100 学園祭➄
星野さんとゲーム喫茶で遊んでいるとあっと言う間に時間は過ぎて、模擬店の営業時間が終わってしまった。
いや~濃密な一日だった。
午前に開会式があって、昼は珍しい料理を味わい、午後からは探偵の謎々に挑戦して、多目的ホールで天才たちのファッションコンテストを観て、最後はゲーム喫茶を堪能した。しかもその全てのクオリティがプロのものだからすごい。
そりゃ学園祭のチケットが高額で転売されるわけだ。
「おーい、園田くん」
「………」
自分の教室に向かう途中、城井くんと涼月くんに声をかけられた。
「おお、今日初めて会った気がするけど…二人は何処で何してたの?」
「僕は新聞部の取材であちこち回ってた」
「こんな規模の学園祭を取材するなんて、大変そうだねぇ」
「まあね…でもいい噂話がいっぱい聞けて満足」
城井くんはしっかり学園祭を満喫していた。
「それで涼月くんは何してたの?」
「涼月くんは僕が教えたおすすめスポットにずっといたよ」
「おすすめスポット?」
「こんなお祭りでも人の寄り付かない静かな休憩場所」
「…せっかくの学園祭、楽しまないの?」
そう言うと涼月くんは興味なさそうに応える。
「………(騒がしいのは苦手だ)」
相変わらずクールだな、涼月くん。
「僕も昼休憩とかにその場所を使ってるから、園田くんも暇になったらそこでゆっくりするといいよ」
城井くんはそう提案してくる。
確かに今日みたいなことを五日間も続けてたら途中で力尽きそうだな。五十鈴さんのことを気に掛ける必要はなくなったし、たまには男子組で集まってみようかな。
「その休憩場所って何処にあるの?」
「えっとね、第二校舎の裏に回って…」
そんな会話をしながら僕ら男子組は教室に向かった。
※
散り散りになっていた生徒は模擬店の営業が終わると自分のクラスに戻り、学園祭一日目終了のチャイムが鳴るのを待つ。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴ればようやく解散で家に帰れる。
「おーい園田、おつかれ」
「おつかれ……」
解散のタイミングで総務委員の西木野さんと五十鈴で集まった。
「お疲れさまです。五十鈴さん、学園祭はどうでした?」
「……何もかもがすごかった」
色々なものを見てきたのだろう、五十鈴さんは上の空で今日のことを思い返している。
「クラスのみんなも五十鈴さんと一緒に回れて大喜びだったぞ」
西木野さんはそう報告してくれる。
どうやらトラブルなどは発生せず、楽しく学園祭を回れたみたいだ。
「それで私らはこのまま一緒に帰るけど、園田はどうする?」
「今日は久しぶりに男子組と帰りますよ」
「わかった。それじゃあ明日も早朝に集まって予定を決めよう」
「了解です」
総務委員の仕事も手慣れてきたな。クラスメイトとの交流も順調だし、このまま平穏に学園祭を過ごせそうだ。
「それじゃあまた明日、五十鈴さん」
「……」
「五十鈴さん?」
「う、うん……また明日」
さっきまで満ち足りた様子だったのに、別れの挨拶をすると急に曇った表情を覗かせる。やっぱり何か不安に思うことでもあるのかな?
だからといって連絡するのは大袈裟だし、二人きりで話せる時間なんて学園祭中はもうないだろう。
うーん…学園祭を一緒に回る約束、しておくべきだったかな。




