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102 学園祭最終日①




 いよいよ学園祭も最終日。

 用意した食材も大した量じゃないから、飲食店系のほとんどが夕方頃には店じまいを始める。うちの出し物の猫カフェもお昼頃には閉店の予定だ。


 だからといって華岡の学園祭は平穏には終わらない。


 イベントホールでは大人気バンドのライブと吹奏楽部による演奏会。夜になると外でキャンプファイヤーや花火が打ち上がったりと、最後までイベント盛り沢山だ。


「よし、まずは作戦会議だな」


 朝登校してまずやることは総務委員の三人で集まって作戦会議を開くことだ。場所はいつも階段の踊り場とかでやってるけど、今日は珍しく五階の廊下に集合とにゃいんが来ていた。


 西木野さんに芸術室のことがバレないか少し心配だけど、取りあえず行ってみよう。


「……」


 五階に上がると、そこには五十鈴さんの姿しかなかった。


「あれ、西木野さんは?」


「来れなくなったんだって……」


 こんな朝から急用が入ったのか?


 それにしても五十鈴さん、ここには僕しかいないのに何故か表情が強張ってる。何か緊張するようなことでもあるのかな?


「確か今日の予定は午前中に手伝いがあって、午後からは暇なんですよね」


「うん、もう総務委員の仕事も終わりだね……」


「そうですね…」


 午後からは僕と五十鈴さんも暇になる。


 …二人きりだし提案してみようかな。

 最終日くらい、一緒に学園祭を回りませんかって。


「あの…」

「あの……」


 誘おうとしたら五十鈴さんと声が被った。


「さ、先にどうぞ」

「さ、先にどうぞ……」


 また被った。


「…もしかして僕と同じこと考えてます?」


「……たぶん、いっしょ」


 五十鈴さんも何かを感じ取ったようだ。


「じゃあ…午後は一緒に学園祭を回りましょうか」


「うん……行きたい」


「…」


「……」

 

 何だろう…この展開、かなり恥ずかしいぞ。

 この場に誰も居なくて本当に良かった。





 時は進んで、場所は猫カフェを出店していた教室。


「それじゃあ今日の営業は終了です」

「お疲れさまなのだ~」


 学園祭実行委員の池永くんと野田さんは高らかと宣言した。


「いや~儲かったな」

「猫の力、恐るべし」

「まぁ大人気店には敵わなかったけどね」


 クラスメイト達が思い思いに出し物の感想を言い合っている。


「そして今回のMVPである猫宮さん、ありがとう!」

「拍手なのだ~」


 さらに猫カフェの発案者であり、功労者でもある猫宮さんに拍手が送られた。


「こっちとしてはやりたいことが出来て満足なのにゃ」


 猫宮さんは照れくさそうに頬をかく。


「それじゃあ午後からは自由行動だ」

「この後もイベントは盛り沢山だから自由に楽しむのだ~」


 こうして猫カフェは大成功に終わり、クラスメイトは解散となった。


「あれ、五十鈴さんは?」

「そういや居ないな」

「一緒にキャンプファイヤー見たかったのに」


 そしてクラスメイトのほぼ全員が五十鈴さんを探し始めた。この五日間ですっかり距離も縮まり、気軽に遊びに誘えるほどの間柄になっていた。


 しかし、この場にはもう五十鈴さんと園田くんの姿はない。


「…これで私らのサポートは終わりだな」


 西木野さん率いる五十鈴さんグループは、廊下に集まって窓の外の景色を眺めている。


「まさか五十鈴さんから助けを求められるとは思わなかったね~」


 朝香さんは嬉しそうに呟く。


「まったく世話の焼けるカップルだよ。前日に作戦会議して、早朝にセッティングして、クラスメイトに捕まらないよう逃げ道を作ってようやくなんだから」


 愚痴っぽく言っている西木野さんだが、その表情はやり切ったかのように満ち足りていた。


「学園祭デート、関係が進展するといいね」


「恋の急展開…ありえるかも」


 星野さんと木蔭さんは恋物語を期待してそわそわしている。


「まだその段階じゃないと思うけど…それより私らもどっか行こうよ」


 そんなことよりと西木野さんはきびすを返す。


「そうだね、私たちの学園祭はまだ終わってないよ!」

「行こう…!」

「八恵ちゃんと昴ちゃんも誘おうよ~」


 五十鈴さんグループは五十鈴さんが不在でも、みんなで仲良く学園祭を満喫するのだった。

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