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「成仏していったね」
「そうですね~」
長いあいだこの小学校を見続けてきたマナビーヤさんが離れていくのを見送って、わらちは少し、ジーンと胸が熱くなっていました。
……って、あれ?
「やぁ、どうも」
「はみゅ~ん、どうしてここにいるんですか!?」
なにやらいきなりわらちの隣に現れていたのは、もう成仏したはずの海路潮騒くんでした。
「ん? だってさ、ほら、ぼくにはやることが残ってたから。おじさん……町長さんの夢枕に立って、爆破の件とか、いろいろと働いてもらわないといけないでしょ?」
「あ~、確かにそんなことを言ってましたですね~」
だけど、本当にそこまで町長さんの思考を操作できる霊力を、潮騒くんは持っているのでしょうか。
「ま、頑張ってどうにかするよ」
わらちの考えていることがわかったのか、平然とそう言ってのける潮騒くんでした。
潮騒くんはさらに言葉を続けます。
「それに、蚕ちゃんにもちゃんとお礼を言ってなかったからね。ほんとに、ありがとう」
「いえいえ。いいんです。それがわらちの役目ですから」
わらちの答えに、潮騒くんはいつもの優しい笑顔を送ってくれました。
「それにしても、ほんとによかったんですか? 笑歌ちゃんが潮騒くんのことを忘れて、他の人と幸せになっても」
最後にひとつだけ、と思ってわらちは質問をぶつけてみました。
「もちろん嫌だよ。そんな相手ができたら、呪っちゃうかもね」
にっこりと笑顔のままの潮騒くんからは、そんな答えが返ってきてしまいました。
……う、うわ~、この人、悪霊になるタイプの人ですか!?
なんて焦っているわらちを見て、
「あはははは!」
と大声で笑い始めました。
「大丈夫。ぼくは町長さんのほうの用事が済んだら、今度こそ成仏するつもりだから。そのあとはただ、空から静かに江窪さんのことを見守ることにするよ」
「そう、ですか。安心しましたです!」
「……まぁ、恨みの念とかは、飛ばしちゃうかもしれないけどね」
にっこり。
笑顔の裏に隠れた鬼が、ちょっとだけ見えたような気がしました。
笑歌ちゃんも、なんだか大変そうです。
でも、
なるようにしかなりません。
そんなもんです、世の中は。
「あはは、まだ小さいのに、年寄りじみてるね、蚕ちゃんは。さすが、『懐古ちゃん』っていうだけはあるね」
潮騒くんはそう言い残すと、すーっと姿を消していきました。