本日のお姉様は、転生したと仰っています。
執筆中のよう誠の息抜きに書き始めました。どちらも呼んで頂けたら嬉しいです。
気が付くと、豪奢な天蓋付きのベッドの上に横たわっていた。
見慣れない天井。重たいカーテン。そして、やけに豪華な部屋。
(……ここ、どこ?)
頭の中にかすかに残っていたのは、朝日が昇り始めた窓を眺めながら、パソコンと睨めっこしていたことだけ。それより前の記憶はどうしても思い出せなかった。
シルクのカバーに包まれた柔らかなベッドからゆっくりと抜け出し、近くにあった全身鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは、見知らぬ少女の姿だった。
黒かったはずの髪は淡い紫色の長い髪に変わり、黒い瞳は黄金色に染まっている。
知らないはずの顔。
――それでも、どこかで見覚えがあるような気がした。
「えっ、これって……バラアカのロゼリア!!?」
口から、思わずそんな声が漏れる。
『薔薇の誓いと約束のロイヤルアカデミア』
幼い頃から病弱で、屋敷の外へ出ることすら叶わなかった少女――フローラ。
そのフローラが幼い日に出会ったのは、名も知らぬ一人の少年だった。交わしたのは、いつかまた会おうという小さな約束。
再会を願いながら、数年の時が流れる。
やがて体調も落ち着いたフローラは、王族や貴族が通う名門――王立貴族学園へ入学することになる。
そこで出会うのは、王太子をはじめとする個性豊かな貴族子息たち。初めて触れる外の世界、そして芽生える恋心。
しかし、フローラが想いを寄せたその人には、すでに婚約者がいた。
気高く美しい、公爵令嬢。
ロゼリア・フォン・ローゼンベルク。
完璧な淑女として名高いロゼリアは、フローラの実の姉でもあり――
そして、この物語において“悪役令嬢”と呼ばれる存在であった。
今、鏡の中からじっとこちらを見つめるのは、そのロゼリアだった。
「な、なんで……ロゼリアが目の前に!? え、ゆ、夢? 痛っ」
頬をつねる。その指先に返ってくる痛みが、夢ではないことを知らせた。
――今、乙女ゲームに登場する悪役令嬢、ロゼリアに転生してしまったのだ。
「ってことは、推しを目の前で見られるってこと!?」
前世では、何度も『バラアカ』をプレイしていたことを思い出す。しかし今の立場は、あの物語の悪役令嬢。先に待ち受ける結末も知っている。
ロゼリアは、ヒロインである妹フローラに嫉妬し、嫌がらせを繰り返す。
その結果――王太子から婚約を破棄され、すべての罪を暴かれ、断罪される未来が待っている。そう、このまま物語が進めば、破滅は避けられない。
「……そんな未来、まっぴらごめんなんだけど!」
拳を握りしめ、心の中で決意を固める。
「こうしてはいられない! まずは今がいつなのか、確認しなくちゃ!」
前世では、きっと社畜のまま人生を終えていた。だからこそ――せっかく転生したこの人生で、今度こそ幸せを掴むのだ。
「まずは、フローラと仲良くしないと!」
破滅回避の第一歩は、ヒロインとの関係改善。
ロゼリアが断罪される原因の大半は、妹フローラへの嫌がらせにある。ならば逆に、仲良くしてしまえばいい。
――そうすれば、破滅フラグも回避できるはずだった。
「よし……!」
小さな決意を胸に、ロゼリアは腕を突き上げる。
扉の隙間からそっと覗くと、天井に向かって腕を伸ばす姿があった。
完璧で気高く、美しい公爵令嬢――誰もが憧れる存在。
だが、その姿は、まるで小さな子供のように無邪気であった。
思わず、くすりと笑みがこぼれる。
「ロゼリアお姉様は、何をしていらっしゃるのでしょう?」
小さく首を傾げて呟くフローラの声が、静かな部屋に響いた。
「……はあ。本日もロゼリアお姉様は可愛らしいですわ」
悪役令嬢のもの書いてみたいと思ったのですが、ロゼリア視点じゃなく、メインヒロイン視点の話が浮かんだの でそっちにしました。この作品の主人公はフローラです。




