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65 美術部➂ ㋨




 こうして僕と五十鈴さんはレタリング検定を受けることになった。


 やるとこは大きく分けて二つ。

 筆と定規を使って文字を作る実技と、筆記による知識だ。


 たった一週間の短い期間。

 杉咲先生は大丈夫だと言ってたけど僕はダメ元で勉強を始めた。


 でも実技は僕の性に合ったのか苦じゃなく、知識は杉咲先生がすごく分かりやすく教えてくれた。僕と五十鈴さんは集まれる日は芸術室に集まり、休みの日は家で検定の勉強を続けた。


「あれ?お兄ちゃん、宿題終わったんじゃないの?」


「…ちょっと部活でな」


「え、部活始めたの?」


「そんな忙しい部活じゃないから、家事当番は変えなくていいぞ」


「ふーん…あのお兄ちゃんが部活ねぇ」


「なんだよ…」


「べつにぃ~」


 妹が珍しがって勉強の邪魔をしにくるけど、一週間でできる限りのことはやった。僕はそんなに勉強熱心ではないんだけど、五十鈴さんの熱意に後押しされて集中することができた。





 そんなこんなで試験の日。

 会場は華岡学園の空き教室を借りて行われた。


 受験者は僕と五十鈴さんの二人だけ。


「それじゃあ知識の答案を配りますね~」


 杉咲先生は僕と五十鈴さんに試験用紙を配る。

 検定試験ってこんな小規模で勝手にやってもいいんだ。それとも華岡が異質なのか…そんな余計なことを考えられるくらい僕は落ち着いていた。


「……」


 五十鈴さんは初めての試験で緊張しているけど、その表情に不安はない。たった一週間だけど僕らはこれでもかってくらい勉強したんだ、合格の自信ならある。


「それでは試験を開始してください」





 そして数日後。

 僕らは杉咲先生に呼ばれ、大学部の職員室に来ている。


「二人共、合格おめでとうございます」


 そして杉咲先生からレタリング検定四級の合格証を渡された。

 結果は僕も五十鈴さんも合格だ。


「やりましたね、五十鈴さん」


「うん……!」


 猛勉強した甲斐あって、実技も知識もほぼ満点だった。四級は簡単であまり役に立たないスキルらしいけど、貰えると嬉しいものだ。


「うふふ…二人は勤勉ね。今後の活躍が楽しみですよ」


 この結果に杉咲先生は満足げだ。

 美術部を立ち上げてから、先生はやけに浮かれている気がする。もしかして二年前に無くなった美術部に未練でもあったのかな。


「先生……これもお願いします」


 すると五十鈴さんは部活申請書の紙を先生に渡した。


「あ、そういえばまだでしたね」


 先生がそれを受け取る。

 これで僕と五十鈴さんは正式な美術部の部員だ。


「それじゃあ失礼します」


「失礼します……」


 僕らはお辞儀をしつつ職員室を後にする。

 今日は合格証を貰うだけで、芸術室には寄らずこのまま帰るつもりだ。


「……」


 五十鈴さんは嬉しそうに合格証を眺めていた。


 ただ芸術室の整理をするだけの集まりだったのに、美術部を立ち上げて一週間で検定試験に合格…なんだか色々なことが怒涛に進んだな。


「…あ、五十鈴さん」


 僕はあるものを見つけて五十鈴さんを呼んだ。


「あの掲示板、色々なコンテストが張り出されてますよ」


 大学部の職員室前掲示板には様々なポスターがびっしりと張られている。イラストコンテスト、俳句コンテスト、グラフィックコンテスト…すごい数だ。

 それだけ外部の人が華岡の天才を注目してるということだ。


「いろいろ挑戦したいな……」


 五十鈴さんはどれも興味津々のご様子。

 僕らには無縁だと思っていた美術部だけど、こうして見るとやれることは多そうだ。


「これから頑張りましょうね、部長」


 僕がそう呼ぶと五十鈴さんの瞳が輝く。


「うん、がんばろう……!」

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