1、高校生なキミ(3)
頭を抱えそうになる壱垣
すると、
「ざーんねん、俺と2人暮らし」
突然のその声に振り向くと、ドアにひとりの男が寄りかかっている
「あっ!」
「久しぶりだな、はじめ」
香と同じくらい久しぶりに見る顔何でもお見通しというような面は相変わらず
「拓にい おかえり」
雪深 拓
香の兄貴であり 壱垣の悪友
「ただいま香 俺もコーヒー」
「えー自分でやりなよ」
文句を言いながらもしぶしぶキッチンにむかう
それを確かめてからようやく壱垣は口を開いた
「いつからいた?」
「頭抱えて百面相してるあたり」
飄々とした態度で答えるあたりがむかつく
どさっと、壱垣の隣に腰を下ろすとガッと肩を抱き寄せた
耳元でささやく
「感動の再会☆恋の炎再燃?」
「うっさい!!!!」
真っ赤になって力強く反応してしまうと目の前にニヤニヤと笑う拓の顔
うーーーーーむかつく
「かわんねぇな。むかしっから」
「はっ。お前もな。ったく、何年想ってんだよ」
嫌味たっぷりに言ってみれば、あきれたように静に笑われた
何年想ってる?だって?、わかりきった事聞くなよ
「−−−−−−−10年だ」
小声でつぶやいた長い年月
「もう、10年か」
懐かしむように目を細め、くしゃっと壱垣の髪をなでる
なんだよっ
無言で抗議するようににらむと
「10年」
口だけそう動かして
・・・・・・・10年
わかってる
拓が言いたい事は
でも俺は今、教師なんだ
あれからお互いの近況報告や、軽い昔話をして壱垣は雪深家をあとにした
つか、拓のせいであんまり香と話せてねぇ
拓は香とは違って昔っからカンが鋭い男で嫌なやつ
女うけするかわいらしい顔とは裏腹に憎たらしい性格してたり
雪深家から帰るときも
「コクったらすぐ教えてね」
なんて耳元でいいやがった
むかしっから俺の気持ちは拓につつぬけ
香にはまったく気付かれないけど
同じ兄妹でここまで違うか?
『コクったらすぐ教えてね』かぁ・・・・
拓の言葉をふりかえりながら、俺はその日眠りについた