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33 日ノ国さんの花器⑦




 お泊まり会ということで僕たちは日ノ国さん家で一夜を明かすことになるんだけど、温泉に入っただけでは夜は終わらない。

 夏祭りで買った景品や花火、美味しそうな夜食も揃っている。学園話に花を咲かせながらの夜更かしは深夜まで続いた。


 因みに寝る場所はもちろん男女別だ。


 出雲さん以外はみんな一緒に寝ても構わないと言ってくれたけど、そこは遠慮して別の部屋を借りることにした。女子部屋から少し離れた和室で僕は一人のんびりしている。


 ………


 日ノ国さんと幼馴染の奇妙なすれ違い。

 想像が正しければ解決するけど…僕程度の推理があってるかな?


「園田くん……」


 すると五十鈴さんが部屋の襖から現れた。


「明かりがついてたから……寝れないの?」


「ちょっと考え事をしてまして」


「それって日ノ国さんと幼馴染の……?」


「ええ、一つの仮説ができましたよ」


「気になる……」


 五十鈴さんは躊躇なく部屋に入ってきて僕の前に腰を下ろす。寝巻として用意された着物の隙間から見える綺麗な肌…僕じゃなきゃ見惚れて会話にもならないだろうな。





「僕の想像だと今回のポイントは花器にあると思います」


 折角だから推理したことを五十鈴さんに話して、どんな反応をするか確認してみよう。どうせあってるのかも分からない妄想だからね。


「まず幼馴染の大山くんと西森くんは、日ノ国さんの大事な物を壊しました」


「ふむふむ……」


 五十鈴さんは真剣に話を聞いてくれる。


「ですが二人は何も壊していないと、日ノ国さん本人が口にしていました。その言葉に偽りはないでしょう」


「うん……」


「ですが日ノ国さんは一つだけ失ったものがあります」


「それが花器のこと……」


「過去に空き巣に入られて、犯人はまだ見つかっていません。でも僕はおかしいと思いました」


「どうして……?」


「この屋敷には監視カメラが至る所に配置されていました」


「それは空き巣に入られたから取り付けたんじゃ……」


「いえ…見たところかなり古い物でしたので、何年も前から設置されていたはずです。警備員はともかくカメラなら設置されてても不思議ではないでしょう」


「じゃあ犯人はどうして捕まってないの……?」


「ここからは僕の想像ですが…犯人は子供だったからだと思います」


「子供……」


「小学生が盗みや万引きをしたって罪に問われたり、テレビで報道されたりはしないでしょう。子供は刑罰の対象になりませんからね」


「……じゃあその犯人って」


「日ノ国さんの近しい人物として思い浮かぶのは幼馴染の大山くんと西森くんですね」


 もちろん他の誰かである可能性はあるけど、今は僕の知る限りの情報で推理を進めよう。


「二人は日ノ国さんの大事な花器を落としたかで壊してしまったんです」


「……」


「そしてその事実を隠すために花器を盗んで空き巣が入ったような痕跡を残した…もちろん大人や警察にはお見通しの、いわゆる小学生の浅知恵ですね」


「それで花器が消えたんだ……」


「結果として大山くんと西森くんは存在しない空き巣に罪を擦り付けることに成功しましたが、後ろめたい気持ちに苛まれて日ノ国さんの友達でいられなくなった」


「……」


 五十鈴さんは何も言わず考え込む。

 大半は想像だけど、筋は通っているはずだ。


「それが事実だとしたら、やっぱりどうしようもないのかな……」


 三人の関係を修復させる方法がないか五十鈴さんも想像力を膨らませている。


「…僕の仮説には続きがあります」


 それは温泉で空に伸びる木の枝を見た時に思い浮かんだことだ。


「日ノ国さんが言うには花器は条件を満たすと木の模様が浮かび上がるそうですね」


「うん……」


「その事を幼馴染の二人が知らなかったとしたら、どうなると思います?」


「……?」


「木のようなヒビが入って見えるかもしれません」


「あ……」


 五十鈴さんも同じ温泉の景色を眺めたから、空を割るように伸びる木々を目にしているはずだ。もし花器のギミックを知らなかったら亀裂が走っていると見間違えた可能性はある。


「だから大山くんと西森くんは割れたと勘違いした、無傷の花器を隠し持ってるかもしれません」


「じゃあ、そのことを教えてあげれば……」


「この仮説が正解だったとしても和解するのは大変でしょうねぇ」


 もし想像通りなら大山くんと西森くんに花器の仕組みを話せば解決だ。でも数年前に拗れてしまった関係だから、三人だけで修復するのはかなり難しい。


「もしその通りなら、手伝ってあげよう……!」


 五十鈴さんは迷わずそう言い切る。

 すっかりこの仮説を信じ込んでいるけど…


「それならまずは事実確認からですね」


 果たして僕の推理はあっているのだろうか。

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