3 想う、キミ(3)
「ふーん」
あきらかにおもしろくないといった表情の鈴谷
「おい・・・聞いといてなんだよ、その態度」
「別に、先生はロリコンだなぁと思って」
「ちがう!」
「ま、よくわかりました。けど・・・香はあげませんよ~」
不敵な笑みで手を振って去っていった
腹立つー
なんだよあいつは
「いちー」
遠めに壱垣を見つけたのだろう
走ってきた香はドンと勢いよく抱きついた
「香・・・・ここ学校」
静かにたしなめるが効果は無いようでえへへと無邪気に笑う
「ねー図書館行くんでしょ?あたしも行く」
そう言って壱垣の前に出て歩き出した
あのあと
香は・・・あいつになんて返事をしたのだろう
ごきげんな様子を見るとうまくいった・・・のだろうか
それとも・・・・
そんなことをぼんやり思いながら香の背を追った
「・・・ち・・・・いち!」
「あ?」
「もー聞いてなかったでしょ?」
「あ、ごめん・・・」
香がそばに居るというのに、アイツの告白が頭にちらついてしまう
さらっ
香の細い指先が俺の前髪にふれる
「前髪長すぎない?メガネまでかかってるよ」
そう言うと、ひょいっと俺のメガネを取り上げた
「おい!」
「ふふっ、懐かしい~。こういうやりとり昔もしたよね?」
「いちにぃ?」
香が俺の顔を覗き込んだその瞬間
俺は
香を引き寄せ
抱きしめた
ここは学校
もしかしたら誰かに見られるかもしれない
見られてるかもしれない
離れないと
でも離したくない
香は・・・というと
抵抗する様子はなく
無言・・・・
えっと・・・これは怒ってるか?
顔が見えないため表情は読み取れない
香の手がゆっくり壱垣の背にまわされる
受け入れられているのか?
それともただの幼馴染としてのスキンシップ?
香・・・
好きだ
ずっと、ずっと想ってた
女々しいし
あきらめるべきなんだろうけど
言うべきでもないのかもしれないけど
今しかない
香が俺の腕のなかにいる今しか
「っ・・・・る」
声が擦れる
「香」
もう一度、今度ははっきりと
キミを呼ぶ
「好きだ・・・・・」