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【完結】冷徹皇帝は猫の前だと赤ちゃん言葉〜後宮侍女の愛猫日記〜  作者: 木風


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第二話

「ですから、陛下。私が猫の餌になりますと、この子たちのブラッシングをする者がいなくなってしまいます。特にその子は長毛で毛玉ができやすい体質ですので、一日に一度は梳いてあげないと可哀想ですよ」

「……貴様、朕を恐れていないのか?不敬罪で首が飛ぶかもしれんのだぞ」

「首が飛ぶのは困りますが、陛下。先ほどの子猫への接し方を見る限り、陛下は『毛玉ひとつで心を痛める慈悲深いお方』だとお見受けしました。そんなお方が、無実の侍女を処刑して、子猫を悲しませるはずがありません」

「ぐっ……」


皇帝が言葉に詰まった。

図星だった。

彼は『冷徹』という鎧を纏うことで、後宮の粘ついた欲望から自分を守ってきた。

だが、その鎧の中身は、猫の肉球の匂いを嗅ぐだけで幸福の底に沈めるほどの、重度の愛猫家。


李白はバツが悪そうに視線を逸らし、抱えていた子猫をそっと小鈴の前へ差し出した。

火の明かりの下で見ると、子猫の額の模様は確かに小さな餅菓子みたいに丸い。


「……名は、なんという」

「この子は『おはぎ』と呼んでいます。背中の模様がぼたもちみたいでしたので」

「おはぎ……。ふん、妙な名だ。朕は『雷電(らいでん)』と名付けようと思っていたのだが」


ダサッ……センスが中二病っぽいです、陛下。


彼女が子猫を受け取ると、おはぎは慣れた様子で胸元へ鼻先を突っ込み、すぐに小さくゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

その音は、蝋燭の火より確かに温かい。


「なっ……!朕がどれだけ撫でても、一度も喉を鳴らさなかったというのに!」


皇帝の表情が、目に見えて崩れた。

悔しさより先に、わずかな嫉妬が混じるのが分かってしまって、小鈴は少しだけ笑いそうになる。


「陛下が先ほどのように、鼻息荒く『ちゅー』を迫ると、猫も緊張してしまいます。もっと、こう……無心になるのです。石鹸にでもなったつもりで」

「せっ、石鹸だと……?この朕に、石鹸になれと言うのか」

「はい。さあ、指先に力を入れず、耳の裏を……そうです、そこです」


促されるまま、皇帝は恐る恐る指を伸ばした。

爪を立てないよう、絹を撫でるみたいに。

耳の付け根をかすめると、おはぎの体から力が抜け、「にゃふぅ……」ととろけた声が零れた。


「……おおっ!」


李白の目が見開かれる。


「鳴いた!今、朕の指で鳴いたぞ、おはぎ(仮)が!」

「おめでとうございます、陛下。これで今日からパパですね」

「……パ、パパ……」


皇帝の唇が『パパ』の形に動いた瞬間、彼はハッと我に返る。


「……名はなんという?」

「……え……先ほど、『おはぎ』と……」

「違う!お前の名だ!」

「?小鈴、と申します」


名を告げると、何か考え込んだ後すぐに、咳払いをして冷徹皇帝の仮面を被り直す。


「コホン。……侍女・小鈴。貴様に命ずる」

「はぁ?」

「これより毎晩、この刻限にここへ来い。貴様が猫を呼び集め、朕がそれを……その、なんだ。視察(という名のモフり)を行う。これは国家機密だ。他言すれば、貴様の家系図の末端に至るまで、国外追放とするからな」


この皇帝は正気だろうか?

思わずそんな考えが過るが、小鈴に拒否などできる権利があるわけもない。


「かしこまりました。陛下との『密会』、謹んでお受けいたします」

「密会と言うな!語弊がある!」


蝋燭の火が、また小さく揺れた。

その揺れが、二人の間の距離だけを少し縮めた気がした。


こうして、後宮の片隅で『皇帝』と『下っ端侍女』による、奇妙な猫の世話が始まった。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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