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73 友達を家に招待する①




 夏休みも残り二日。

 この僅かな時間を使って、五十鈴さん宅で勉強会をすることになった。


 僕らは夏休みが始まってすぐ、勉強会で大量の宿題を数日で終わらせた。これで夏休みは遊び放題になったのだが、すっかり勉学から離れてしまった。


 今のままでは休み明けのテスト対策が不十分。

 だからこその西木野さんの提案だ。


 これまで何度も五十鈴さん宅の前まで行ったことはあるけど、中に入るのは初めてだ。しかも集まるのは僕以外みんな女子。


 …今回は五十鈴さんじゃなくて、僕がテンパる日かも。





 そして当日。

 僕は一足早く五十鈴さん宅の近くにある公園に着いて、ベンチに座って待機している。


「今日も暑いな」


 もうすぐ夏休みは終わるけど、この暑さはまだまだ続く。

 早く秋になって涼しくならないかな…


「おーい」


 あ、西木野さんがやって来た。


「西木野さん、こんにちは」


「おう、いつも早いな」


「ええ…来る時間を間違えましたよ」


 僕は三十分も前からここで待っている。

 普段なら五十鈴さんが誰よりも早く待ち合わせ場所に到着するから僕も早めに家を出るんだけど、今回五十鈴さんは待ち合わせ場所に来ないから失敗だったよ。


「なんか今年の夏休みはいつも園田と顔合わせてる気がするな」


 そう呟いて西木野さんは僕の隣に座る。


「いつも五十鈴さんと一緒に遊んでますからね」


「それはそうと意外だったよ。五十鈴さんが私たちを家に招待してくれるなんて」


「そうですね…最近の五十鈴さんの行動は読めませんよ」


「それだけ成長したってことだな」


 なんか僕と西木野さんで保護者みたいな会話をしているけど、それも仕方のないことだ。だって五十鈴さんは間違いなく保護すべき対象だからね。

 

「こんにちは…」


 そうこう話していると木蔭さんがやってきた。

 二人は比較的に早く集合場所に来てくれるから助かる。


「きたきた。これで全員だな」


 この場に集まったのは三人。

 さらに五十鈴さんを入れて四人が、今日の勉強会の参加メンバーだ。


 因みに昴は勉強と聞いて逃げた。

 星野さんも似たようなこと言っていたらしい。

 朝香さんは西木野さんが誘ったんだけど、返信が返ってこなかった。


 勉強の集まりに参加したくない気持ちは分かるけど、休み明けテストで酷い目に遭いそうだな。


「じゃあ行くか、五十鈴さん家に」


 西木野さんはベンチから立ち上がり、僕も後に続いた。





 ついにやってきた五十鈴さんの自宅。

 人の家にお邪魔するのは、何度経験しても慣れないものだ。


「うー…」


 隣で木蔭さんは不安そうに唸っている。


「木蔭さん、どうかしました?」


「その…友達の家に遊びに行くの、初めてなんだ…」


「あー…」


 そっか、緊張しているのは僕だけじゃないんだ。きっと五十鈴さんも今か今かと僕らを待ってるだろうし。


「鳴らすぞー」


 西木野さんはいつもの調子で、躊躇いなくインターホンを押す。

 するとすぐ玄関の扉が開かれた。


「いらっしゃーい。どうぞ、中に入って」


 迎えてくれたのは五十鈴さんの母さんだった。


「お邪魔します」

「お邪魔します」

「お邪魔します」


 五十鈴さんのお母さんに迎えられ、僕らは家の中に招き入れられる。


「園田くん、久しぶりね」


「どうも、ご無沙汰してます」


「いつも蘭子を支えてくれてありがとうね」


「いえいえ、僕だけの力じゃないですよ」


「蘭子ったら口を開けば園田くんの話ばかりなのよ~」


「そ、そうですか…」


 五十鈴さん…僕のことどんなふうに話してるんだろう。


「親とは顔合わせ済みなんだな」

「二人は公認の仲だね…」


 後ろで西木野さんと木蔭さんがそんなことを話している。

 なんか恥ずかしい。


「お二人も蘭子の友達ね。来てくれてありがとう」


 五十鈴さんのお母さんは背後にいる二人にもお辞儀をする。


「蘭子は二階の部屋にいるけど、インターホンの音に気付いてないみたいね。そのまま上がっちゃって」


 五十鈴さんのお母さんは階段を上がるよう促す。

 僕らの来訪に気付いてないのに、このまま五十鈴さんの部屋に向かっていいのかな?


「よし、忍び足で驚かせてやろうぜ」


 そこで西木野さんが変なイタズラを提案する。


「うん…息を潜めるのは得意」


 何故かいつも真面目な木蔭さんまで乗り気だ。


「仕方ないですね…」


 止めさせるようなイタズラでもないし、僕は一歩引いたところで見守ろう。

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