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26 仲間入り




 基本インドアの筒紙さんは真夏の日光から逃げるように、パラソルが設置されているデッキチェアに横たわっていた。


(一人では一年かけても成果が得られなかったのに…いきなり姉の足跡を入手できた)


 園田くんと五十鈴さんに相談して数日、もう重要な手がかりを手に入れることに成功した。いくら何でも早すぎる気はするが余計な詮索をするつもりはない。


(でもどこを探しても鍵なんて見当たらなかった)


 パネルケースを手に入れて一週間。家中を念入りに捜索してみたが、パネルケースを開錠するための鍵は見つかっていない。


(そもそも姉は鍵なんて絶対にかけない。自室だって、玄関のドアだって、トイレの扉だっていくら注意しても直らないんだから)


 筒紙さんは手元にあるトロピカルジュースを口に含んで一息つく。


(両親もあのパネルケースには見覚えがないと言ってたから、鍵が自宅にある可能性は低い。そうなると考えられるのは…身内以外の人に託したか)


 その仮説には確証がある。

 何故なら姉は()()()()()()()()()()()からだ。生前は聞いてもいないのに、学校で起きた出来事を何度も聞かされた。


「やっぱり姉のクラスメイトに話を聞くしかない…か」


 姉が生きていれば大学二年生。つまり大学部の校舎に行けばかつての同級生で、姉と親しくしていた人たちに会えるかもしれない。


「…ハードルが高い」


 そんなことが気軽に出来ていれば今日まで苦労していない。


(だからといって五十鈴さんたちを同行させたら、姉が他界していることが間違いなくバレる)


 追い詰められていても一身上の都合はなるべく隠したい。 

 だが調査を進展させるためには、五十鈴さんたちの力が必要不可欠であることは事実。問題は自分の頑なになった心を開けれるかどうかだ。


「筒紙さん……」


 すると水着姿の五十鈴さんが現れる。


「泳ぎに行かないの……?」


「私、カナヅチなもので」


「そうだったんだ……楽しめてる?」


「泳げなくても浮き輪があれば楽しめるので、今は休憩しているだけ」


「なら良かった……」


 どうして二人がプールに来ているのか。

 夏休みに五十鈴さんグループは都内最大のプール施設“湖島園”へ行く計画を立て、そこで五十鈴さんが筒紙さんを招待して今に至っている。


 因みに園田くんたち男子組は不参加である。


(やっぱり五十鈴さんのグループって目立つな…周囲の視線が気になる)


 五十鈴さんの美貌は言うまでもないとして、高身長の出雲さんに大和撫子の日ノ国さんが揃って水着姿で並んでいるので他のお客は大盛り上がりだ。


(というか…なんだろう、この状況)


 今の筒紙さんは夢見心地の気分だった。


 姉を失って独りぼっちの人生。それが今ではクラスメイトの輪に加わって、夏休みに集まってプールを満喫している。かきかけの作品を探す目標も大きく進展して、まさに夢のような状況だ。


「おーい」


 すると朽木さんが駆け寄ってきた。


「そろそろ昼食にしましょう。日ノ国と出雲が場所を確保してくれてるから」


「わかった……」


 五十鈴さんは無意識に筒紙さんの手を引いた。


「一緒に行こう……」


「…はい」


 こうして自然流れで筒紙さんは、五十鈴さんグループに加わるのだった。

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