to2 花の咲く道
第一話 揺れた時刻 to2 花の咲く道
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「この電車は、池沢、推名、花の瑞方面、飯花区役所行きです。」
車内アナウンスがかかった。
ガタン――。
リズムよく揺れていく鉄道に揺られながら、僕は窓の外を見ていた。
どちらにしろ僕が今利用しているのは地下鉄なので、窓の外に何か映っているわけでもないのに。
廃墟のような壁一点を見つめていた。
キーッ!!
「…」
耳を掠めるような音をたてて、どんどん行く。
「本日は、市営地下鉄 桜咲線をご利用いただきまして、ありがとうございます。お年寄りや、身体の不自由な方に、席をお譲りください」
アナウンスが流れる。
(何度も何度も 解ってるよ。)
地下鉄なので、ここの線はほぼ一分置きに駅へ到着しすぐに発車する。
「―――軽い地震なんて、いつでもあるんだ。」
僕はひとりごとをつぶやく。
気にかかっているのは、先ほどの地震のことだった。
「まもなく、葵咲、葵咲。お出口は右側です。市立大学病院、葵咲歯科方面は、ここでお降りください。和咲線ご利用の方は、お乗り換えです。」
僕の隣の席の人が立った。
大体、席も埋まってきて そばで立っていた社会人も、開いたのがわかると、僕の横に座る。
ただ、僕は終点まで乗っていなくてはならない。
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ほぼ空っぽになってしまった車内にアナウンスが流れた。
「みなさま、ご乗車、ありがとうございました。次は、飯花区役所、飯花区役所、終点です。」
僕はケータイの着信に気付き、ケータイを開く
「―・・・」
了解、今日家に居ないから、ご飯作って食べてね。の二言だけ。
別にそれだけで十分だ。
「まもなく、飯花区役所、飯花区役所。終点です。お忘れ物のないように願います。お出口は右側です。」
僕を急かす用に、アナウンスが流れると ゆっくりと立ち上がった。
「ふー!」
ココへ来るまで四十分もかかってしまった。
そうまでして 来たかった場所―…