表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶の無い少女へ*.。・゜*.。・゜*.。・゜祈り  作者: 遥瓶
第一話 揺れた時刻
7/14

to4 冥影の中で

第一話 揺れた時刻 to4 冥影の中で

∮―――――――――――――――――――――――――――――∮


「また来るよ。」

僕はそうっと告げると、置いた おにぎりや花などの供え物を片づけ、足早に立ち去った。


西の空だけに黄昏の町が光っていた。


「―――…」

琴が。甦ればいのに。

琴と居た思い出が胸の中にありすぎて、消えることも許されない。


バイブの振動が感じられて、ポケットからケータイを取り出した。


「もう六時過ぎか」


∮∮∮∮∮


「いつもえらいわねえ…!陸くーん!お兄ちゃん来たよー!」


「あ、いいえ。」

僕は、笑顔で言う保育園の先生に、軽く会釈をした。


ここは星苑保育園で、一番末っ子の弟の陸が通っている。

大体の人はお母さんが迎えに来るのだが、陸は違って、僕が迎えに来る場合が多い。


「あー!おにーちゃん!遅いよ~」

遊んでいたオモチャを片づけると、残っていた数人の友達に、ばいばーいと元気に友達に手を振って、鞄を持って駆けつけて来た。


「うん、ごめんな。陸」

いいよ。と笑顔で陸は言った。

何となく、あまり両親の恵みに包まれていない陸が可哀想に思えてくる。


「さよならー!」

陸が、先生に言った。


「さようならー」

先生も返し、僕も言う。


「あと四人で、ぼく独りになっちゃうところだったよ」

と陸が言った。

僕が迎えに来るのが遅いんで、教室に残っている人が少ないと言いたいのだろう。


「ごめんごめん。今日は陸の好きなコロッケ作るから、許して。」


「ほんとー!!たべたーい コロケ食べたい!」

と騒ぎ出す陸と手をつないで、


「コロッケ、だよ。」

と言った。

∮∮∮∮∮


「頂きまーす・・・」

「いたあきまーす!! おにーちゃん、おいしー!」


「まだ食べてないだろ…!あと、いただきます。だよ」

僕は優しくコロッケを小さく一口サイズに選り分ける。


「…お、あんがい 美味しくできたかも」

僕は、夕食を作り終え、陸と二人で食べ始める。

蠅帳とサランラップにかかったご飯が三つある。


姉と両親の分だ。

両親は共働きで、僕は琴が居れば四人きょうだい。


一番上の姉は僕より二つ上の高校一年生の沙和。

優しいし色々やってくれるけど、勉強と部活で忙しい。

その次が僕で、その次は、生きていれば小学五年生の妹、琴。

末っ子は僕より八歳年下の陸。


一番上の姉から考えたらものすごい年の差。


「ん」

ふとケータイを覗くと、優希や隆志、幼馴染の志乃と、最近仲良くなったあい子等や色々な人からラインが着ていた。


(食べてからでいいや)

僕はケータイを躊躇してそばに置くと、さきほど琴に供えたおにぎりを口に運んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