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32 日ノ国さんの花器⑥




 夏祭りと花火大会を堪能した五十鈴さんたちは、近くにある温泉施設へ向かうことになった。なんでもそこは日ノ国家が経営する自然の岩盤温泉らしい。


 今回のお泊まり会は何もかも至れり尽くせりだな。


「…ということがあったんですよ」


 温泉へ向かいながら僕は今まで得たすべての情報を五十鈴さんにだけ伝えた。


 日ノ国さんの過去に起きた出来事。

 大山くんと西森くんの罪悪感。

 三人の間に生まれたすれ違い。


 といっても日ノ国さんの家に空き巣が入った件は関係ないけどね。重要なのはどうすれば三人の関係が修復できるかだ。


「空き巣の話は日ノ国さんにしてもらったことがある……」


 それなのに五十鈴さんはこっちの件が気になるようだ。


「盗まれたのは誕生日に貰った花器なんだって……」


「へぇ~どんな花器なんですか?」


「親戚に一流の職人がいて、出雲さんのためだけに作った唯一の物なんだって。表面に特殊な釉が塗ってあって、水分と日光を浴びると木の模様が浮かび上がるんだって……」


「いかにも高そうな代物ですね」


「見せられないのが口惜しいって残念がってた……」


 なるほど…そんな特別な物が盗まれてしまったのか。


「でもね、不思議に思ったことがある……」


 五十鈴さんは顎に手を当てて眉をひそめる。


「その花器の存在を知っているのって、日ノ国さんに近しい人だけだと思うから……」


「…確かにそうですね」


 世に知れた名作ならともかく、子供の誕生日プレゼントに目を付けるなんて妙だ。


「他にも屋敷には高価そうな物が沢山あったのに、あの部屋に置いてある花器をピンポイントに狙う…やけに部屋が散らかってたのも不可解ですね」


 犯人は日ノ国さんに近しい人物。

 もしかしたら同年か子供の可能性もある。


 それで思いつくのは…西森くんや大山くんくらいだけど、いくら何でもあり得ないだろう。それに僕たちが知らないってだけで日ノ国さんには当時の友達が沢山いたかもしれない。


 考察するには日ノ国さんのことを知らなすぎる。


「って、真犯人はどうでもいいんですよ」


 つい話が逸れてしまった。

 本題は日ノ国さんと幼馴染のすれ違いをどう解消させるかだ。


「へぇ~ここが温泉かぁ」

「うむ、本日は貸し切りにしてある」

(五十鈴さんとお風呂…)


 そうこう話している内に先頭を歩く朽木さん、日ノ国さん、出雲さんが目的の温泉施設に到着した。


「一緒に入れたら、話し合えたのにね……」


 五十鈴さんはそう言って微笑んでいるけど…混浴があったら一緒に入ってくれたの?





 今回のお泊まり会で参加した男は僕一人だけ。

 つまりこの立派な露天風呂を独り占めできるということだ。隣の女風呂の様子が気になるけど、覗き見しようなんて邪な気持ちはありませんとも。


 はぁ…夏でも温泉は良いものだ。


 ………


 日ノ国さんの花器か…水と日光で浮かび上がる木の模様ってどんなのだろう。空を見上げると夜の明かりに照らされた木々が絶景だ。きっとその花器も、これくらい綺麗で立派な逸品だったに違いない。


 ………


 大山くんと西森くんは何を壊してしまったのだろう…もしかしたら花器みたいな割れやすい物だったのかな。日ノ国さんは何も壊されてないと言ってたけど。


 ………


 ちょっと幼馴染の二人に確認したいことができた。

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