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遅くなりました

バチバチバチ



落ちている木の枝を拾い集め火を発現させる。これで焚き火の準備は万端だ。問題があるとしたら、俺の魔力の根源が闇であるため火が黒い。そのせいで陽が落ちた今は辺りが見えなくて困っている。俺もマリリンも夜目が効くから見えないなんてことは無いがな。これは気分の問題だ。



今はブロックとなっている肉に木の枝を突き刺し焼いているところだ。黒炎は使い勝手が悪そうだな。黒炎を使えば邪神とバレることは無いが魔族だと思われてしまう。これは俺の前世の経験談だ。



肉にちゃんと火が通っているのかわかりやしないじゃ無いか。ったく、マリリンの奴は何処に行ったんだ?



俺は我慢が出来ず焼けているかどうかもわからない肉に喰らいついた。上手く処理がされていない肉のため、匂いは良く無く肉も硬い。味は調味料が無いため美味しくない。第一、俺は肉なんか食べなくても生きていける。前世でアースという生活水準の高い場所に居た。そのせいで、俺の舌は肥えてしまっていた。それを一回でも最低を経験することによって、何が起きても動じないように訓練をしている。



栄えある訓練用お肉の材料は人間の肉だ。先ほどの盗賊の処理に困った俺らは人間を解体することにした。そのまま持ち運ぶと肉が腐ってしまう為、俺が作り出した宝物庫に入れておいた。宝物庫とは簡単に説明するとアイテムボックスだ。いつでもどこでもアイテムボックスにあるものを念じるだけで手元に出すことが出来るレアなものだ。しかし、マリリンに聞くと文明が進化しているらしく、お手頃な値段で売っているそうだ。サイズごとに分かれていて上限も決まっている。俺のは上限とかないから優秀だ。



俺にはもう一つ武器庫がある。これは屋敷で漁ってめぼしいものだけが入っている。じっくり見ることが出来なかった宝物庫も丸ごと入っている後で選別するつもりだ。



俺が何も考えずに肉に喰らいついているとガサゴソと音を立ててマリリンが戻ってきた。



「おい、今まで何処に行ってたんだ?」

「えっと、ちょっとですね…」

「ゴニョゴニョと喋るな。俺には話せないようなことをしていたのか?」

「まぁそうなりますわ」

「ふん、所詮その程度の忠誠心な奴ってことか」

「わかりましたわ。恥ずかしく言いたくないんですが、私は排尿しておりましたわ」

「あー、なんかすまないな。魔神だからそういうのは大丈夫かと思ってたわ」

「神界には精神生命体しか存在できませんわ。実体を持たない時にはそのようなことはないのですわ」

「デリカシーのない奴ですまなかった」



そうなのか、アースの本ではそういうところの描写とかは全く無かったからわからなかった。今後は気をつけよう。



その後、俺とマリリンは美味しくない人肉を食べながら雑談をした後に寝ることにした。寝ている間に何かに襲われる可能性もあるが完全に意識を断つわけではないから大丈夫だろう。マリリンの顔があるだろう方向をみて「おやすみ」と言って寝た。



翌朝、まだ陽が昇りきってないうちに目が覚めた。アースにいた頃は夜でも日中と同じ位の状況を作り出すことが出来たから、寝るのが遅くなりがちだった。ただ野宿だった為すぐに寝てしまった。十分睡眠が取れたから起きれた。そういうことだと思うことにした。今日もゆったりと歩いて行くか。



あれから四日が経ち、俺たちの目の前には大きな壁に囲まれた城が視界に入った。マリリンの言っていた通りなら、これはノーレント王国ということになる。この大陸の人族の中では三番目の国力だそうだ。技術面では魔法の分野に特化していて対外的には中立国らしい。そんなことは俺にとってどうでもいいことだ。俺たちと同じようにノーレント王国に向かう人がかなりたくさんいる。事実、今も俺たちの横を子供が走り抜けて行く。



