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はい、今回の俺の名前は江田烈夜。昔の俺の名前はグイヤス・ルベル。なんで俺が2つも名前を持っているかって?それは俺が転生したからだ。意図的じゃないからな。しちゃっただけだからな。
俺はこの世界に来る前に別の世界で生きていた。その世界の名前はネイグラント。いわゆる剣と魔法の世界だ。【グイヤス・ルベル】この名前は結構有名で魔法兼魔術研究家だった。魔法とは体内にある魔力を使い現象を発現する能力だ。それに対し魔術は体外の魔力を使い現象を発現する。これらにはメリットやデメリットがある。魔法のデメリットは体内の魔力を使うため限界まで使い切ると最悪死に至る。イメージをし発現し行使する。俺はそうやって死んでいった奴を何人も知っている。自分を犠牲にして仲間を助けたって死んじゃったら意味ないだろ…。余計な私情を挟んでしまった。メリットとしては現象を発現する速度が早い点だ。魔術のメリットの最大としてはやはり体外の魔力を使うことにある。体内の魔力を使わないため命の危険がなく、規模が大きな魔術ほど威力は高く魔法の比にならない。しかし、魔術は一般的に普及していない。理由はデメリットの大きさに関係している。魔術のデメリットはイメージで現象を発現出来ない点にある。一般的には魔術陣という決まった現象を発現するための媒体が必要になる。魔法陣を書くには時間がかかる為に戦闘時に使えず普及しない。
俺はその魔法陣を紙に書いて常に発動出来る状態にし世の中に売り出した。何故これが思いついてなかったのか不思議で堪らなかったが、これが爆発的に売れ俺の名前が上がった。魔法の研究もしていたが研究半ばに流行り始めの病気にかかりあっさり死んでしまった。26歳という若さでだ。
そして俺は今高度な文明を誇っている世界の日本という所に生まれついた。まさか自分が転生するとは思ってもみなかった。俺はこの世界に生まれついて16年になる。ネイグラントでは研究家をやっていて知識はあるつもりでいたがこの世界では全く通用しない。その上世界が違うせいか魔法や魔術が存在しない。俺の参考文献のラノベには書かれているんだがな。しかし、俺には何故かこの世界でも魔法が使える。この世界の人間には魔力という概念が全く無いらしく、使うことも出来なれば感じることも出来ないみたいだ。俺は例外だな。赤ん坊の頃に魔法を使ったのが両親に見られてしまった。その時の両親の驚いた顔には笑ってしまうぐらい楽観的だったが、大きくなるにつれてどうしてそんなに驚いていたのかを理解した。今では全く魔法は行使しなくなった。
「何難しい顔してんの?」
俺の顔を覗き込むように話しかけてくるのは幼馴染の山峰玲だ。玲とは生後6ヶ月からの付き合いだ。玲は覚えてないかもしれないが、俺は生まれてからすぐ自我を持っていたから覚えてる。今は2人で登校中だ。
「いや、今日はラノベを読みながらアニメを観るか、ネットの世界に行こうか迷ってる」
「たまには勉強しなよ」
呆れたように顔を顰める。そんな顔をしても可愛らしい玲は、幼馴染という贔屓目をしなくてもかなり可愛い。俺の聖書『ラノベ』によるとこれはかなりラッキーだ。しかも、スタイル抜群で性格も良く勉強も出来る。幼馴染コンテストに出たら1位を取ってくれると信じている。実際にそんなコンテストはないがな。髪は俺好みの肩までのセミロングだ。成績は学年2位の持ち主だ。
「勉強ばっかしてられるか。世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあるからな」
「さすが学年1位ね。勉強しなくていいなんて本当にずるい」
「お前だって頭良いじゃないか。いつも3位に50点以上差をつけてるじゃないか」
「その3位に50点以上差をつけている2位に、20点も差をつけている1位はどこのどいつなんでしょうね?」
仕方ないだろー。幼少期から親の英才教育を受けてたんだから。両親は俺が魔法を使うと知ってから直ぐに、俺に勉強を教えて来た。俺はまだ全然喋れなかったのに理解しているよねって体で進めていた。まさに鬼畜だ。でも、俺はその頃から学んだおかげで幼児補正なのか、すぐに知識が身について今ではとても感謝している。
「……」
「あ、まただ。都合が悪くなると黙る癖は昔から変わらないね」
「うるさいぞ」
「ほら、急がないと学校に遅刻するわよ」
「玲、お前が身だしなみを気にし過ぎて俺を待たせていたせいだろ。なんで俺のせいみたいな言い方するんだ」
俺の文句にはニコッと笑顔を見せて駆け足で校門を抜けて行った。若干お転婆な所があるが可愛いから許してやるか。
今日もいつもと変わらない一日の始まりだ。