表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/151

16 友達の作り方




「五十鈴さん、友達を増やそう」


 急に前の席の西木野さんが振り返り、五十鈴さんにそう告げた。


「……」


 五十鈴さんは困っていた。

 増やしたいのは山々だけど、そんな簡単に友達を作れたら苦労はしないよ。


 僕も話に加わりたいけど、これは五十鈴さんの会話の練習だ。今は黙って二人のやりとりを見守っていよう。


「私はもうこのクラス全員と面識があるから、五十鈴さんと相性のいい人を何人か紹介できるよ」


「すごい……!」


「それで紹介する前に聞きたいんだけど、五十鈴さんはこのクラスで気になっている人はいる?その子の詳細を教えちゃうよ」


「……」


 五十鈴さんは少し迷い、ある生徒を指差した。


「あの人……」


 その生徒は窓際の一番前の席に座る、メガネをかけた小柄で大人しそうな女子だった。あんな人、クラスにいたっけ?


「私たちと同じで……教室を掃除してくれてる人なんだ」


「へぇー私ら以外にも掃除好きがいたんだ」


「掃除仲間だから、仲良くなりたい……」


 それは名案だ。

 西木野さんと友達になるきっかけも学校のお手伝いだったから、あの人も同じ手段で話しかければ上手くいくはず。


「えっとね~あの子は…」


 あの女子生徒についての詳細を思い出そうとする西木野さん。


「………わかんない」


 すると衝撃の一言が出た。


「え、西木野さん。クラス全員と面識があるんじゃないんですか?」


 黙って聞いてたけど、つい割り込んでツッコミを入れてしまった。


「…あの子には挨拶もしたことないや」


「それは酷いですよ」


 西木野さんに悪意がないのは分かってるけど、ハブられたあの人が可哀想だ。


「ぐ、言い返せないわ」


 そう反省しつつ西木野さんは机からクラス表を取り出す。そのプリントにはうちのクラスの席順が名前で書かれている。


「あった、木蔭明菜(こかげあきな)さんだ。今までまったく存在に気付かなかったわ…随分と影の薄い子ね」


「…言われて見ると、確かにそうですね」


 木蔭さんの席は窓際、僕らからすると嫌でも目に付く席だ。それなのに今まで一度も見たことがないなんて…妙だな。


 それでも五十鈴さんはその存在に気付いた。


「どうにか話しかけたい……けど……」


 五十鈴さんは尻込みしていた。

 相手の情報が得られないとなると、向かって行くにはかなりの勇気が必要だ。


「まぁ焦って向かわなくても大丈夫よ」


「え……?」


「授業、委員会、行事、先生のお手伝い…クラスメイトと関わる機会は今後いくらでもあるから。私に声をかけた時みたいに、タイミングが見つかったら近づくくらいの心構えでいいと思う」


 内気な五十鈴さんに無理はさせず、西木野さんはやんわりと背中を押してくれた。


「友達ってのは作るものだけど、偶然ってやつが引き合わせてくれる時もあるから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