36 かきかけの作品②
クラスで話し合った結果、僕らの学園祭の出し物は作品展示会に決定した。元々内気な生徒が多いクラスだったからあっさり採用となった。
そうと決まれば準備は単純だ。
去年と同じで芸術室に隠された道具を利用して教室を彩り、みんなで自慢の作品を持ち寄って展示をする。折角だからテーマくらいは決めたいという意見が出たけど、詳しい内容はまだ決まっていない。
ただの展示会だとしても僕らは華岡の生徒だ。余所と比べても恥ずかしくないよう、高いクオリティを目指さなければ。
※
本日、僕らの元に学園祭のしおりが届けられた。
「今年の学園祭のパンフ、分厚くない?」
「ページ数は81か…去年の倍はある」
「これも大学部の先輩が関わった影響か…」
朽木さん、日ノ国さん、出雲さんはしおりの中身をパラパラと捲る。
「出し物を制覇するのも一苦労ですね」
五十鈴さんのやりたいことノートには“19 学園祭で全ての模擬店を回る。”という目標がある。去年は高等部の出し物を制覇したらしいから、今年は中等部か大学部のどちらかだ。
「今年は大学部の出し物を制覇したい……!」
もちろん五十鈴さんに迷いはない。
筒紙さんとの約束があるからね。
「…」
遠くから筒紙さんの視線を感じる。
たまに一緒に集まって雑談するんだけど、今日は一人でいたい気分なのかな?
「今年も大変なことになりそうです」
出し物は何とかなるとしても、僕らは今年もクラス委員長を引き受けてしまった。学園祭のスタッフとしての仕事があって、やりたいことノートもあって、筒紙さんのお姉さんについての聞き込みもあって…やることは盛りだくさんだ。
「あれ……?」
すると五十鈴さんはしおりの中から赤い封筒を取り出した。そんなもの出雲さんや日ノ国さんのしおりには挟んでなかったはずだ。
「…何それ?」
「我々のものには挟まれていない」
「手の込んだラブレターか?」
他の三人が訝しんでいるけど、自分のしおりを確認したら同じ赤い封筒が挟まっていた。
「僕のにもありますよ」
「…?」
どうやら筒紙さんのしおりにも同じ封筒が挟まっていたようだ。
「んで、封筒の中には何が入ってるの?」
朽木さんは僕から赤い封筒をひったくる。
「…“誰にも見せてはいけない”って書いてあるわね」
封筒のタイトルにはそう書かれているらしい。
どうやらこの赤い封筒はランダムでしおりの間に挟まっていて、中身には何らかのイベントに関するメッセージが書かれているのかも。誰が仕掛けた企画か分からないけど面白いことをしてくれる。
「ルールを破るのはつまらないし、しゃーなしね」
朽木さんはすんなり封筒を返してくれる。
「帰ったら開けてみましょうか」
「うん……中身は秘密だよ」
僕と五十鈴さん、それと筒紙さんで面白そうなイベントに参加できそうだ。楽しむためにも封筒の中身は三人の間でも秘密にしておこう。
※
夜中の自室。
僕は一人で封筒を開けてみる。
「QRコードが書かれた紙が一枚だけ…」
華岡の天才はこんなものまで自作できるのか。
早速、スマホに収めてダウンロードしてみよう。
「…読み込んだ」
ダウンロードが完了するとアプリが起動して画面が表示された。
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あなたに、
私のイベントに参加する権利を与えます。
学園祭一日目、
大学部中庭の噴水へお越しください。
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