23 プレゼント交換
料理を堪能し、思い出話に花を咲かせた後は、プレゼント交換だ。
「みんなからのプレゼントはこの袋に入れてあります。で、くじを引いて出た順番に片手を入れて好きなのを一個だけ取ってもらいます。自分の用意したプレゼントは触ったらわかると思うから、ちゃんと避けて選んでくださいね」
一番はヒロだった。中の見えない袋に手を入れて、小さな布で包まれたものを選んだ。
「魔石のチャーム、じゃないですよね?」
「アミュレットだ」
贈り主はアキラだ。リンウッドに教わって作った疲労回復のお守りだ。狩りや討伐での疲労を少しでも軽減できればと考えて用意した。
「まだ売り物にできないレベルだから、気休め程度の効果しかないが」
「嬉しいです。さっそく明日から身につけますね」
連日の肉体労働で蓄積した疲労感は、まだ十代でも辛いものだ。ヒロはアミュレットを大切に懐にしまい込んだ。
二番目はコズエだ。彼女は目をつむり、最初に触れたものを手に取った。
「わぁ、いい香りがする。何だろう」
小さな木箱に入っていたのは、赤茶色い円錐形の石のようなものだった。
「それはお香なの」
異国雑貨を取り扱う店で見つけて買ったものだ。魔物との戦いで神経が尖っているときなどに、香りでリラックスできるといいと思いプレゼントに選んだ。
「嫌いな香りじゃないといいけど」
「花の香りだね、ありがとうサツキ」
三番目はシュウ。
「何がいいかなーっと、これ!」
彼は手が触った中で最も大きなものを掴んで取り出した。
「へー、何か模様になってるし、面白そー」
「パズルっぽいものです。手作りなので、あまり出来は良くありませんが……」
それは板を小さな直角二等辺三角形に切り、裏表を二色に塗り分けたパーツが、枠で囲んだ中にぴたりと収まるように作られていた。三角形の並べ方や配色でさまざまな模様を作って楽しめるようになっている。
「これ作るの大変だっただろ」
「配色のセンスと造形のセンスが問われるパズルだな」
コウメイとアキラも興味を示し、シュウに貸して欲しいと頼んでいる。楽しんでもらえそうだとヒロはホッと胸を撫で下ろした。
四番目はコウメイだった。
「これは、メモ帳?」
布を張った手のひらサイズの二枚の板に挟まれて、板紙の束が固定されている。墨芯を固定するくぼみもあり、閉じるとコンパクトにしまえるようになっていた。
「この布、コズエちゃんか」
「実用的すぎて恥ずかしいなぁ」
板紙の束をメモ用紙に持ち歩くことも多いのだが、ポーチや鞄に入れておいた板紙は、他の荷物に潰されてすぐにボロボロになってしまう。板紙の保護とメモの取りやすさを考えて作ったのだという。
「いいね、使いやすそうだし、思いついたレシピをメモするのに良さそうだ」
五番目はサツキになった。
「わ、ずっしりしてる?」
油紙で包まれたそれは、固形石けんだった。しかも彼女たちが普段使っているような安物とは違う、臭みのない上等の品だ。
「それなら洗った後の匂いとか気にしねーですむだろ」
シュウが選んだのは石けんの中でも贅沢品の部類だ。日常使いにはもったいない値段だが、薬草で匂いを消す手間が省けるし、何よりほのかな香りがとても心地よい。
「なんだか使うのがもったいない気がしますね」
「それ、女の子向けのヤツだってさ。使ってくれよなー」
「はい、ありがとうございます」
商店主から「恋人が喜ぶ品」と説明を受けていたシュウは、女の子に当たって良かったと安堵した。
六番目のアキラは、袋に残った最後の一つを手に取った。
「派手な箱だな」
「キラキラしてるけど、落ちついた色合いだろ」
コウメイの用意したプレゼントは、手のひらに載るサイズの小さくて薄い箱だ。ただしその表面は、染料と貝によって美しい幾何学模様が描かれ、丁寧に磨かれていて手触りも良い。
「この小さな箱は、何を入れるものなんだ?」
「なんでもいいぜ。なくしたくない小さなものを入れて持ち歩くんだってさ」
上流階級の人々が、大切なものを懐に忍ばせるための箱だ。指輪だったり、思い人の形見であったり、密かな手紙だったり。
「大切なものか……こんな小さな箱には入りきらないんだが」
「ちっちゃくて大切なものができたときに使えばいいだろ」
「そうか。ならしばらくは薬草を入れておこう」




