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05:貿易船と魔法

 船は案外簡単に乗せてもらえた。

 ギースがただ気楽に考えている、と言う訳ではなく、この世界が全体的にゆるいのかもしれない。


「貿易船、本当に乗って大丈夫なのかな」


 乗せて貰ったのは大きな貿易船で、色々な品物を当然乗せている訳で、そんな所に見ず知らずの人間を乗せてしまって心配ではないのだろうか?と、逆に心配になる。

 とは言え、この船は貿易船と言うよりも、以前海外ドラマか何かで見た戦艦の類に似ていて、船の中は入り組み。詳しくない人間がひょいと乗った位では何もできそうになかった。それ故の自信、と言う事なのだろうか?


「大丈夫だろ。この船、結構強い魔力感じっから、セキュリティちゃんとしてるんだろ」


「魔法でセキュリティ?」


 炎竜の守護火扇の様な結界を張ってくれるモノがあるのだし、治癒魔法もあるのだから、もしかしたらそう言った魔法もあるのかもしれないが、炎や水、風や土がセキュリティとイマイチ結びつかず頭に疑問符を浮かべる。


「どの属性の魔法でも大体攻撃・防御・治癒見たいな属性そのものとまた違う魔法が使えて、炎竜系、水龍系、天龍系、地竜系どの属性でもセキュリティできっけど、総竜系は特にどの属性とも違う魔法も使えるからな。ここのセキュリティは多分総竜系の魔法使いがやったんだろ」


「火出すだけが炎竜系の魔法じゃないんだね。総竜系はセキュリティ関係に特化してるの?」


 『どの属性とも違う魔法』それがセキュリティに特化している、と言う事なのか、あるいはもっと違う意味なのか考えあぐねて問い返す。


「総竜系は人口が極端に少なくて、総竜系の魔法の性質はハッキリして無ぇんだ。ただ、俺が知ってる中だとセキュリティに特化してるっつーよりも、どの属性の魔法も多少使える上に、どの属性とも違う魔法を何かしら使えるって感じなんだよな」


 ギース自身も、総竜系についてはさほど詳しくはないらしく、言いながら何か考えている様だった。


「その『何かしら』って言うのは、人によって違うの?」


 涼香がそう尋ねると、ギースはまた少し考えて「多分な」と頷いた。


「俺の所は全国でも珍しいタイプで、全属性の生徒を集めた総合学校なんだけど、総竜系の生徒ってのがまず10人も居ねぇし、教員の中にも校長と保健医の2人で、俺が在学中は生徒居なかったぽいし、マジで判断材料少ねぇんだよ」


「そんなに少ないんだ……」


 その、数少ない総竜系の人が校長先生と言うのは少し興味深い。


「クラスって属性で分かれてるの?だったら1クラス分も居ない総竜系ってどうなるの?」


「あぁ、ほぼ属性で分かれて、それでも人数多いとその中で更に分けてる。総竜系だけ取り敢えず、他のクラスに振り分けられてるな」


「ほぼ?」


「属性だけで分けられない奴も最近増えてきてっからな」


 どうやら、親の属性を受け継ぐらしく、元々は同属性同士での結婚が普通だったが、宗教に頓着のない人も増えていて異属性で結婚する人が増えてきている為、子供は両親二人の属性を受け継ぎ、受け継いだ内、強い方あるいは、学びたい方の属性のクラスに入る事が多いが、そう言った子供の増加により、新クラスを作り始めているのだと言う。

 中には片方の属性しか受け継がなかったりと言う事もあるらしく、その場合は素直に受け継いだ属性のクラスに入るらしい。


「国際結婚見たいな感覚なのかな……?取り敢えず、総竜系は謎が多いけど、セキュリティ関係得意な人も結構居るって事でいいのかな?」


「ま、そういう事だな」


 ――グラリ。


 突然の揺れに、涼香は慌てて近くの手すりにしがみつく。


「な、なんなの、この揺れ!?」


「ぶつかったって感じじゃ無ぇし、急いで止まったとか、方向転換したとかじゃ無ぇか?」


「何の為に!?」


 進路が決まっていてその通りに進んでいる筈が、突然高校転換するなんて事、迷子じゃあるまいし、こう言った船でありえるのだろか?


「さぁな。よし、ちょっと様子見に甲板行ってみようぜ」


 言って、涼香の腕を掴んでグイグイと進む。この入り組んだ船の内部構造を把握しているのか、迷いなくどんどんと進んでいく。


「ギースくんて、この船前にも乗ったことあるの?」


 詳しい見たいだけど。と問いかけたが、そう言う訳ではなく、この手の船は大体似たような作りだから、特徴さえ把握出来ればそうそう迷わないのだと言う。


「っと、ここ上がれば甲板だな。まだ少し揺れてっから気をつけろよ?」


「う、うん」


 落ちても大丈夫なようにギースは涼香に先に梯子を登る様に促した。


(降りた時も思ったけど、スカートじゃなくて本当、良かった)


 涼香は元々運動神経が良い方ではなく、こう言った梯子を登るのは少々勇気が居る。もし、ギースが下でフォローできる態勢でいてくれなかったら登れなかったかもしれない。そんな事を考えながら、おっかなびっくりと登る。

 なんとか登りきり、マンホールに似た様な扉を開ければ陽は既に落ちていて、代わりに綺麗な三日月が丁度頭上に差し掛かっていた。空気が乾燥しているのか、見え始めている幾つかの星がくっきりと見える。水平線の辺りはまだほんのりと夕暮れの橙と薄い黄色とが夜空の深い青紫と綺麗なグラデーションを作り上げている。景色はほとんど動いておらず、止まっている様だ。


