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24 身体測定 ㋨




 身体測定と体力測定。

 それはどの学校にもある行事の一つだ。その日は授業がない代わりに、一日をかけて全校生徒の測定が行われる。


「それでは五十鈴さん、頑張りましょう」


「う、うん……」


 測定は男女別々で行われるので、園田くんと五十鈴さんは別行動だ。


「じゃあ行こうか。城井くん、涼月くん」

「うん」

「………(面倒くさい)」


 知り合いが女子だらけの園田くんだがちゃんと男友達はいるので、こういった行事で独りぼっちになる心配はない。


「……」


 自分の元から去り行く園田くんを見つめる五十鈴さん。


「五十鈴さん、私たちも行こうか」


 そんな五十鈴さんに声をかける西木野さん。


「なんだかいつもと違ってわくわくするね~」

「それに測定の日は授業がなくて楽だよね」

「でも私は…気が重いな…」

「私は次の体力測定が楽しみだな」


 五十鈴さんの元に集まる朝香さん、星野さん、木蔭さん、速川さんはお昼ごはんを得て、すっかり一つのグループとしてまとまりつつあった。


「……」


 園田くんがいなくても、今の自分は一人じゃない。それが五十鈴さんの心を安定させてくれた。

 




 こうして五十鈴さんの身体測定が終了した。


「……」


 改めて自分の結果を確認する五十鈴さん。

 やりたいことノートには“身長は目指せ160以上。”という目標が書かれている。長い入院生活が影響して発育に問題が起きるのではないかと、五十鈴さんは子供の頃から不安に思っていた。仮に健康であっても、体の成長には個人差がある。


 果たして五十鈴さんの結果はどうなったのか?


――――――――――

五十鈴 蘭子


身長 165㎝

体重 43kg

視力 右 1.5

   左 1.5

――――――――――


「……」


 拍子抜けなことに、五十鈴さんは理想の身長を超えていた。しかも高校一年生にしてはかなりの高身長だ。


「いいな…五十鈴さん、スタイル良くて…」


 五十鈴さんの隣で木蔭さんは影のように暗くなっている。


「結果……どうだった?」


「私の身長…中学一年の頃からほとんど成長しなくなったよ…」


 木蔭さんの身長はクラス内どころか、同年代の中で最も小さい。それも存在感の薄さに繋がっているのだろう。


「私は身長よりも体重が気になるわ…」


 対して西木野さんは別の数字に悩んでいた。


「五十鈴さんより身長も低くてスタイルも良くないのに、なんで体重だけ上回ってるんだろ」


 西木野さんは羨ましそうに五十鈴さんの体を観察する。

 身長もそうだが、その体には無駄な肉というものがまったくない。女性が目指す理想のスタイルだと言える。


「筋肉の差が大きいと思うよ」


 すると速川さんが話に加わってきた。


「筋肉?」


「筋肉は脂肪よりも重いんだよ。そんでもって五十鈴さんには、不自然なほど筋肉がついてないんだよね。まるで最近までずっと寝たきりだったみたいな…」


 速川さんから痛いところを突かれる五十鈴さん。


「……」


 五十鈴さんはまだ、自分の過去を園田くん以外には打ち明けていない。

 長い入院生活の悪影響、学生経験がないことによるハンデ、やりたいことノートという目標…五十鈴さんはまだそれらを秘密にしたかった。同情されたりしない対等な友達、それこそが五十鈴さんの理想とする関係だ。


「体の数字なんてどうでもいいじゃん」


「そうそう、人として大事なのは香りだと思うよ~」


 体系に悩んでいる木蔭さんと西木野さんとは違い、星野さんと朝香さんはまったく気にしていなかった。


「希はいくら食べても太らない体質だからね…まさか星野さんも?」


「あんまり気にしたことないけど、多分そうかも」


 そう言いながら星野さんは、今日のラッキーアイテムである輪ゴムを指で振り回している。


「星野さん…その輪ゴム、貰っていい?」


「いいけど何に使うの?」


「この忌まわしき記録を封印しようと思ってね」


 西木野さんは診断書を折り曲げ、星野さんから貰った輪ゴムでがちがちに縛った。


「さぁ、次の体力測定に行こうか」


 過去を振り返らない西木野さんの後に、五十鈴さんたちは続いた。

16 身長は目指せ160以上。×

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