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47 友達とゲーム② ㋨




 急遽決まった僕の家で開催されるゲーム大会。

 僕と妹は適当に昼食を済ませ、すぐ来客の準備に取りかかった。そんなこんなで約束の昼過ぎ、そろそろ来る頃だと思うけど…


 ピンポーン


 お、チャイムが鳴った。

 玄関に向かって扉を開けると、そこには星野さんと五十鈴さんの姿があった。


「きたよー」


 休日の星野さんは緑のパーカーにショートパンツと、とても活発な印象を受ける私服姿だ。それと手に持っている貯金箱は今日のラッキーアイテムかな?


 休日に制服じゃない姿で会うのって、なんだか新鮮だな。

 そして待望の五十鈴さんの私服だが…


「……」


 いつもの学生服だった。


 …まぁいいや。


「どうぞ入ってください」


 僕はすぐ二人を家の中に招き入れる。


 うちは五階建てマンションの三階にある。

 部屋はリビングが一つ、僕と妹の部屋が一つずつ、両親が寝室に使う和室が一つ、大きなテレビが置いてある来客用の部屋が一つ。合わせて五つの部屋で分けられている。


 五十鈴さんたちはテレビのある来客用の部屋に案内した。ここなら大画面でゲームができるし、もちろんクーラーも付いている。友達と遊ぶにはもってこいの部屋だ。


「綺麗な新築マンションだね~」


 部屋まで来た星野さんは呑気に周囲を見回している。


「……」


 対して五十鈴さんはやっぱり表情を強張っていた。うちに来るのはまだ二回目だから、緊張するのも当然だろう。


「失礼します」


 部屋に着いてしばらくすると、お茶菓子を持った妹が入ってきた。因みに春頃に事故で負傷した足はほぼ完治しているからもう心配はいらない。


「妹の園田楓(そのだかえで)といいます。兄がお世話になっております」


 そして楓は丁寧に挨拶をした。

 僕と妹は子供の頃から親の知り合いや近所の人のお世話になっているから、来客の対応に慣れているんだ。


「兄妹揃って礼儀正しいね」


 その対応に星野さんは感心している。


「……」


 五十鈴さんは初めての相手に緊張して怖い顔になっていた。


「それにしても、いつ見ても美人さんですね~」


 だがそんな怖い顔は妹には通用しないぞ。

 こいつのコミュ力と社交性はもう中学レベルではない。それに五十鈴さんが気弱なことも事前に説明しているから、打ち解けるのは時間の問題だろう。


「うーん…でも、やっぱりどこかで見たことあるような…」


 すると楓は五十鈴さんを凝視しながら、何かを思い出そうとしている。


 過去に五十鈴さんと会った時、妹は僕らよりももっと幼かった。僕だって忘れたままなんだから、あの頃を思い出せるはずが…


「あ、思い出した!病院にいた儚い美少女だ!」


 と思いきや、楓は予想外のことを思い出してしまった。


「あっ」


「……!」


 僕と五十鈴さんも動揺しただろう。


 忘れてた、妹は入院中に何度か五十鈴さんを目撃していたんだ。こいつが思い出そうとしていたのは昔の話じゃない、入院生活でのことだったんだ。


「なんだお兄ちゃん、スカシたこと言っておきながらちゃんと唾つけてた…」


「ちょっと待て」


「んぐっ」


 僕はすぐ妹の口を塞いだ。

 五十鈴さんの入院生活のことは、まだ星野さんには秘密にしたいんだ。


「病院…?」


 当然、星野さんは不可解なワードに疑問を抱く。


「それよりゲームやりましょう、ゲーム!」


 話を変えるため、棚の中にあるゲームを引っ張り出した。


「五十鈴さん、ゲームとかはやったことあります?」


「……」


 五十鈴さんは首を横に振る。

 それならゲーム初心者に優しい、簡単難易度のゲームを選びたいな。


「だったらマリモカートで遊ぼう!」


 星野さんはさっきまでの話を忘れてゲーム漁りに加わる。


「いいですね、じゃあこれにしましょうか」


 マリモカートは国民的キャラである“マリモ”が主人公のレースゲームだ。操作は簡単だし難易度はコースで選べるから初心者にも優しい。


「あ……そのキャラクター、テレビで見たことある……」


 世間知らずの五十鈴さんでもマリモは知っているみたいだ。


「初心者もいることだし、50ccにしてドライブ気分で遊ぼうか。妹さんも一緒にやろう」


「いいんですか?」


「もちろん!」


 妹を誘いつつ星野さんはゲームのセッティングをする。何だか星野さん、学校にいる時よりもテンション高いな。





 ゲームを始めて一時間。


「五十鈴さん、上手すぎです!」


 楓は五十鈴さんのプレイを見て驚愕している。

 最初はもちろん拙いプレイだった。でも五十鈴さんは徐々に遊び方を学び、テクニックを真似して、一時間もすれば僕らよりも上手くなっていた。


「楽しい……」


 五十鈴さんは一位に喜んでいるのではなく、純粋にレースゲームを楽しんでいるようだ。


「もしかして五十鈴さん、華岡学園に選ばれたゲームの天才ですか!?」


「……?」


 急に妹が距離を縮めてきて五十鈴さんは慌てている。


「五十鈴さんの上達が早いだけだよ」


 僕はそう説明しながら、妹の首根っこを掴んで引きはがす。

 テスト勉強の時もそうだけど、五十鈴さんの集中力と学習能力は一般人とは比べ物にならない。大抵のものは挑戦すればすぐマスタ―してしまう。


「あはは!五十鈴さん、個性が渋滞してるね~」


 初心者の五十鈴さんに負かされたというのに、星野さんはとても楽しそうだ。


「星野さん、今日はいつもよりご機嫌……」


 その様子を見て五十鈴さんが呟く。


「今日の運勢がよかった……?」


「ううん、占いの結果は普通だったよ。実は友達と一緒にゲームで遊ぶのが初めてで、それで浮かれてるんだ」


「え、そうなの……?」


 意外な事実が発覚した。

 こうして僕の家に友達を集めるほどの行動力があるのに…妙だな。


「私っていつも変な物を持ってる変人だから、今まで友達は作れても親密にはなれなかったんだ。趣味もパパや弟に囲まれてたから男っぽいし…だから今日は念願が叶えられて嬉しいよ」


 星野さんは貯金箱を弄りながら苦笑する。


 そうか、この人も五十鈴さんと同じやりたいことがあったんだ。


「……」


 五十鈴さんは今まで見たことのない表情で星野さんを見つめている。何を思っているのか、今の僕には分からない。


「さて…五十鈴さんがゲームに慣れたことだし、思い切って全国対戦いっちゃおうか!」


 それはさておきと星野さんは次のレースを提案する。


 そんなこんで僕らは、日が暮れるまで楽しくゲームで遊んだ。

31 友達の家に遊びに行く。×

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