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116 二年生生活のスタート




 五十鈴さんが華岡学園に入学して一年が経った。


 そして本日が高校二年生で最初の登校日だ。


「……」


 五十鈴さんは着なれた制服に袖を通すが、今の心境はかなり複雑なものだった。


 一年間を乗り越えられた達成感、みんなと離れ離れになる寂しさ、未知のクラスに対する期待と不安な……中でも一番不安に感じるのは園田くんと離れ離れになってしまうことだ。


「……」


 そう考えただけで五十鈴さんの足取りは重くなる。


「行ってきます……」


「はい、行ってらっしゃい」


 だが引き籠るという選択肢はない。

 病気で外に出れない辛さに比べれば、新学期に対する不安なんてへでもない。そうやって風邪で休んだ登校初日を乗り切れたのだ。


「……」


 五十鈴さんは覚悟を決めて学校へと向かった。





 校舎前に立てられた掲示板に新しいクラスが記載されている。


 五十鈴さんの新しいクラスは2-2組。席は窓際の後ろから二番目と、一年の頃なら西木野さんが座っていた席だった。


「……」


 五十鈴さんは他の友達の名前は確認せず教室へと向かう。

 まだ現実を直視するのが怖かったからだ。


 それでも五十鈴さんは階段を登り未知の空間である三階の教室に到着。足取りが重かったせいでゆっくりとした登校になってしまったので、既に教室には同じクラスの仲間が揃っている。


「…」

「…」

「…」


 一年の頃に比べて新しいクラスはとても静かだった。


 注目されて騒がれることが苦手な五十鈴さんなので、それはそれで教室には入りやすかった。


「……」


 席に着いた五十鈴さんはまず、教室の中に友達がいないか確認する。


 ………


 ……


 …


 残念ながら五十鈴さんグループのメンバーは一人もいなかった。


「それじゃあみんな席について~」


 すると新しい担任の先生が教室に入ってくる。この時点で空いている席が目の前にないので、実は欠席者の中に友達がいましたという可能性もない。


「……」


 覚悟していたとはいえ、この落胆は大きい。

 それでも五十鈴さんは逃げたりしない。


(がんばろう……)


 こうして孤独の新学期が始まる。





「はっくしょい!」


 一方その頃、園田くんは布団の上で大きなくしゃみをしていた。


(まさか新学期に風邪を引くなんて…五十鈴さんもこんな気分だったんだな)


 風邪といっても軽いものなので、園田くんは意味もなく立ち上がったりと落ち着きがない。


 ピコン


 するとにゃいんから通知音が鳴った。


「えっと…西木野さんからか」


 退屈な園田くんはすぐメッセージを確認する。


『良い知らせと悪い知らせ、どっちから知りたい?』


『えっと…じゃあ悪い知らせから』


『私らのグループはほぼ解散状態だ』


『ああ~そうなりましたか』


『そしていい知らせは…園田だけは五十鈴さんと同じクラスで、席も近くて真後ろだ』


『なるほど…また二人だけのスタートですか』


『それでも何かあったら私に頼れよ』


『ありがとうございます』


『おっと、朝礼が始まる』


 ここで西木野さんとのやり取りは終わった。


(よし!)


 園田くんは拳を握って喜んだ。


(でも五十鈴さん、一人で寂しいだろうな…メッセージでも送っておこう)


 教室で何が起きているのか分からない園田くんは、能天気に五十鈴さんへメッセージを送るのだった。




『今年も同じクラスですね』


『またよろしくお願いします』

一年生編END

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