彼女が寝取られましたが、全く興奮しませんでした。
始めたてで拙い部分がありますが、ご了承ください!
彼女と順風満帆に過ごせていた・・・
お互いを想い、尊敬し、支え合う。この人が俺の一生に一度の運命の人だと思い込んでいた。
出会いは高校1年の時の文化祭実行委員だった。委員長が一人一人の役職を決めるのがルールであり、当然委員長自身による偏見で決めている部分もあるだろう。そんな中俺は執行部という実行委員の中で一番偉い立場の役職に配属された。そこで出会ったのが、俺の彼女“だった”人「鴨志田」だ。
鴨志田は、俺からしてみれば落ち着いてて凛としていて何より声が可愛かった。何かネットで活動しているのではと思うほど、彼女の声は綺麗だった。
最初は口数が少なかったが、仕事をこなす上で関係が構築されていき、放課後はいつも一緒に帰る仲にまでなった。
「仕事疲れたな〜。あっそうだ。コンビニでパピコでも買ってくるよ。暑いでしょ?」
「えっ!いいよ大丈夫だよ。それに鈴木君、お金厳しいんでしょ?これくらいの暑さハンディーファンがあれば凌げるから。」
「いいって、たかが200円出せば買えるものなんだし俺の財布のことは気にしないでって!」
ああ・・・高校卒業しても鴨志田と関わりが絶えてほしくない、とこういう何気ない会話をするたびに思っていた。
その後も関係は続き、文化祭が終わった後もメッセージのやり取りは絶えず、2年、3年の文化祭実行委員も参加した。もちろん鴨志田も。
「今年で終わりだな〜もう鴨志田と作業できるのも後少しだけって考えたら・・・」
「えっ?何言ってんの。実行委員が終わっても、鈴木君とは関係を築き続けたいから。」
「そんなしみじみしたこと言うんだったら手を動かしてよ。」
「はぁ〜い。」
「・・・・・・そういえばさ、鴨志田って中学まではどう過ごしてたの?」
「えっ?どうしたの急に。」
「いや、初めて会った時はさ、鴨志田ってなんと言うか今よりもミステリアス感があったと言うかさ。ずっと中学まではどう過ごしてたのかなって思ってたから。今になって知りたくて。」
「・・・・・・ぼっちだったよ。友達もいなければ、好きと言ってくれる人も仲間になってくれる人もいなかったよ。」
「でも、鈴木君と出会ってから毎日楽しくてね。私のことを好きでいてくれるのも仲間でいてくれるのも鈴木君だけ。だから、鈴木君とは今後も一緒にいたいなぁ。って思ってるよ。」
彼女の放ったその言葉は側から見たら少女漫画の様な口先だけの言葉に過ぎないだろう。
だけど、俺はそんなことを思わずにただただ嬉しさに浸っていた。彼女からそんな言葉が聞けるだなんて思ってもいなかったから。
だが、その言葉が数十ヶ月後に叶わぬものになるのを俺は知らない・・・
文化祭が終わり、受験シーズンに突入した。
お互いに理系のため分からないところは教え合う、まさに切磋琢磨していた。
「そこは積分するの。大カッコつけるの忘れないでね。いっつも付け忘れて指数と勘違いするんだから。」
「分かってるって。大丈夫大丈夫。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いいか。等加速度直線運動は・v=v0+at・s=v0t+1/2at^2・v2−v02=2ax これを暗記するんだ。」
「物理が苦手なのは知ってるけど、これは最低限の知識。」
「ん〜〜無理!イメージできない!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
無事に幾度の模試や定期テストを終え、入試間近になる。
俺も鴨志田も同じ大学の推薦をもらうことができたので、試験日は同じ。ただ、学部が違うので時間は少々食い違う形になった。
学校の正門に立ちお互いに鼓舞しあい、入試を迎える。
結果・・・見事に合格しお互いに抱きしめあった。
これからも一緒の大学で過ごせると考えたら嬉しくてたまらなかった。
