78 体育祭の準備②
「何やってんだお前」
体育祭の競技決めを終えてお昼休み。
僕は真っ先に昴を問い詰めた。
「だって幼馴染四人が同じクラスになれたんだよ。どうせなら幼馴染組で思い出を作りたいじゃん」
昴は悪びれる様子もなくそう言う。
「その気概は結構だが、なんでよりによって体育祭のリレーなんだ?」
「青春は汗を流さないとねっ」
「このスポーツバカ…」
ダメだ…こいつは自分のした事の重大さを分かってない。
確かに四人で楽しい思い出を作れるのなら文句ない。でも体力的に不利な五十鈴さんを大事なリレーに出場させるのは危険すぎる。もし負けたりしたらみんなが気にしなくても、本人は間違いなくへこんで楽しい思い出どころかトラウマになりかねない。
「それに五十鈴さんはやる気満々だよ」
昴は向こうを指差す。
「華岡の体育祭、なんか面白そうだよね」
「体力には自信ないけどがんばろう…」
「楽しみだね~」
「……!」
五十鈴さんはグループのみんなと楽しそうに談笑してる。
心配しているのは僕だけ?
「まぁしょうがないだろ、もう決定しちゃったんだから」
そう言って西木野さんが僕の肩をポンと叩く。
「明日から幼馴染組で猛特訓だよ!」
昴はやる気に燃えていた。
ああ…僕はもう不安で不安で仕方ないよ。
ついでに巻き込まれた涼月くんにも同情しておこう。
※
その日の放課後。
五十鈴さんグループはすぐ解散することになって、僕と五十鈴さんは芸術室の鍵を借りて今後の話し合いをすることになった。
「園田くん……」
「はい?」
「あれ、何だろう……」
芸術室に向かう途中、五十鈴さんが校庭の方を指差す。
そこでは大勢の人が集まり、随分と大がかりな物を作ろうと準備していた。テントではなさそうだし…なんだろう。
「あれは体育祭名物、オブジェクト合戦の準備よ」
その疑問は一緒に付いて来てくれた杉咲先生が答えてくれる。
「芸術、建設、工業専門の部活がオブジェクトを作ってぶつけ合うの。部活対抗競技の名物企画なのよ」
「へぇ~」
やっぱり華岡はやることがでかい。
いったいどんなオブジェクトが完成するのか楽しみだ。
「それより…華岡には芸術部ってあるんですね」
「ありますよ」
美術部がなくて芸術部がある…そもそも違いはあるのか?
謎が多いぞ華岡学園。
「うーん……」
五十鈴さんは校庭で準備をする生徒たちを見て唸っている。
「どうしました?」
「……美術部二人だけだと、まだ参加できないね」
「…」
五十鈴さん、やるつもりなんだ。
仮にもし僕ら美術部がこの競技に参加するとしたら、美術に詳しい人と大勢の部員を集めないといけない。果たしてこの美術部はそこまで成長するのだろうか。
…想像もできないや。