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56 みんなでプール①




 ついにやってきたプールの日。

 僕は無料の送迎バスで華宮ショッピングモールを経由して、待ち合わせの時刻より一時間半も前に湖島園入口に到着した。まだ誰も来ていないな…ようやく五十鈴さんより早く着くことができたぞ。


「……!」


 と思いきや、間もなくして五十鈴さんが駆け足で合流してきた。

 そんなに慌てなくてもいいのに…


「おはよう、園田くん……」


 五十鈴さんは息を切らして僕に挨拶する。


「おはようございます。昨日の疲れは残ってませんか?」


「大丈夫……いつもより元気」


「それは良かった、今日はめいいっぱい楽しみましょう」


「うん、楽しみ……!」


 今回は複数人の友達と集まって、大型プールへ遊びに行くという大イベントだ。五十鈴さんが浮かれてしまうのも無理はない。


「…」


 しばらく五十鈴さんと話しながら待っていると、高身長の女性がこちらに近付いてきた。


「あ、確か…出雲さんですよね?」


 ちょっと前に五十鈴さんグループに加わった出雲さん。その身長は同学年でも最長で、クラスメイトの中で二番目に目立つ女子といっても過言ではない人だ。


「おはよう、出雲さん……」


「…おはようございます」


 五十鈴さんが挨拶すると、出雲さんは畏まった表情で挨拶を返す。


「出雲さんも五十鈴さんグループに加わったんですね」


「同行はするが、私のことは居ないものとして扱ってくれて構わない」


「そ、そうですか…」


 見た目通り出雲さんは壁を作るタイプみたいだ。西木野さんたちはよく、出雲さんをこの集まりに引き入ることができたな。


「お~い」


 そうこう話していると、西木野さんも合流してきた。さらに朝香さん、星野さん、木蔭さん、昴も続々と集まってくる。


「まだ約束の一時間前なのに、全員揃ったな」


 集まった面々を見回しながら苦笑する西木野さん。


「…改めて見ると、僕の場違い感が凄まじいですね」


 個性豊かな女子七人に囲まれるこの状況。

 平凡男な僕の異物感がひときわ目立って、居づらいなんてレベルじゃないぞ。


「なんだあの美少女…!」

「他の女子たちも、ただ者じゃないオーラがあるな」

「…なんであの集団に男子が一人混じってるんだ?」


 周囲の話し声が嫌というほど耳に入る。


「そんな細かいこと気にしてないで、さっさと行くぞ」


 西木野さんが周囲を気にする僕の背中を叩く。

 頼もしい姉御だな…





 今回の遊び場となる湖島園のプールは、この近辺だけでなく日本中で有名な大型プールだ。


 流れるプール、海水の混じった波のプール、すごい高さの飛び込み台、大きなアクアボール、そして目玉となる四つのウォータースライダ。一日かけても遊び尽くせないほど、湖島園には多彩なアトラクションがある。


 そして嬉しいことに、湖島園は華岡学園の生徒を優遇する措置がある。

 本来は予約必須で入場チケットを購入するのだが、華岡学園の生徒手帳を持っていればその手続きはパス。しかも半額の値段で入場することができる。城井くんいわく、この湖島園の創立に華岡の学園長が関わっているんだとか…おかげで僕らは気軽にここを利用できる。


 入場制限があるからすごい人混みでも遊ぶスペースは十分、非常に便利なプール施設だ。これじゃあ花束市民プールが寂れるのも当然だな。


「ふぅ…」


 僕は水着に着替えプール入口のベンチに腰を下ろす。

 女子組が来るまでゆっくり待つことにしよう。


「………」


 見たところクラスメイトや知り合いの姿は確認できない。もし見つかったら厄介なことになりそうだ…と言っても、今更どんな噂が増えたところで誤差だけどね。


「おーい園田、お待たせ~」


 そんなことを考えていると、西木野さんたちがやってきた。


 いよいよ五十鈴さんの水着姿のお披露目だ。


「……」


 五十鈴さんが選んだ水着は、白のシンプルなビキニだった。


 ビキニだけど二の腕の辺りがフリルになっている。こういうのをフリルショルダーっていうんだっけ?そのフリフリが五十鈴さんの肌を見えそうで見えない絶妙なラインで隠していた。

 いつまでも見ていたいと思わせる完璧な水着姿だ。


「園田、黙って考察してないで五十鈴さんに感想を言いなよ」


 西木野さんにそう言われるけど、こうなることは想定済みだ。


「すごく似合っていますよ。五十鈴さんは白との相性がいいですね」


「……!」


 僕が褒めると、五十鈴さんは緊張して無表情だけど嬉しそうだ。


「星野さんも似合ってますよ」


「え、私も褒めるの?」


「木蔭さんは落ち着いた水着でいいですね」


「…!」


 星野さんの着ている黄色のタンキニは活発なイメージにピッタリ合っている。木蔭さんはミントグリーンのワンピースは大人しい印象を崩さず馴染んでいる。


「西木野さんと朝香さんはお揃いなんですね」


 西木野さんはオレンジ色、朝香さんは水色のレースアップだ。色合いが二人の個性にマッチしていてグッドだ。


「とてもよく似合ってますよ」


「ふーん…私らも褒めて、五十鈴さんに()()()()を出す魂胆か」


「…」


 西木野さんに僕の作戦が見透かされた…だって五十鈴さんだけを褒めるのって恥ずかしいし、他の女子にも失礼だと思ったから。


「庭人くん、私は~?」


 昴が変なポーズを取りながら僕の前に出るが…


「見飽きた」


「ひどっ!」


 昴とは昨日、練習で散々遊んだから今日はスルーだ。


「出雲さんも似合ってますね」


 出雲さんの黒の大人っぽい水着は、すらっとした高身長によく似合っている。とても同年代とは思えないな。


「…」


 出雲さんはすんとしている。

 まあ当然の反応だな。


 こうして集まった女子七人の水着姿は、広いプール施設の中でも異彩を放っている。そして道行く人の誰しもが、五十鈴さんの水着姿に目を惹かれ足を止めていた。


「立ち止まらないでくださーい!」


 気付くとプールのスタッフが交通整理に入るくらい、周囲は人で混みあっていた。


「さてさて、私らも突っ立ってないで遊ぶとするか」


 西木野さんが僕らを先導してくれる。

 ついに始まったか…さてどうなることやら。

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