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11 二年生生活のスタート




 学園祭が終わるとあっと言う間に春が訪れた。


 占い師の予言通り何をやっても調査は進展せず、姉の手がかりを得ることは出来なかった。だが筒紙さんは既に気持ちを切り替えている。


(絵画を描くならともかく、一人で絵を探すのは不可能。必要なのは私よりも行動力のある人手だ)


 まず筒紙さんがやるべきこと。

 それは新しいクラスで友達を作ることだ。

 

(新しいクラスになれば人間関係はリセットされる…人の輪に入るのは難しいけど、同年代に話しかけるなんて余裕余裕)


 そう思っていた時期が筒紙さんにもあった。





 こうして迎えた新学期。


「…」


 新しいクラスはとにかく空気が重かった。

 一年生の頃のように昼食に誘ってくれる生徒がいないのはもちろんのこと、会話をするどころか挨拶を交わす生徒すらいない。


(よゆう…のはず)


 この環境はコミュ症の筒紙さんではどうすることも出来なかった。


(…またこの展開か)


 筒紙さんは無力な自分に飽きれた。


 結局、何も出来ないまま一ヶ月が経過。

 その間は誰からも話しかけられず、教室はずっと陰鬱としていた。それでも会話をするグループが一つもないわけではない。


「日ノ国さん、一緒に帰れるの……?」


 その中心にいたのが五十鈴さんだ。


(噂に違わずものすごい美少女だけど、悪役令嬢的なキャラなんだよね。確かに雰囲気は怖いお嬢様だけど…日本語は普通に喋れるんだ)


 教室が静かなので五十鈴さんたちの会話は嫌でも耳に入る。


「うむ、親に掛け合ったら迎えの車を断れた」

「…意外ですね」

「別に普通のことじゃない」


 日ノ国さん、出雲さん、朽木さんを入れた四人の女子グループ。少し強面の近寄りがたいメンバーだが、いつも楽しそうに毎日を過ごしている。


「じゃあ記念に寄り道しよう……園田くんもどう?」


 さらに五十鈴さんたちはもう一つの男子グループとも繋がりがある。


「もちろんいいですよ」

「僕も同行する」

「部活はバックレるかな~」


 園田くん、城井くん、一枝くんの男子三人組。


 二つのグループは仲が良いだけではなく、学級委員長という大役まで引き受けている。もしこの輪に混ざれたら頼もしい仲間になっていただろう。


(席が近ければ関われたかもしれないけど)


 残念ながら五十鈴さんの席は窓際の隅っこで、筒紙さんの席は廊下側の隅っこ。席順にも恵まれない最悪な状況だ。


(今年から私の物語は動くんじゃないのか占い師っ)


 筒紙さんは心の中で文句を垂れるしかなかった。





 ある日の朝礼。

 担任の教師からプリントが配られた。


「書き終わったら壇上に置いておいて下さいね~」


 それは進路希望の調査書だ。


(進路調査…なんでこんな時期に?)


 筒紙さんは不可解に思った。


(そもそも天才を集めておいて、進路を調査する意味なんてあるのだろうか。生徒一人一人を下調べしてスカウトまでやってるのに)


 相変わらず謎の多い華岡学園。

 だがそんな些細なことはどうでもよかった。


「…」


――――――――――

第一希望 アーティスト

第二希望 デザイナー

第三希望 未完成の絵画を見つける

――――――――――


(…ばかばかしい)


 筒紙さんは書いてすぐ消しゴムで第三希望の文字を消した。

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