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105 学園祭終了




 学園祭が終わった後日。

 その日は丸一日学園祭の後片付けに費やされた。


 装飾や模擬店も力を入れ過ぎているから、元の学校に戻すのも一苦労だ。中にはトラックや解体業者に依頼をしなければ片付かない出し物まである。


 でも僕らの猫カフェはすぐ片付けが済むから、午前中で解散となった。


「それで、二人きりの学園祭は楽しめた?」


 ホームルームを終えると前の席の西木野さんが振り返る。


「すごく楽しかった……」


 五十鈴さんは嬉しそうに答える。

 楽しい思い出を作れたようで良かった。


「その様子だとフラグは立って無さそうね」


 そして西木野さんは残念そうに僕を見る。

 フラグなんて立つわけがない。


「あ、そうだ。総務委員から学園祭を片付ける風景の写真を撮っとけって言われたから、二人に任せるわ」


 そう言って西木野さんは僕の机にカメラを置く。


「悪いけど今日は家の用事で早く帰らないといけないんだ」


「分かりました」


「わかった……」


 これが総務委員の最後の仕事か。

 のんびりやって行こう。





 昼食を適当に済ませてから、僕と五十鈴さんは日が暮れるまで校内を歩き回った。終わりゆく学園祭の風景はどこか哀愁があっていいな。


 そして今は夕暮れの放課後。

 写真を撮り終えた僕と五十鈴さんは芸術室に向かった。


「杉咲先生」


「はい…」


 そして僕は杉咲先生にお説教をしている。


「どうするんですか、こんなに物を増やして」


 芸術室の前には学園祭に使われたであろう道具が山になっている。


 学園祭には美術品展示エリアがあって、そこを杉咲先生が仕切っていた。そして生徒が処分に困っている作品たちを全て引き取ってしまったんだ。


「捨てるのが勿体なくて…ごめんなさい」


 杉咲先生は申し訳なさそうだ。

 本当に物を捨てられない人だな…この人の自宅がどうなっているのか気になるよ。


「でも気持ちは分かるかも……」


 五十鈴さんは絵画を手に取って頷いている。

 どれも一級品なのは認めるけど、こんなこと毎年繰り返してたら五階がとんでもないことになってしまう。


「芸術室にこれ全部は入りませんよ」


「後で選別するから、取りあえず廊下に置いといて」


「こんなことして他の先生に怒られないんですか?」


「これから怒られに行ってきます…」


「…」


「すぐ職員室に行かないといけないから、鍵は渡しておくね。それじゃあ後はよろしく」


 杉咲先生は鍵を五十鈴さんに預けてこの場を後にした。


「…取りあえず中に入りましょうか」


「うん……」


 僕らは道具の山をかき分け芸術室の扉の鍵を開けた。

 せっかく順調に整理整頓してたのに、廊下の物を入れたらまた倉庫に逆戻りだな。


「五十鈴さん、何か飲みます?」


 取りあえずコーヒーメーカーで温かい飲み物を用意しよう。


「じゃあ……紅茶」


「了解です」


 紙コップに温かい紅茶を二杯入れて、夕日が差す窓際の机に並べて席に着く。


「えっと…では改めて、学園祭お疲れさまでした」


「うん……おつかれさま」


 コップを軽くぶつけて乾杯した。

 これで学園祭は本当に終わりだ。


「それで五十鈴さん、学園祭の成果はどうでした?」


「ノートの目標……“学園祭で全ての模擬店を回る。”だけど、高等部は制覇できた……」


「おお」


 これは分かりやすい進捗だ。

 最初の一年で高等部を制覇すれば次の目的は中等部と大学部になる。残り二年でその二つを制覇できれば目標達成だ。


「カメラの写真、確認してもいいかな……?」


 すると五十鈴さんはカメラの方を指差す。


「もちろんいいですよ」


「ありがとう……」


 カメラを戻す前に学園祭の思い出に浸りたいのだろう。一仕事終えて疲れたことだし、少しのんびりするか。

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