to6 黄昏の先に
第一話 揺れた時刻 to6 黄昏の先に
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「おはよー」
「あ、おはよう!」
僕はいつも通り、クラスへ入って行く。
僕のクラスは、男女関係なく仲良くする人が多いから いつも賑やかだ。
すると僕の席の近くで、最近仲良くしているメンバーが群がっていた。
「どうしたの?」
僕が首を突っ込むと、志乃が言った。
「わ!。蓮!……びっくりしたあ。おはよう!!」
「あ、ああ。おはよう」
僕は返す。
「なんだ!蓮かよ~!。」
「ははは、おまえか!」
と、優希と隆志も笑って 肩をバンバン叩く。
「いっ、痛た!」
あまり痛くはないのだけど、思わず反応してしまう。
「あ、ごめん。」
優希が我に返って、僕に言った。
「もー!びっくりさせないでよね。」
あい子も向かいで呆れたような目で見た。
「いや、僕はびっくりさせた覚えはないんだけど……。」
はははと五人で渇いた笑いを浮かべると、僕は言った。
「で、何の話してたの?」
そう言うと、優希が言った。
「今度の土曜日の休み、俺らで花の瑞公園に行かないかと思って。」
(花の瑞!)
僕が、琴の墓参りに行くときに、通り過ぎる場所だ。
「どうしたの?行けない?あたしは五人で行きたかったなー!」
あい子が言う。
「あ、うん。――……」
(……大丈夫かな。)
家のことがあるからわからない。
「たぶん行けると思う――……けど、聞いてみるね。」
本当は行きたい、けど……。
自分の中では、たぶん無理 の考えが上回っていた。
「よし!じゃあお昼休みに計画練ろうぜ。」
隆志がやる気満々で立ち上がった時、
ガラガラ
と、戸が開く音がした。
「席につけー!!」
「お、やべ!せんせーじゃん!」
優希と隆志は、自分の席へ駆けていく。
「よかったー!五人で行けるね」
と、志乃とあい子が話していた。
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帰り道だった。
僕の気分は逆に重くなってしまった。
(よかったー!五人で行けるね)
その言葉が頭をよぎる。
五人で行けるのかな。
って思ったら申し訳なくなった。
期待されるぐらいだったら、無理かもって言った方がよかったのかもしれない。
お昼休みに計画は練ったのだが、持ち物から集合時間スケジュールまで、あい子がきれいに決め立てた。
学校帰りに星苑保育園に寄るのだが、陸にまで察されたくない。
(――姉さんに、聞いてみるか…?)
母さんに訊く前にとりあえず姉さんにと思ってケータイを出す手を止めてしまった。
(結局、きっと。)
ダメって答えしか、帰ってこないんだろうなあ。