げる約束だ。後は目立たないようにするのが目標だ。



「また後でな」

「はいですわ」



俺は試験会場へやって来た。試験会場は三つに別れていて並んで待つらしい。ちなみにその場で合否を言われるみたいだ。こんなに大っぴらに言われるのも精神的にきついだろうな。



「合格」

「よっしゃゃゃ!!」



あれはあれで恥ずかしいな。俺もさっさと並ぶことにした。並んでしばらく経つと後ろに並んでいる奴らが騒がしくなって来た。なんだかその原因は段々近づいて来ているみたいだ。



「おい、俺はアルベート王国の第二王子、アルベート・ルベルだぞ!道を譲らんかい!!」



子分を二人そばに連れちょい悪なイケメンがやって来た。身体はがっしりしていて年齢は十台後半だろう。この魔法学院は十歳から入れるらしいから、俺はどうやっても最年少だ。年功序列ってのは大事だと思うが、親の権力にすがる奴は嫌いだ。俺は無視することにした。



「おい貴様、わかっていて無視しているのか?」

「どけや」

「どけや」



両耳で交互に言うな子分どもが。耳が痛いだろ。そう思いつつも無視する。



「貴様ッッ!!これでもくらえ!」



火球(ファイヤーボール)を放ってきた。俺はそれを避けた。当然、俺の前にいる奴に当たるわけだ。



「痛ッッ!誰だよ、火球なんか飛ばしてきた奴は!」



前の奴は後ろ向き当てた奴を探す。が、貴族と子分は俺のことを指差している。いやいや、この距離で火球とかやったら俺もダメージ受けるから、考えればわかるだろうに。間は五十センチぐらいしか空いてないからな。



「こいつなわけないだろ!火球やるにしても近すぎるし、さっきの揉め事の原因はお前だろ!」

「な、なんだお前は!俺はアルベート王国の第二王子のアルベート・ルベルだぞ!」

「知ったこっちゃねぇ!この学院の敷地に入ったらもう身分なんか関係ないんだよ!世間知らずの坊ちゃんが来るところじゃねぇぞ」



喧嘩になって大変だな。俺はその隙に前に進ませてもらう。貴族らを避けるように俺の後ろに蛇行した新たな列が出来ていた。これで俺には実害はなく、喋ってもいないんだから関与も否定出来ると。



「君たち、やめないか」



この学院の先生が見兼ねてやって来たようだ。俺はそんなのに付き合って悪目立ちしたくないからな。さっさと終わらせよう。



俺の番がそれから十分ぐらいして来た。あいつらはまだいがみ合っているのか怒鳴り声が聞こえる。



「君の名前はリッパー君であっているかな?」

「間違っていない」

「ふむ、何か魔法を使ってみなさい」

「なんでもいいのか?」

「クラス分けには実力が必要だから上のクラスに入りたかったら、全力を出したまえ」



目の前の偉そうな女教師を驚かせてやろう。実際、偉そうなのは俺もそうなんだけどな。



俺の魔法は道中で何度か試し打ちしたが、邪神の邪悪な心のせいかわからないがどの魔法も黒く染まっている。こんなのは普通ありえないらしい。マリリンでも普通の魔法を使える。どうしたものか。



俺は先ほど会ったヌジケスの時と同じように、時空魔法を使うことにした。この世界ではまだ人族が時空魔法を使うことが認知された例はない。でも、誤魔化せばなんとかなるだろう。



「今からやるが凄い魔法だ。疑ってもいいが認めろよ?」

「やってみたまえ」



俺は腕を頭上に上げ指を鳴らした。



パチン



次の瞬間に俺は女教師の前の机の上にナイフを百本置いた。



「何回でもいい俺を殺すつもりで投げてみろ」

「いいのだな?」

「あぁ」

「言質は取ったぞ。死んでも責任取らないからな」

「フッ、俺は死なない」



俺が喋り終わる前にナイフを投げ始めた。俺はその場で小さく指を鳴らした。飛んできた全てのナイフを俺は身体中にしまい込む。一応、俺の武器だから大切にしている。



二十本近く投げて女教師の動きが止まった。それもそうだろう。大見得切って殺しに来たのに一本も当たらないんだからな。ついでに俺は一本だけ投げ返してやった。そのナイフは机に深々と刺さっている。あ、これって魔法だって認めてもらえるかな?



「素晴らしい…。身体強化をそこまで使いこなせるとはこの子は逸材だ!いいだろう合格だ。Sクラスにしといてくれ」



興奮しながら宣言し、横の先生に俺のクラス分けにまで関与していた。あの人のこの学院での地位はなんなんだよ。



俺は試験が終わったため、ナイフを全て回収し別の場所に連れてかれて入学手続きを済ませた。この学院は全寮制らしく明日から寮に入ることになった。Sクラスの生徒は特待生扱いになる為、お金はかからないらしい。マリリンの言うことを信じると、後で軍に情報を売ったりとかして儲けるだろうからそのぐらいは気にしないってことだろう。



俺の侵入は成功した。待ち合わせ場所に戻ろう。

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