おはよう
初投稿です
「明日は卒業旅行か‥」
高校生活が終わろうとしている。今までこれといった青春を享受できなかった山 一之介はどうせ明日も1人で過ごすとわかっていながら、関わりもないくせクラスのマドンナ 吹風 椛との楽しいイベントがあるのではないかというかすかな希望を抱き意識を夢の中に飛ばした。
〜
「あら、起きたのね。」
夢かと思った。目の前には長い美しいエメラルドグリーンの髪の毛、長いまつ毛に藍色の瞳、血色のいい健康的な肌、プルプルとした唇、彼女の発した声に頭がとろけるような感覚を覚えた。アニメや漫画でしか見ないようなとんでもない美少女が目の前にいた。
「君は?」
あとで思えば小屋のようなところにいて周りには青白い光がフヨフヨいるような非現実的な空間にいるのに、それらに意識が向かなかった。それほど僕の心は彼女に奪われていたのだろう。
「私の名前はミック。あなたフヅマトの樹海で倒れていたの。あのままじゃ魔獣に襲われてしまうわ。なんであんなところにいたの」
聞き慣れない単語を聞き、急に現実に戻された感じがした。訳のわからない状況に頭が混乱しかけたが、すぐに落ち着いた。そして心躍った。今までの内気で寂しい人間から脱却できそうな予感がした。
「わかんないんだ、なにも。ここはどこなんだ?もしかして異世界ってやつなのか?」
彼女は少し悩んだ様子で、何事もないように本を読み出した。何度か勝手にベッドから出ようとしたが彼女に止められてしまった。そのまま三時間くらい経っただろう。
「よし!」
そういうと彼女は本を勢いよく閉じて急に僕の手を引いてボロい木のドア開けたが、目の前には美しい世界があった。数十メートルはある木々が並び、それらの木にはたくさんの生物が集まっていた。木の幹には白銀の毛をした美しい狼(のような動物、耳がウサギのように長く、オペラ歌手のような声色で泣いていた。)、頭が赤色に光り、空中を泳ぐように飛んでいる小ぶりな烏賊、他にも多くの幻想的な生物達がそこにいた。本当に自分が異世界にいるのだと強烈に実感した。
「急にどうしたんだ。さっきまではずっと僕を無視してきたくせに。それにしてもすごいな、別に景色とかそういうのに興味はないけどちょっと感動しちゃったよ。」
彼女は僕の言葉を無視してただ空を見つめていた。なんてことはないただの星が綺麗な夜空だった。僕も夜空をしばらく眺めていると流れ星が落ちた。
「来たね」
彼女がそういうと僕も周りを見渡そうとしたが、そんな必要はなかった。首を下ろした瞬間、視界に入ったのは『龍』だった。そこにいたことに全く気づかなかった。美しい龍だった、まるでミックがそのまま竜になったようで、力強さは感じず儚い印象だ。
「じゃあ行こうか。『ミラルク』、この子の名前。乗っていくよ。」
どこにいくのかわからないまま全長五十メートルはあるだろう龍に乗り、流されるままに彼女に従っていた。
〜
空を飛ぶ龍に乗っている事実に興奮が冷めない。そんな僕に彼女が久しぶりに話しかけてきた。
「いろいろ調べたんだ。君のような知らない世界からきた人は『迷い物』っていうんだって。今からなんか〝登録〝しないといけないんだよね。」
何をいってるのか。よくわからなかった。人のことを〝もの〝といったり、登録だとか神妙な面持ちをぼくがすると
「ずっと一緒だってこと」
そういった彼女は僕に微笑みかけた。僕は興奮した。こんなことってどんな人生を送ったって起こり得ないとても幸福なことだと一瞬で理解したからだ。今後の人生を想像して笑みが止まらなかった。僕は言葉の表面ばかり受け取り、不可解な現実を考えていなかった。なぜ彼女はそんなことを言ったのか、この世界はなんなのか。なぜなら僕は今まで自分から行動せず誰かの言うことにただ従うくせに、偶然にの出会いばかり妄想する、悲しい男だからだ。
ピロン♪
ポケットのスマホからLINEの通知オンが鳴った。電波なって繋がっていないだろう、と思いながら確認してみるとクラスのマドンナ、椛ちゃんから「今日は楽しかったね❤️今度は2人で行こ!」と連絡が来ていた。何も考えが及ばなかず、急に恐怖が湧き上がってきた。自分が理想と現実の狭間にいるようで君が悪かった。夢かとも思ったが、ほっぺをつねっても何も起きない。
「もう考えるのはよそう。」
小声でそういうと、僕はミックを見つめこれから新しい人生が始めるんだと、思いを馳せ彼女とのあんなことやこんなことを妄想することにシフトした。
「そろそろ着くよ。君の名前は『キュート』。これからもよろしくね、あたらしい奴隷クン❤️」
僕の新しい人生が始まった。
読んでくれた人ありがとうございます♪