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1、高校生なキミ(1)

キーン コーン カーン コーン


規則正しいチャイムが鳴って、

いっせいに教室の扉が開く

そこからドッと生徒達がでてくる

これからが俺たちの時間だ

・・・とでも言うように、

イキイキとした顔で部活やらなにやら、

おのおの帰路につく


そんな生徒らに挨拶をかえしながら、職員室に向かう


ガラッ



ドサッ


ふぅーーーーー



自分の机に腰を下ろし、

疲れたため息が漏れる


やっと座れた・・・ 


座って授業受けるより、

立って授業するほうが大変だ

と、授業をする側になって初めて気づく


「大丈夫かい?壱垣先生」


机のうえに顔をつけて沈んでいたら、

3年学年主任の先生が声をかけてきた

「はっはい!!」


とっさに立ち上がって答えると、

勢いが良すぎたようで

机の上に重ねていた教科書が床に落ちてしまった


「・・・あぁぁ・・・」


「はははははは

 いやぁー驚かせるつもりじゃかなったんだがね、いや悪かった」


「いえ、そんな」


「まだ慣れない事も多いだろうが、まぁ気負わないで頑張ってくれ

 困った事が合ったらいつでも言ってきなさい」



「はい。ありがとうございます!」


ポン

と、肩をたたいて主任先生は教室を出て行った


これから部活に顔を出すのだろう


熱血・・・というわけじゃないが、生徒思いで教師思い

今の世の中には珍しいような良い先生で、

自分もそんな風に成れればなと思う


俺、壱垣(いちがき) (はじめ)はつい数週間前にこの高校の臨時教師としてやってきた

産休中の現文の先生に代わり、この2学期の終わり間近という半端な時期に。

大学をでて2年目、やっと夢だった教師という立場に立ったのだ



臨時だけどな・・・・・


臨時といえど、雑務は山のようにあるが今はそれをこなす力がない

それほど疲れていた

この数週間の気疲れが一気にきたのだろう



ふと立ち上がり職員室をあとにする

向かった先は、3階の一番奥

『資料室』

と表示されているが、中は図書室だ

正確には『旧図書室』

数年前に新しく校舎の奥に地域住民も利用可能な図書館棟が建てられたことで、今はほとんど人の出入りがない





やっぱりこっちのほうが落ち着くな・・・

なつかしいし・・・



そう言う俺は、実はこの学校の卒業生だったりする

真新しい場所よりも、本の匂いが染み付いたこの場所が俺は好きだ 

いちばん奥のいっかくに壱垣の指定席は存在する

ほんとにおくのおくまでココを知り尽くしていないとわからないであろうその場所は、本棚たちに隠されるようにしてできたスペースに古びた二人用ソファがあるだけ

そこにドサッと倒れこむようにしてソファにしずむ




・・・・少し・・・・寝るかな・・・・・






窓からさす夕日の光を横目で見ながら、壱垣の意識はゆっくり遠のいた





つぎに壱垣が目を開けると沈みかかっていた夕日は完全に沈んだようで外は暗くなっていた。

もちろんこの部屋も同様暗くなっている。かろうじてつけっぱなしにしていたこの隅のスペースの小さな電球がうっすら光っているだけだ。

それもそうだろう、手元の時計を確認すると1時間は経過している

完全に眠ってしまっていた

思っていた以上に体は疲れていたようだ


「うーん」


体のだるさをはらうべく大きく伸びをしてソファから起き上がる


とりあえず電気つけるか



そう思ってケータイの液晶画面の明かりを頼りに入り口にある電気のスイッチを目指したが

ブー ブー ブー

ケータイのバイブ音が聞こえる

自分の手元からではない

じゃあ必然的に違う誰かのものであって・・・・



誰か・・・・いるのか?



音はこの本棚の向こう側からのようだ

ブー ブー ブー

いまだ鳴り止まないところを見ると

人はいなくて、ただケータイを忘れていっただけなのか

そっと音のする方へ顔を出すと

ひとり

女子生徒

本棚に寄り掛かるようにして眠っていた



・・・・っ、びびった

こんなトコで寝てるなんて無防備すぎるぞ



鳴り止まないバイブ音は彼女の投げ出されたように置かれたカバンの上にあった


着信 兄


家族が心配して電話かけてきたってところか・・・・

起こしたほうが良いだろうな、下校時刻とっくに過ぎてるし


「おい、起きろー!おーい」



かるく肩を揺さぶり声をかける

すると反応があったようで

ぴくっと微かに手が動いた


「んー、・・・・今何時?」



寝ぼけながらこちらに向けた顔を見てはっとする

俺を捕らえてはさないその瞳





「香・・・・」




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