振り込みも済ませ、住む場所も決めた。俺は残りの高校生活のうちにやりたいことがあった。
それは彼女と恋人の関係になることだ。そして俺は彼女に告白した。
「鴨志田。俺と付き合ってください・・・!」
「・・・!うん。ありがとう!私を選んでくれて!」
この日は受験に合格した時のハグとは違う、お互いを大切にしあうような愛を育み始めたハグだった。
そこからはスキンシップも多くなり、帰り道では腕を組んだり、カラオケでは体を擦り寄せてきたりしてきた。
俺はその行為が“誘っている”と思い勇気を出して彼女に確認した。
すると彼女は黙り込み赤面して顔を伏せた。俺はその行為に理性が壊れ彼女をホテルに連れて行った。
強引ではない。彼女はしっかり俺の腕を組み、嫌がる素振りを見せなかったことに俺は確信した。
そこからはお互いを求め合う様な愛のある営みをした。名前を呼び合い、跡をつけ合い、優しく抱きしめ合いながら・・・
そこからは数を重ねて行った。放課後や休日などを利用し、何度も何度も何度も。
初めてなこともあり戸惑うことや思い通りにいかないこともあったが、彼女は笑顔で受け止めてくれた。
だが、ある日を境に俺は違和感を感じた。そう、彼女に余裕がある表情ができたのだ。
俺のはそこまで小さい方でもなく、柔らかい方でもない。以前まで甘い声を出して喘いでいた彼女が最近はニヤけながら俺を見る様になった。
エロ漫画の様に、性行為してる女が余裕そうな表情をするとムラッとする様な感情は俺には湧かず、逆に下手くそになったか。といった自分への戒めや鴨志田に対する心配などが勝ってしまい、次第に俺のは勃たなくなってしまった。
卒業式を終え、本格的に新生活が始まった。
住む場所を決めたと言ったが、鴨志田と同棲だ。アパートの部屋は二人暮らしするのは問題ない広さだ。
荷物をまとめ、整理し、大学から与えられている課題を一緒に進めた。もう夫婦も同然と思い気分は最大限にまで高なっていた。
そこから数ヶ月後、本格的に大学生活が始まりサークルなどにも入った。
お互いに軽音楽のサークルに入り、飲み会やイベントにも参加した。
そして、ある日を境に鴨志田は帰ってくるのが遅くなった。
特別補講やイベントなどはないはずなのに何故か帰ってくるのが遅いことに違和感を感じた。
メッセージを送っても「ごめん。ちょっと用事があるから遅くなるね。」と言ったメッセージしか返ってこない。
最初は忙しいのだろうと思っていたが、ここまで同じ文で返されると誰しも怪しいと思うだろう。
・・・今の俺にできることは全部やったつもりだ。料理も洗濯も片付けもやった。
不満があるなら教えて欲しい。でも聞けない。本能でそれを聞いた瞬間に何かが壊れると思ったからだ。
2年生になって俺の誕生日である6月19日。そう今年の俺の誕生日は・・・・・・「仏滅」の日だ。
もちろん鴨志田は俺の誕生日を把握してくれている。今日は早く帰れるらしいので、ケーキを用意しておいた。
俺の好きなチョコケーキと彼女が好きないちごケーキ。お金がないので豪華な料理はできないが、まあディナーはいつも通りでいいと思い調理をする。すると彼女が帰宅してきた。
「ただいま〜!」
「おかえり〜お風呂やってるから入ってきていいよ〜」
「ありがとう〜」
これくらいの会話は今までもあった。最低限で素っ気ない会話。
高校生の時の彼女とは違う。それは明らかだった。
彼女が風呂を上がり、俺は料理をテーブルに並べる。
すると鴨志田が急に部屋の電気を消し、俺をベットに押し倒した。
その彼女の表情は、今から獲物を完全に堕とすような表情だった。
「ねぇ鈴木君。ここ数ヶ月えっちしてくれないよね?毎日漫画でシてるの知ってるよ?」
「前シた時全然勃ててくれなかったからマンネリ化しちゃったかなぁって思って、私なりに考えて頑張ったんだ。」
そして彼女は息を荒くしスマホを取り出して動画を俺に見せた。
