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27 日ノ国さんの花器①



 

 夏休みも後半に差し掛かったある日。

 五十鈴さんグループは花火大会に行く計画を立てていた。


 そこで日ノ国さんの実家近くで夏祭りと花火大会が同時に開催されるということで、みんなで一泊二日で遊びに行くことになった。メンバーは五十鈴さん、出雲さん、日ノ国さん、朽木さん、僕を入れて五人。


 グループに加入したばかりの筒紙さんは、いきなりお泊まりはハードルが高かったようで辞退した。そして男子組の中で誘われたのは僕一人だけ。


 どうして僕だけ誘われたのかは知らない。

 …一枝くんと城井くんには内緒にしておこう。


「風景が田舎になってきましたね」


「始めて見る景色……」


 僕と五十鈴さんは電車を乗り継いで日ノ国さんの家へ向かっている。


 朽木さんは午前中だけ部活動に励み、出雲さんは準備があるらしくて少し遅れることになった。それなら午後に待ち合わせてもいいんだけど、日ノ国さんはすぐ来てくれても構わないと言うから二人だけで早めに出発することになった。


「電車で一時間、徒歩ニ十分の所にあるそうです」


「遠いね……」


「この距離を毎日通学するなんて、日ノ国さんは大変ですね」


「前までは車で通学してたんだよ……」


「今は違うんですか?」


「最近は駅の周辺で寄り道するのが楽しいみたい……」


「なるほど」


 いつの間にか五十鈴さんグループは親睦が深まっているみたいだ。僕もちょくちょくグループに混ざって行動してるんだけど、一年生の頃よりは仲良くなれてないんだよね。


 実は今日もかなり緊張している。

 あの日ノ国さんの家でお泊まりなんて…粗相がないよう気を付けよう。


「日ノ国さんは平凡に憧れてたんだって……」


「平凡に憧れる?」


「普通に学校に通って、友達と寄り道をする普通の日常を……」


「…つまり五十鈴さんと同じってことですか」


「うん……」


 悪い噂に振り回されていた者同士、意外と共通点があるんだな。筒紙さんもそうだし今年の友達は五十鈴さんに似た悩みを持つ人が多い気がする。





 こうして僕らは一時間かけて稲岡駅に到着した。


 最先端の大都会である華岡駅とは違って、稲岡は田舎っぽくて静かな土地だ。それでも駅の周辺にはレンタル自転車が用意されてたり、大きな田んぼの向こうには有名な道の駅があったり、要所に最先端の設備が配置されている。


 まずは寄り道せず、真っ直ぐ日ノ国さん宅へ向かおう。

 遊ぶのは合流してからだ。


「…」


「……」


 そして目的地には着いたんだけど…


 前に城井くんから日ノ国さんは怖いヤクザの娘だという誤った噂を聞いたんだけど、目の前の光景を目の当たりにしたら納得してしまう。


 広大な敷地にどっしりと構える門には、代紋のような証が刻まれていて威圧感がすごい。門を開けると黒いスーツにサングラスをかけた大人たちが迎えてくれた。


「お嬢様のご友人ですね」


「こちらへどうぞ」


 いかにもヤクザっぽい人たちに案内され、僕と五十鈴さんは抵抗する間もなく歩を進めた。待ち構える屋敷の雰囲気もいかにもそれっぽい。


「……」


 五十鈴さんは僕の服の端を摘まんでいるけど、いざという時に守れる自信はないよ。本当に大丈夫なのだろうか…?

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