「綺麗」


 空に見とれて、甲板に出るのを一瞬忘れてしまったが、下からギースに「大丈夫か?」と声をかけられ、我に返り慌てて甲板に上がった。

 甲板に上がると、船員達が数名、前の方に集まって居る。視線の先を追ってみると、海の中から丁度顔を出した龍が居た。ドラゴンの滝で竜を威嚇してきた龍と似ていて、躰は青味がかっていて表皮は鱗の様に見えた。最初に涼香が出会った、岩の様な竜とも、ドラゴンの滝近くでギースが呼んだ竜のイグアナの様に乾いて、ザラりとした皮膚の印象とも違い、魚や蛇の様にツルツルとしていそうに見えた。

 龍は気持ち良さそうに、海の中に潜ったり出たりを繰り返していて、涼香はひっそりと、退けとは言いづらい雰囲気だな、と思った。


「やっぱ水龍か」


 ギースは下からの扉から、上半身だけをひょっこりと出して外の様子を見ていた。恐らく、水はあまり得意ではないからそれ以上出てくる気はないのだろうと思い、少し茶化してみようかと言う悪戯心に駆られ、涼香はギースの方を面白そうに見た。


「ギースくん、甲板に上がってこないの?」


 自ら、見に行こう!と、引っ張って来ていた筈なのに、上がってこない姿が可笑しいやら抜けているやらで涼香は問いかけながらクスクスと笑った。


「いや、俺が行くと多分、水龍が暴れっから」


 予想とは少し違った返答にきょとんとしながら話を聞いて見ると、炎竜系の魔法使いを水龍は極端に嫌うらしく、水龍以外の理由で問題が起きてる様なら何かしら手伝おうと思って様子を見に来たかったらしい。


「へぇ。炎竜自体と仲が良く無いから、その魔法使いも好きになれないのかな」


「っつーより、炎の気配を感じるんだろうな」


 炎竜系の魔法使いであれば、みんな炎を使う。炎を使う事を敏感に感じ取ってしまうのか……。ドラゴンは全般的に人懐こいが、水龍と炎竜だけは互いの属性を持つ者にだけは警戒するのだ。

 水龍が気持ち良さそうに遊んでいる所を見る限り、今は炎の気配を感じて意地悪している、と言う事ではない様だ。ドラゴンを神として崇めている世界としては、この水龍を無碍には出来ない故に止まっているらしい。

 避けて進めれば良いかと思いきや、水龍が大人しくその場所だけで遊んでいる訳でもなく、少し避けただけではまだぶつかるかもしれない。


「うーん、なんとか他所で遊んでくれないかなぁ」


 そんな涼香のつぶやきが聞こえたのか、水龍はキュィ?と。首を傾げるようにして涼香の方を見た。


「結構大きいのに、可愛いなぁっ!もう!」


 一挙一動のあざとさにもはや可愛いとしか言い様が無かった。涼香は身を乗り出して水龍においでおいで、と手招きをしてみると、なぁに?とでも言う様につぶらな瞳を涼香の方へと向けてスイスイと寄って来る。


 擦り寄ってきた水龍は撫でてくれと言わんばかりに、涼香の方へ頭を寄せてくる。全体の大きさはわからないが、象やキリン程はありそうなこの龍。行動を見た限りでは、まだ大分幼そうである。最終的にどの位のサイズまで成長するのか……。そんな事を考えながら水龍を撫でてやる。ひんやり冷たく、竜達に比べて柔らかくツルツルとした感触が以外と気持ち良い。水龍も気持ちが良いのか嬉しそうに目を細めてされるがままになっている。


「なぁ、お嬢ちゃん。水龍と仲良くなったついでに、ちょぉ~っとばかし、他所へ移動してくれって頼んでみてくれないか?」


 長くはない顎鬚を指先で軽く引っ張るように撫でながら、涼香の様子を見ていた船員の一人が言い、涼香が振り返ると、悪びれない様子で一言「頼むわ」と付け加えた。


「言うだけ、言ってみますけど」


 期待はしないでくださいね。と、付け加えて水龍の方へと視線を戻すが、水龍は言われる言葉を分かっているのか寂しそうな目で涼香の顔を覗き込んでくる。これは言辛い。


「(うぅ……やっぱ可愛い)えぇと、この船そっちに進みたいの。ちょこっと移動して、少しの間だけ大人しくしてて貰えるかな?」


 言うだけ言ってみると、水龍はやはり言われている言葉をよく理解している様で、どうしても?とでも言う様に涼香の方を伺う。

 その様子を見ていた船員達も思い直したのか、やっぱり良いから!何とかするから!と、慌てて口を挟んできた。この船に乗っている人たちは結局の所、水龍に甘いのかもしれない。だからこそ、涼香に水龍の説得を頼んだのだろう。――甘くなる気持ちも分かるけれど、私の気持ちも考えて欲しかったな。と、ひっそり思いながら、この世界の神様の愛され具合に癒されつつ、また水龍をよしよしと撫でてやる。

 空を見やると、真上にあった月はいつの間にか傾き始めていた。港はうすぼんやりと灯りを確認出来る程度には近付いていたが、朝に着くのも無理かもしれない。


「学校、いつ着くかなぁ……」


 ドラゴン達は可愛いが、魔法学校も見たい。あと少しの所で止まっているこの状況に溜息が漏れる。

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