その動画が再生され、5秒後に信じたくなかったものが映り込んだ。
彼女がベットの上で手足を拘束され、褐色肌の黒髪の男が画面にいた。
その後音声が聞こえる。
「いやぁ、こんなに顔が良くて胸も尻もそこそこ大きいなんて最高だね。」
「大丈夫、怖がんないでいいからね。彼氏君よりも気持ち良くさせてあげるから・・・」
「えへへ・・・木村君のに犯されてから、もう満足できなくなっちゃって。」
「だからね。えっちな動画撮って形としてこれからのことを残しておきたいのぉ〜」
「・・・ハハハ。めっちゃエロいなぁ。なぁ、そろそろ彼氏と別れて俺と付き合おうぜ?」
「当たり前じゃぁん。木村君の方が好きぃ〜」
動画の会話を聞く限りおそらく、いやきっと何度も性行為を行なっていたんだろう。
何より鴨志田のあの表情はもう堕ちている表情だ。俺には見せなかった表情。
「ど、どうかなぁ・・・?これねちゃんと前もってセリフとか決めて撮ってるから安心してね。」
「興奮してくれたら嬉しいな」
いつも見てるエロ漫画の中に最近特に見ているのは寝取られものだ。エロ漫画では彼女が寝取られて興奮して見抜いて終わりだが、今の俺は興奮どころか怒りが湧き出てきている。
安心・・・?嬉しい・・・?
「・・・・・・たんだよ。」
「ん?どうしたの?」
「俺の何がダメだったんだよ!!」
「何がお前の気に触ったんだよ!!」
俺は柄にもなく怒声をあげた。彼女は俺の声にビビり、スマホを隠した。
「えっ・・・・・・?なんで怒るの?私、鈴木君と久しぶりにえっちしたくて、頑張って撮影したんだよ?」
「頑張って協力してくれる人を探して・・・」
「お前の浮気事情なんてどうでもいいんだよ!」
「その動画とお前の発言を聞く限り、AIで作ったわけでもなければ、お前にとっての俺以外の男との初めての行為ではないみたいだし・・・」
ああ、口が止まらない。今まで鴨志田のことをお前呼びしたこともないのに・・・こんなにキレたこともないのに・・・
こんなに・・・・・・大量の涙を流したことはないのに・・・・・・
「数ヶ月前からおかしいと思ってたんだ。帰りが遅いのも、メッセージの返信が全部同じなのも・・・」
「全部・・・ではないかもしれないけど、俺からしたら俺が送った時間帯はお前が浮気してた時の時間帯なんだと思ってしまうよ。」
「ちが・・・・・・前からは彼が無理やり・・・・・・」
「じゃあなんだよ!お前はあの猿に犯されて服従したっていうのかよ!」
「性欲に負けて、いいなりになったのかよ!」
「わ・・・私は・・・・・・ただ・・・・・・・・・」
鴨志田が涙目になりながら必死に弁解しようとしているが、俺はそんな彼女を無視し発言を続ける。
「どんな教育を・・・どんな道徳を学んできたんだよ!!」
「この結果に俺自身に問題はあるのか!?なぁ!!おい!!」
「・・・ヒグっ・・・・・・グスっ・・・・・・」
「泣きたいのはこっちだよ・・・被害者面すんなよ・・・お前は男と猿みたいにやりまくって幸せだっただろ・・・?」
「一方で俺は、ずっと鴨志田を心配してたんだよ。家事も全部こなしてたんだよ。なのに・・・こんなことってねぇだろ・・・・・・」
もう彼女は言葉すら話さなくなった。ただひたすら泣く。彼女の行動はそれだけだった。
「お前もとっくに大人だろ?大人なら他人に迷惑かけたら言うことあんだろ・・・」
「お前は・・・ごめんなさいの一言すら言えねぇのかよ!!!!」
「う・・・うう・・・・・・なんで・・・なんで謝ってくれねぇんだよ・・・ちくしょう・・・・・・」
その後、俺はテーブルに置いてあった料理をラップに包んで冷蔵庫に入れて必要最低限のものを持って家を出た。
そこからは格安のホテルに宿泊し続け、俺は不動産屋や引越し業者に依頼し、すぐに引越しができるとのことなので荷物を段ボールにまとめるために家に帰宅した。
リビングには、やつれた鴨志田がベットの上で体育座りをしていた。
