魔都パリエの最後
愚者のダンジョンのダンジョンマスターである吾輩は、フラン王国を震撼させた人食いスライム事件の後、全ての並列宇宙を創造し維持管理する女神より神託を受けた。
フラン王国の王都、花の都パリエが深宇宙から飛来する隕石との消滅で地上より消え去る運命であると。
定められた運命は、変えられる事は出来ないが、パリエが最後の日を迎える其の日迄、パリエに住む人々を一人でも多く救い出す事が、女神の使徒たる大魔王である吾輩の使命だと。
正直な話、吾輩はこの様な面倒な事には関わりたくは無いのだ。
全ての並列宇宙を司る女神が、何故、地上の一都市の消滅など些細な事に関心を待つのかは理解は出来なかった。
大魔王である吾輩も、女神の命令には、逆らう事が出来ないのでパリエの人々を救う為、渋々行動を開始したが。
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吾輩も建国に協力したフラン王国の王都パリエは、星形城壁に囲まれた美しい都で、フラン王国最大の都市だった。
建国当時は簡素で美しい都だった、パリエは王侯貴族の風俗の乱れにより、昼間から魑魅魍魎が跋扈する魔都かしている。
多数の魔物娘を愛人として愛し合う日々を楽しんでいる吾輩でも、フラン王国王侯貴族や聖職者の性の乱れには目に余るものがある。
聖女神教の教えでは、未婚の女性は結婚までは、純潔を守る事が求められるのだが、王侯貴族の令嬢達は10代前半で初体験を済ませ初めての男性が父親や兄弟等、近親者である事は珍しい事では無かったのである。
領主達は公然と複数の愛人を囲い。初夜権を盾に取り花嫁の純潔を奪い、聖職者たる神官達は巫女や信者の女達と肉体関係を持つ。・・・
人間達は、美しい魔物娘達を恐ろしいモンスターだと言うが、我が目には、醜い欲望に狂っている人間の方が醜いモンスターに見える。
フラン王国を震撼させた人食いスライム娘のラナは、醜い欲望に狂った人間達と比べれば、かわいいものである。
パリエの路上では王侯貴族に搾取された人々が、青白い顔色の人々が、無気力にたむろし、幼い少女娼婦が、昼間から裕福な商人や、貴族の袖を引く姿が昼間から日常茶飯に見かけるスラム街が、広場が薄汚れた都市へ変貌していたのである。
吾輩は、賢者に変身してパリエに迫りつつ有る危機を説いて廻ったが、庶民は聞き流し、貴族達は頭のおかしな賢者の妄想、戯言として吾輩の話に耳を傾けようとしない。
一度は貴族達が集まる集会でパリエに迫る危機を訴えたが、貴族達から反応は面白半分、又は悪意のこもった野次ばかりであった。
「栄光の都パリエが女神の怒りで地上から消え去る。そんな馬鹿な事はあり得ない」
「パリエは女神に祝福された都、未来永劫に繁栄が約束された都ですぞ」
「賢者のおっさん何か悪いモノで食べて頭が、おかしく成ったのではないか」
真剣にパリエの危機を訴える吾輩の言葉を聞き流し、貴族達から帰ってくる反応は、良くて面白半分の野次か、聴くに堪えない、罵詈雑言ばかりだった。
運命の日迄まで、吾輩もパリエの人々を1人でも多く助ける為に努力をしたのだが、全ての努力虚しく水泡に帰した。
新女神歴1999年7月7日に、深宇宙の飛来した隕石との衝突により、フラン王国の王都パリエは、都に住む50万人の人々共に、永久に地上より姿を消したのである。
王都パリエの消滅により、国民達を搾取するとは悪政とは言え、王国の政治や経済を動かしていた、王侯貴族や大商人達もパリエと共に運命を共にした為、王国内には政治の空白が生じ混乱が広がっていった。
新女神歴2000年1月1日には、1人の女勇者が搾取され弾圧をされていた民衆を率いて立ち上がった。
フラン革命の始まりであった。
女勇者の革命は多くの民衆の支持を集め、貴族制度にしがみ付く付く貴族達の勢力を打ち破り旧フラン王国内に勢力圏を拡大して行った。
多くの貴族や奥方、令嬢達がギロチンの露と消え去ったのである。
内緒の話ではあるが、吾輩のお眼鏡に叶った美しい女達は、条件付きで吾輩が命を救ったのである。
その条件とは、吾輩の愚者のダンジョンで、魔物娘に変身してハーレムの一員に成るか、幻影水晶に封じられて吾輩のコレクションに加わる事なのは、言うまでも無い事だろう。
新女神歴2020年12月25日、女勇者率いる革命軍のフラン国内制圧により、血に塗られたフラン革命は終わり、人民による人民の為の新国家フラン共和国が建国された。
民衆を率いて最初に決起した女勇者は建国の母と称えられ聖者として女神教教会より聖者として認められたのである。
尚、吾輩も女勇者の介添役として新しき時代を迎える為に、フラン革命に協力したのである。
以上が女神の怒りにより、硫黄の炎と光により地上から消滅した魔都パリエの真相と、パリエ消滅が引き金に、起こったフラン革命の物語である。
今回の吾輩の行動を疑問に感じている諸君も多数いると思う。
吾輩の超魔力を持っすればパリエの運命を変えられたのでは無いかと。
女神より授けられた超魔力ならば、隕石がパリエに直撃する運命は避けられたかもしれないが、吾輩の超魔力でも定められた運命は、変える事は不可能であった。
隕石の衝突で王都パリエと、運命を共にしなくてもフラン王国の王や王妃を始めパリエの王侯貴族達の多くは、フラン革命により、ギロチンの露と消える運命だったのだから。