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 昨日は学校をサボったけど、今日は普通に登校した。


「お二人さん、昨日は揃って欠席だったけど…何かあったの?」


 朝礼が始まる前、西木野さんが振り返って昨日の件について探ってきた。


「風邪ですよ。それで隣の五十鈴さんに移してしまったんです」


「……けほけほ」


 僕が適当に嘘をつき、五十鈴さんはわざとらしく咳き込む。


「ふーん…」


 何かを察したように嘲笑う西木野さん。


「な、なんですか」


「思ったんだけど、二人ってまだ何か隠してることあるよね」


「どうしてそう思うんです…?」


「女の感よ」


 女の感…何て恐ろしい能力なんだ。


「あの……いつか、西木野さんにも話したい……」


 そこで五十鈴さんは素直な気持ちを西木野さんに伝えた。


「…五十鈴さんには敵わないなぁ」


 隠し事があると隠さず打ち明ける…そんな真っ直ぐな五十鈴さんを見て、西木野さんはお手上げだ。


「無理に聞き出す気はないけど、助けが必要になったら遠慮せず私に頼っていいからね」


「うん……」


 ノートのことを西木野さんに相談できたら、心強い味方になってくれるだろう。でもノートについてを話すということは、ノートを書くに至った経緯まで明かさないといけない。


 まだ五十鈴さんは過去を秘密にしたがっているから、時が来るまで二人で頑張らなければ。





 放課後の芸術室。


「……」


 五十鈴さんはやりたいことノートの一ページを見つめながらにこにこしている。そんな姿をいつまでも眺めていたいけど、そろそろ話を進めないと。


「この調子なら、残るやりたいことも達成できそうですね」


「うーん……でも、できるか不安」


 次のページを捲った五十鈴さんは表情を曇らせる。


「そんなに難しいんですか?」


 僕は一ページ目の内容しか知らないから、残る九ページにどんなことが書かれているか知らない。


「えっと……これなんだけど」


 少し悩んでから五十鈴さんは、ノートを僕に差し出した。


――――――――――――――――――――

11 委員会に入る。

12 勉強会を開く。

13 みんなでテストの見直しをしたい。

14 何かの賞をとる。

15 体力測定で平均以上を目指す。

16 身長は目指せ160以上。

17 運動会で一位になる。

18 学園祭で全ての模擬店を回る。

19 ボランティアに参加する。

20 皆勤賞を目指す。

――――――――――――――――――――


「どう……思う?」


「…」


 一見すると普通に学生をやっていれば達成できそうではあるけど………ちょっと運要素の強いものも含まれてるな。

 でも前向きに捉えた方がいいだろう。


「どれも達成できますよ。一緒にがんばりましょう」


「……うん!」


 拳を握ってやる気を見せる五十鈴さん。

 それにしても…一ページ目はまさにチュートリアル編、二ページ目は挑戦編って感じの内容だ。他にはどんなやりたいことがあるのかな。


「!」


 ページを捲ろうとしたら、五十鈴さんにノートを取り上げられた。


「まだ……秘密……!」


「す、すみません」


 それはそうだ。

 このノートには五十鈴さんの全ての願望が詰まっていると言っても過言ではない。そんなものを全て公開するなんて無理だよね。


「こんばんは~」


 そうこう話していると、杉咲先生がやって来た。


「こんばんは」


「こん……ばんは……」


 まだ五十鈴さんの挨拶はぎこちない。


「ほら、見て見て。職員室にあった古いコーヒーメーカーを持ってきましたよ」


 すると杉咲先生はまた捨てられない道具を芸術室に持ち込んできた。この部屋の片付けは進んでるけど、道具も増える…いたちごっこだな。


「まだ動くから、これでお茶にしません?お茶の元もいろいろ持ってきたから、カフェラテでも抹茶ラテでもなんでも作れますよ~」


 先生は机の上にコーヒーメーカーを置いて、紙コップやティースプーンを並べた。古いものとはいえ、学校の物を私物化していいのかな。


「この……キャラメルラテ、飲んでみたいです……」


 五十鈴さんは初めて見る飲み物に興味津々だ。


「…じゃあ僕、水を汲んできますね」


 いろいろ突っ込みたいけど、細かいことを気にするのは止めだ。今はこの穏やかな時間を大事にしよう。

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