「あっ!鈴木君!帰ってきてくれたんだね!待ってたよ!」
「勘違いしないでくれ。新しい家が見つかったんだ。引越しするために荷物をまとめにきただけだよ。」
すると彼女は顔を真っ青にして俺に縋り付いた。
その姿はもはや滑稽にしか思えなかった。
「・・・ねぇ・・・私聞いてない。なんで・・・?どうして引越しなんてするの・・・・・・?」
「私達のこと捨てるの・・・?」
「・・・・・・私・・・達・・・・・・・・・?」
驚きの発言に俺は目をギロリと睨みつける様に彼女を見つめる。
「私・・・妊娠してるの・・・・・・」
「私一人じゃ、育てられない・・・私、まだ学生だし・・・」
「・・・・・・で?結局何が言いたいの?」
「あの男が全部悪いの!!私は悪くない!!私はもうひとりぼっちにはなりたくないの!!」
「彼に妊娠のことを報告したら、ブロックされて・・・連絡もつかないの・・・!!」
「だから・・・悪かったから。私と一緒に・・・・・・」
鴨志田の言葉に嫌気がさして、俺は彼女の発言を遮った。
「要するに因果応報の天罰が下ったってことでしょ?俺と猿人の子ともに何の関係があるの?」
「知らないガキを育てる義理なんて俺にはないし、何より・・・」
「お前みたいな最低な女と一緒にいたくないし関わりを持ちたくない。」
「助けたいなんてこれっぽっちも思わない。」
「なんでそんなことをいうの・・・・・・?私・・・君の彼女なんだよ・・・・・・?」
「はぁ・・・・・・お前の様な被害者面している愚か者に分かりやすく教えてあげるよ。」
「お前は俺と猿人を天秤に掛けて猿人を選んだ。そしてお前は猿人にも裏切られた。分かる?」
「お前は人間関係・・・いや、人生を賭けたギャンブルをしたんだよ。そして負けた。負けたから大切なモノを失ったんだ。」
「ギャンブルに限ったことじゃないけど、世の中はリスクとリターンで溢れてるんだよ。リターンを得ようとしたんだ。当然リスクを背負わないとだろう?」
「お前の場合は、ハイリスクノーリターンというバカなやつしかやらないことをしたんだよ。」
「恥を知れ。メス豚野郎が」
その後、彼女は大声で泣き叫んだが、俺はイヤホンをつけながら黙々と荷物をまとめて引越し業者に引き渡した。
それからというもの、俺が5年間関わりを築き上げてきた彼女だった鴨志田は妊娠の件と、男との性行為の件が明るみとなり大学を辞退した。男は男で数々の女性達と身体の関係をしていたことがある女性の発言で発覚し、訴訟され慰謝料を請求されたのと同時に退学させられたそうだ。
元々彼女の両親は持病持ちで、母親は先日亡くなったと母から聞いたが、俺からしたらどうでもいいことだ。
鴨志田が今どこでどうしているかなんて俺は知らない。連絡先は消しているし、思い出の品も元々いた部屋に置いて来たままだ。友達や母親からも鴨志田の心配や捜索願を出そうなどの声があったが、俺は鴨志田の件だけは無視していた。アイツとの思い出も、そもそもアイツ自身の存在を俺は消したいんだ。
・・・正直思い出したくもないが、多分これからもずっと誕生日になったらこの前のことを思い出すことになるんだろうなと思いながらテレビをつけた。
「速報です。」
「先日から行方不明になっていた女性が、つい先程森の中で発見され死亡しているのが確認されました。」
「発見された女性は、以前〇〇大学に在学していた鴨志田恋さん20歳です。」
その知らせを見て、俺は今どういう表情をしているのか分からなかった・・・
無表情なのかもしれない。泣いているのかもしれない。笑っているのかもしれない。
ただ、一つだけ理解できたことがある。それは・・・
俺の右手の人差し指が、無意識にリモコンの録画ボタンを押していたことだ。
※この話はフィクションです。登場人物と実際の人物に関係はありません。
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