1、高校生なキミ(5)
壱垣の担当学年は3年。当然、生徒会長のクラスも担当するわけで
「壱垣先生」
授業後に声をかけられた
「どうした?生徒会長」
「ちょっとお話が・・・」
嫌な予感だ
「雪深香・・・・知ってますよね?」
「・・・何年だったかな?」
何が言いたいのだろう
話の内容が見えないため、とっさに幼馴染だということを隠した
「昨日、資料室から出てくるトコ見たんですけど・・・」
「・・・あぁ、遅くまで残ってた生徒がいたからね。早く帰るように言ったよ」
あくまでただ生徒・先生の関係だと言い張る
「・・・そうですか、なんか仲よさそうだったので、知り合いなのかと」
納得いっているのかどうなのかわからない表情で壱垣をみる生徒会長
「もういいか?職員室に戻らないと」
「あ、はい。」
うまくやれたか
顔にでてないと思うが、こういうことは拓の得意分野だっつうの・・・
ポーカーフェイスを気どって歩き出すと
「壱垣せんせー」
なんでいるかな?香
ややこしくなるだろーが
あきらめたようにふり返ると
香の隣で、お見通しと言わんばかりの生徒会長と目が合った
「先生、もう少しお話良いですよね?」
生徒会長の営業スマイル。いや、人懐こい笑顔に拒否権はなさそう
どいつもこいつもイイ性格してるよ
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俺は、ネクタイというものが嫌いだ
だから生徒にネクタイをしろとかしないとかそんなこと言いたくない
しかし服装の乱れがどうとか・・・・一体この話はいつまだ続くんだよ
職員会議でそこまで話し合う内容か?
「とりあえず、そういうことでいきましょうか。では、これで終了しましょう」
やべっ聞いてなかった
それぞれ席を立つ先生方の流れに沿ってあわてて壱垣も立ち上がる
あたりはもう暗い
金曜日ということもあり軽くあいさつをし、みな早々と帰り支度をはじめる
もちろん壱垣もそうだ
そのつもりだった。が!めんどうな予定がはいった
これからのことを考えると自然と動作は遅くなる
ノロノロと帰り支度をして、他の先生方を見送っていると遠慮がちに職員室にひとり生徒が入ってきた
「なんだ鈴谷?まだ残ってたのか」
「はい、ちょっと壱垣先生に用があって」
「そうか、じゃ壱垣先生に送ってもらえよ。もう遅いし、ねぇ壱垣先生」
そうですね
内心嫌々だか、声をかけてきた先生に笑顔で返事をし、鈴谷をつれ職員室をあとにする
無言で駐車場にむかう
ただ違うのは、生徒会長は余裕顔で、壱垣のほうが余裕がないということ
そう、これからはじまる事情聴取
はぁ
気が重くなりため息をついて車のドアを閉めた
車を発進し鈴谷宅の方向へと進める
「で?先生はいつから香が好きなんですか」
ぶっ
ストレートに聞かれおもわず吹き出した
「なんで?俺が香を好きだと?」
「ふつうに幼なじみってだけなら、ごまかす必要はない。けど先生は知らないふりをした。つまり、知られちゃならない関係性が存在する。だから、先生は香を好きなんだろーなーって・・・違いまか?」
って、冷静な分析を笑顔で言われてしまってはもうごまかしもきかないだろう
「・・・・君はどうなの?生徒会長 俺だけ話すのは不公平じゃない?」
「もちろん。話しますよ ナニが聞きたいですか?」
話させるつもりが余裕のかえし
くっそー、聞きたいことだらけだっつーの
くすっ
「先生って、わかりやすいですよね」
「・・・ほっとけ」
あーホントだめ。負け負けかよ、俺
そして生徒会長の家に着き、別れ際
「先生、オレ香もらいます」
は?
じゃっ と言って家の中に消えていった
頭の中で反芻する言葉
俺はしばらく車を発進させることができなかった