2、想われるキミ(1)
待ち望んだ週末
そとはお出かけ日和で雲一つない青空が広がっている
反面、心は憂鬱
考えるのが億劫なくらい
身体も心も重く沈んで、もう昼過ぎだというのに未だベッドから起きだせずにいた
ふたりを見たときからそんな予感はあった
いつか誰かにもってかれることも予想していた
いつか自分じゃなく
年の近い誰かに
それが、こんなに早く現実になるなんて
まだ 何一つ
伝えてやしないのに
枕に頭をしずめたときケータイが鳴った
誰だよ
ケータイを探すためようやく体を起こし、ソファーに投げ出したカバンのなかを探った
着信 香
俺は迷うことなく通話ボタンをおした
着信はたしかに香だった
電話で会話したのも、雪深家に呼び出したのも
それは間違いなく香だった
それなのに!
なんで目の前にいるのは
拓なんだ!
「・・・・・あからさまに嫌な顔してんじゃねえよ」
「・・・・」
「おい、お兄様に対して無視はいけねぇだろ」
「誰がお兄様だ、同い年だろーが」
「香と結婚したら、俺お前の兄ちゃんになるだろ?」
なっ!!!!!!
「ぶはっ」
おもいっきり赤面したオレを見て吹き出す拓
人の純粋な恋心からかいやがってーーーー
腹を抱えて笑い続ける拓をキッと睨むもそんなこと効果がない
ようやく笑いがおさまった拓が口を開く
「買いだしにでてるだけだ、お前に料理作るって言ってたからな」
俺に料理!
その言葉に自然と顔がゆるむとそれを見逃さなかった拓にまた爆笑された
「それにしても遅いな・・・・お前に電話してすぐ出かけたからもう帰ってきてもいいはずなんだけど」
急に真面目な顔をし壁の時計を見る
「なんか・・・・あったのか?」
二人の間に沈黙が
すると
ガチャ
玄関ドアが開く音がした
「たっだいまー」
「遅いから心配したぞ」
「ゴメンゴメン。偶然会ってさぁ・・・・」
へ?
!?
香の後ろから買い物袋をぶら下げた生徒会長が顔を出した
「おじゃまします♪」
じぃーーーー
じぃーーーー
スパン!!
「いってぇ」
おもいっきり拓に頭を雑誌でたたかれた
「お前見すぎ」
だって、気になるだろ
なんでアイツと
しかもなんでアイツ居座って、ちゃっかり香の手伝いとかしてんだよ
「拓も知り合いなのか?」
「まぁ、アイツが中学のときから知ってるからな。イイヤツだぞ」
くそっ拓まで丸め込んでやがる
「ばーか、俺はお前の方を応援してっから」
「拓」
お前、実はイイヤツ
「お前の方が遊びがいあるしな」
前言撤回。やっぱりヤなやつ
「なーに2人じゃれあってんの!ご飯できたよ」
香にそう言われ、顔を向けると香の隣に立つ生徒会長と目が合った
にっこり微笑む
胡散臭いヤツーーーーー
余裕のその表情が壱垣をあせらす
自分は同じ高校生
お前は教師
違う立場
と言われてるようだ
香の手料理だというのにちっとも食べた心地がしなかった
目の前には香がいるのに
その横にいる生徒会長が気になってしょうがなかった