to3 君が居た日
第一話 揺れた時刻 to3 君が居た日
∮―――――――――――――――――――――――――――――――∮
街中だから 墓場なんてその辺になく、来るだけで時間がかかってしまった。
「――此処」
誰もいない墓場だった。
どうして僕がこんなに墓場に来たがったのか。それは――…
「…」
一回り小さい墓。
僕の妹の琴の墓場だ。
あまりに早すぎる死に、絶句するしかなかった。
単刀直入に言うと、僕の妹は、大地震で瓦礫に飲まれて死んだ。
その日から僕は、軽くとも日本の内で 地震が起きたら必ず墓に来る。
もちろん来なくてはならない日や、修正会・盆・両彼岸の日は必ず家族で来る。
「よいしょ」
僕は背負っていた鞄を降ろすと雑巾で墓石・墓誌・灯篭・外柵等を拭き、雑草を刈った。
丁寧に。除草剤を使わずに、琴の第二の家をきれいにしてやった。
「――」
白い菊の花を飾り、琴が好きだった、お母さんの手作りのおにぎりを数個一緒に供える。
ひとつは祖母の作った梅干しのものと、もうひとつはお母さんが作ったあさりしぐれ
僕のおやつだったのだが、琴に譲ることにしたのだ。
どちらも琴が好きなものだ。
一緒に美甘とお茶を供え、線香も、その場から離れて火をつけると供えた。
墓前で手を合わせた。
「―琴、元気か?。僕はまだ、あの時のこと忘れることはないよ。」
甦ったりしないかな。
あの屈託ない笑顔や、記憶としてしか残っていない思い出だけが頭をよぎる。
今喘いでも もう遅かった。
もう妹は、「思い出」に化かしてしまった。