ドン



俺の背中に何かがあった気がした。振り返って見ると一人の女の子が俺にぶつかって転んだらしく、足を擦りむいて泣いていた。



「うぇぇん!」

「ほら、泣くな。直してやるから」



俺は人差し指でちょんと触れ、身体の細胞の動きを活性化させ女の子が持つ自然治癒力で傷を治した。



「あれ?痛くない」

「そうか、これからは気をつけろよ。じゃあな」



俺は同年代ぐらいの女の子に別れを告げ歩き出そうとしたがローブの裾を掴まれ顔を顰める。面倒だな、マリリンに大人に対応をしてもらおう。



「何をしてるの小娘」



はい、手遅れでした。これから教師として潜入する国の前でそれはいかんでしょ。優しいお姉さんって感じでいかないと折角の美貌が台無しだ。俺はマリリンに小声で言った。



「大人な対応でどうにかしろ」

「私はガキは嫌いですわ」



お前何しにこの国来たんだよ。魔法学院はガキばっかだぞ。



「あそこに帰してやろうか?」

「いえ!わ、私、実は子供大好きですわー」



最後のは棒読み感半端ないぞ。でも、居るからには役に立ってもらわないと困るからな。お手並み拝見と行こうか。



「お嬢ちゃん、親御さんはいらっしゃらないの?」

「馬車でゆっくり来てるから後ろの方にいるよ!」

「親御さん心配してると思うわ。戻った方がいいんじゃないの?」

「ううん、大丈夫」

「そう…。なら私のこの手を見ててね?」

「うん」

「はい、ストップ」



キョトンした顔で二人は俺を見る。無邪気なガキにアホなマリリン。俺は悲しいよ。どっちも精神年齢が変わらないように見えるのがな。



「俺たちはこれから魔法学院に行くんだ。だからここで君とはお別れだ」

「そうなんだ!あのね、私も行くの!魔法学院!一緒だね!」

「……」



俺はおもむろに女の子の前に手を出して言った。



「俺のこの手をよくみとけよ?」

「はい、ストップですわ」



またまた無邪気なガキはキョトンして、俺は不機嫌極まりない顔でマリリンを睨む。



「ここは私に」



さっきまではふざけてたのか?



「あなた名前は?」

「ユニ」

「ユニちゃん、門に入るには親御さんが必要よ。だから一旦戻らないと街に入れないわよ」

「うん」

「良い子だからまた会えるから戻りなさい」

「わかった。またね!」



俺たちに手を振りながら走って行った。また誰かとぶつかるんだろうな。



「マリリン、やれば出来るじゃないか」

「このぐらい朝飯前ですわ」

「それなら潜入してからも大丈夫そうだな」

「はい、お任せを」

「そろそろ長芝居に入るぞ。確認だ。俺とお前の関係は?」

「親戚同士ですわ」

「よし、行こう」



俺たちは身分証明書を持っていないので発行しなければならない。ない場合は金をある程度払えば大丈夫だが、何らかのギルドに入って身分証明書を作った方が楽に出入り出来るらしい。是非欲しいものだ。その前に学院に手続きに行こう。



「マリリン、俺には城が二つも建っているように見えるが気のせいか?」

「いえ、気のせいではありませんわ。一つは王城で、もう一つは魔法学院ですわ」



道の中央で田舎者丸出しでぼんやり城を見上げていた。我に返って辺りを見回したらこちらを見てヒソヒソと話している。俺たちの格好のせいか?



ノーレント王国に入ってからは黒のフード付きローブに身を包んでいる。マリリンも同じだ。まぁ陰口なんか今更気にしない。さっさと終わらせて久しぶりに宿で寝たい。



「おい、そこの二人組」



俺とマリリンではないだろう。マリリンも俺を見て首を傾げている。



「そこの黒のフードを被った凸凹な二人組」



そこまで限定されると俺らだとわかった。なんで呼ばれたんだろう。目の前には馬に乗った貴族風な格好をして立ち塞がっていた。後ろには五人の兵士らしきものもいる。



「なんだ?」



努めて低い声で言ったつもりだったが思いの外低くなった。



「怪しい奴は警備隊のヌジケス様こと俺様が処分している。お前らは不敬罪で有罪だ」

「俺たちが何かしたか?」

「言葉遣いに気をつけろ」

「すまんな、田舎から出て来たばかりでな。俺たちは魔法学院に入る為にやって来た。だからさっさと魔法学院に行きたいんだが」

「なんだと!!楯突くのか!?この俺様に」

「もう煩いな」



俺はパチンと指を鳴らし、俺とマリリン以外の時の流れを遅くした。つまり、俺たちは歩いて横を通り抜けられると。あまり使いたく無い手だったがな。ある程度距離が出来たところで指をもう一度鳴らし時の流れを元に戻した。後ろで喚いているのが聞こえたが相手にしている暇はない。



途中、迷子になりかけたが人に道を尋ねてようやく校門に辿り着いた。どんだけこの街は入り組んでいるんだよ。



目の前には沢山の人集りで一杯だった。

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