24 たくらみは密やかに
パーティーが終わり、後片付けを終えたリビングは少しばかりもの悲しい空気が漂っていた。コウメイとサツキは台所で翌日の準備にかかり、コズエは片隅の作業スペースで花飾りの量産中だ。シュウはさっそくパズルを組み立てて遊んでいるし、アキラは火鉢を抱え込んで凍えた指先をあたためていた。
「アキラさん、次お風呂どうぞ」
風呂から上がったヒロが、アキラをリビングから追い立てる。
「お兄ちゃん、火鉢の独占は駄目って言ったでしょ」
洗い場の前まで追ってきたサツキにチクりと注意され、彼は決まり悪そうに洗い場に入る。
「寒いのならゆっくり温まって、湯冷めする前にベッドに入ってね」
「わかった」
洗い場の扉を閉めたサツキは、兄が服を脱いだようだと確かめると、急いでリビングに戻った。
「お兄ちゃん、お風呂に入りました」
「よし、じゃあ手早く打ち合わせるぜ」
コウメイの合図に、五人は素早く集まって火鉢を囲む。
「コウメイさん、お料理は進んでますか?」
「下ごしらえは順調だぜ。サツキちゃんは?」
「スポンジケーキは焼きあがってますし、パイは当日が勝負です」
「二十六日はシュウがギルドの手伝い当番だ。アキを引っ張り回して、絶対に上にあがらせるなよ」
「任せとけって。プレゼントはどーなってる?」
「コズエたちの部屋に隠してます」
「アキラさん喜んでくれるかなぁ」
誕生日はいつもクリスマスのパーティーと一緒にされてきたというアキラに、ちゃんとした誕生パーティーをしようと約束したのは、一年前のナモルタタルだった。
「アキは忘れてるっぽいけどな」
「あまり気にしてないんだと思います。家族はちゃんとお兄ちゃんのお祝いもしてたから」
「だからこそ私たちもアキラさんのお誕生日をお祝いしなきゃ」
「俺たちも祝ってもらいましたし」
「いいなー。俺んときはプレゼント貰ったけど、島でぼっちだったから寂しくてさー」
「じゃあ来年こそシュウさんのパーティーもやりましょう」
主役が風呂に入っている間に、彼らは着々と進捗の確認と当日の打ち合わせを済ませていった。
「……火鉢に集まって、そんなに寒いのか?」
「お兄ちゃんっ」
「早かったな、アキ。ちゃんとあたたまったのか?」
焦るサツキを隠すようにコウメイが立ち上がる。コズエは作業スペースを片付けると「おやすみなさい」とアキラの横をすり抜けて寝室へ向かい、ヒロはさも髪を乾かしていたのだというように手ぐしで整える。シュウは完成したパズルを手に「完成だぜー」と幾何学模様を自慢する。
「明日も早いんだ、さっさとベッドに入っちまえよ」
「その前にちゃんと髪を乾かしてね」
いくら身体があたたまっていても、髪が濡れたままでは風邪を引く。そう妹に指摘され、アキラは逃げるように踵を返した。
「今日のサツキは小言が多い……」
クリスマスパーティーを楽しんだことで、心は大らかになっていると思ったのに。妹には逆らえない兄は、魔法で髪をあっという間に乾かし、ほこほこと身体が温かいうちにベッドに潜り込んだのだった。
24日間、朝からお付き合いくださいましてありがとうございました。
(追記 アキラの誕生日閑話は本編の閑話集にUPします。12/26はそちらをお楽しみいただけると嬉しいです)




