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35 かきかけの作品①




 こうして二年目の夏休みも終わった。

 一年の頃の夏休みも濃かったけど、今年も凄く濃密な連休になった。五十鈴さんグループとは頻繁に顔を合わせていたから学校で会っても久しぶりの気がしない。


 そして学校生活が始まるとすぐ体育祭の準備が始まる。


 練習やら準備やらで忙しくなるけど、うちのクラスには体育会系の朽木さんがいる。最初は内気な面を見せてたけど、今はリーダーシップを発揮してみんなを仕切ってくれた。


 暗い雰囲気だったクラスも、前に比べて活気が出てきた気がする。


 その裏で僕と五十鈴さんは学園祭の準備を進めていた。


 夏休みに入る前に通知があったけど、今年の学園祭は大学部がものすごくやる気になっている。なんでも高等部を巻き込んで大掛かりなイベントを計画しているらしい。


 何が起きるか分からない学園祭になりそうだけど、そんなのは去年と同じだ。僕たちは自分たちのクラスの出し物をどうするか考えればいい。


 僕と五十鈴さんと、筒紙さんの三人でね。





 暑さが緩和された秋頃。

 今年は猛暑が続いていたけど、ようやくエアコンの必要ない涼しい気温になってくれた。クラスの雰囲気も穏やかになって過ごしやすい学校生活を送れるようになった。


 そして今は放課後の空き教室。


「それでは出し物の案を見ていきましょうか」

「うん……」

「手分けして目を通そう」


 既に学園祭でどんな出し物をやりたいかクラスの意見を集めた。僕、五十鈴さん、筒紙さんの三人でアンケート用紙を確認することにした。


「みんなの意見、まとまるかな……」


 五十鈴さんの言う通りなるべくクラス全員の意思を尊重したいけど、華岡の生徒は一つのジャンルを極める天才揃いだ。そんな人たちが出した案は進路調査書と内容が似ている。


 陶芸家、書道家、彫刻家などの芸術系。イラストレーター、ウェブデザインなどのIT系。弓道、フェンシング、スケートなどのソロスポーツ系…それらを中心とした案が多い。


 後は何でもいいという意見が半数。

 うーん…これは難しい。


「こう見ると作品展示だけで良さそう」


 すると筒紙さんはあっさりと答えを出した。


「作品展示?」


「教室を様々な作品を飾る展示室にするの。見たところ個人で物を作る人が多いから、それらを展示物にする出し物にすればいいと思う」


 なるほど…それなら文系の人たちは満足だろう。


「でもスポーツ関係の案はどうします?」


「これに参加させればいいんじゃない」


 筒紙さんは学園祭の企画書を開く。

 運動部が中心になって開催される大型企画。今ではオリンピックの種目になっている人気番組SASUKEの設備を借りて、大掛かりな障害物大会を開くようだ。


「確かにいいかもしれませんね」


「いいと思う……」


 僕と五十鈴さんはその提案に賛成した。


 文系は教室に自分の作品を展示して、体育会系は外で活躍してもらって、何でもいい人たちは自由に行動できる。一年の頃の出し物に比べるとかなり手抜きだけど、クラスメイト全員の要望に応えるなら作品展示がベストだ。


「つまりお二人はその…暇になりますよね?」


 すると筒紙さんは躊躇いがちに目を逸らす。


「学園祭の期間中、良ければパネルの鍵を開くヒントを探してもらえないかな」


 おお、ついに行動に出る時がきたか。


「もちろんいいですよ」


「一緒に探そう……!」


 僕と五十鈴さんは二つ返事でOKした。

 ヒントがあるとするなら大学部だけど、あそこへ用もなく足を踏み込むには勇気がいる。でも学園祭なら気軽に立ち寄って筒紙さんのお姉さんに関する聞き込みができる。


 そうと決まれば後は予定を立てるだけだ。

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