110 お泊まり会①
ノートの会議が行われて数日が経過した。
僕たちはあれからノートのことには触れず五十鈴さんの回答を待ち続けた。そして今晩、ついに五十鈴さんグループのにゃいんにやりたいことが送られてきた。
40 お泊り会をする。
それが五十鈴さんが選んだやりたいことだ。
『ほほう、お泊まり会ね』
『楽しそう…』
『学園祭で買ったゲームの出番だね!』
『やりたいやりたい~』
西木野さん、木蔭さん、星野さん、朝香さんもお泊まり会の話題で盛り上がってる。
でもやりたいことが女子会なら僕の出る幕はないな。残念ではあるけど、今回は傍観者としてにゃいんを眺めるだけにしよう。
『でもどうしてお泊まり会なの?』
すると西木野さんはこのやりたいことを選んだ理由を尋ねた。
『うん……この一年は学校生活でいっぱいいっぱいで、みんなと遊ぶ機会が少なかった。だから……もっと仲良くなりたい(*'ω'*)』
なるほど…このメンバーともっと親睦を深めることが狙いか。それならお泊まり会というイベントはうってつけだ。
顔文字が可愛い。
『確かにそうねぇ』
『初めての学校生活、ずっと大変だったもんね…』
『もっと早く仲良くなりたかったよぉ』
『楽しい思い出、作ろ~』
みんな嬉しそうだ。
五十鈴さんはにゃいんだとすらすら本音が出てくるんだよね。
『それじゃあ誰の家でやる?』
星野さんが根本的なこと、誰の家でやるかを決めようとする。
『私んちはボロだからなぁ』
『うちも小さいから…』
『こっちは弟共がうるさいんだよなぁ』
『パパのお客さんが正月まで泊ってるから無理かも~』
あらら…どの家も宿泊は無理そうだ。
『うちには遊べるものが何もないから……』
五十鈴さんも友達を招待できる状態ではないようだ。残念ながらこのままだと、理想のお泊まり会は実現できそうにない。
『そういえば園田くんの家、広かったよね』
すると星野さんがそんなことを書き込んだ。
『うん……ゲームも色々あって、すごく快適だった……』
この書き込みに五十鈴さんがそう付け加える。
褒められるのは嬉しいけど……いや、まさかね。
『じゃあ園田の家でいいか』
そしたら西木野さんが決定的な一言を放った。
『楓ちゃんもいるんだよね…』
『賛成!』
『楽しみだね~』
そして誰も反対してくれない。
いやいや、もう傍観している場合じゃないぞ!
『ちょっと待ってください!』
『お、やっぱり見てたな』
『普通に考えて駄目でしょう!』
『何か不都合でもあるのか?』
西木野さんからそう返信される。
不都合は…ぶっちゃけない。
両親は海外に行ってて不在だから部屋は余っているし、その都合で来客のための準備は常に出来ている。そして妹は学園祭で五十鈴さんグループと馴染んでいたから、お泊まり会に参加できれば大喜びするだろう。
でも男の僕がそんな空間に混ざっていいのか?
『ダメなの……?( ´・ω・)』
五十鈴さんから悲しそうなメッセージが送られてくる。
『男ならごちゃごちゃ言わないで、イエスかノーではっきり答えろ』
最後に西木野さんがそう締めくくった。
………
……
…
『…いつにするんですか?』
こうして五十鈴さんグループは、僕の家でお泊まり会を開くことになった。




