21 クリスマスパーティーをしよう!
「フライドチキン」
「ローストビーフ」
「ブッシュドノエル」
「つまり?」
「クリスマスパーティーしましょう!」
異世界にイエス・キリスト生誕祭は関係ないが、長年染みついた習慣は簡単に捨て切れるものではない。
「いいねぇ。どうせならターキーの丸焼き作りてぇな」
腕が鳴ると張り切るコウメイに、本当に作れるのかと、アキラは半信半疑な視線を向ける。
「丸焼きなんだから、ニワトリも七面鳥もたいした違いはねぇよ」
「違うだろ?」
違うよな? と仲間に視線で問いかけたが、全員が「さぁ?」と首を傾げるだけだ。
「今日は七面鳥を狩ろうぜ」
「……七面鳥なんて、この世界にいるのか?」
久しぶりに冒険者ギルドで情報を求めると、コウメイの説明に近い魔獣が南西の平原にいるらしいと教えられた。
遮るもののない草原に、黒くて長い首と太くて立派な脚の巨鳥がいた。
「七面鳥じゃねえな」
「……ダチョウ?」
「駿足鳥と言うらしいが……確かに、馬のような脚だな」
十羽ほどで群れを作り、飛ぶことよりも駆けるほうに特化した巨鳥の脚力は、攻撃モードの暴れ牛よりも速く草原を駆けるという。
「捕獲し縛りつけてから首を落とせ、と注意書きがあった」
どういう意味だと眉をひそめる五人に、アキラはメモに目を落とす。
「絶命と同時に断末魔かと思える鳴き声とともに走り出すらしい」
「死んでんのに、か?」
「死後硬直まで止まらないらしいぞ」
「首なしのダチョウモドキが大草原を駆け回るのかよ」
「……ホラーですね」
想像したらしいヒロが、嫌そうに顔をしかめる。
まずは捕まえ、全員で押さえつけてから屠る。そのためにコウメイらは三手に分かれ、二組が駿足鳥の群れを挟んで、待ち構えるシュウへと追い込む作戦を立てた。
比較的小柄な一羽を追い込んだのだが、駆け出した駿足鳥を見た瞬間、コウメイが焦りの声をこぼした。
「あ、やべぇかも」
駿足鳥は、暴れ牛の突進攻撃のような勢いでシュウに向かって行く。
「うおぉ――っ」
真正面から受け止めようとしたシュウが、跳ね飛ばされた。
「シュウさんが止めきれないなんてっ」
「錬金薬ありますっ」
「いや、大丈夫だ」
跳ね飛ばされたかと思えたシュウは、駿足鳥の首を掴んでしがみついていた。
「やった、シュウさん、捕まえましたよ!」
「捕まえたというか……」
「しがみついてるだけのような」
「やったぞぉぉ――っ!!」
シュウの雄叫びが草原に響くと、草に隠れていた縞柄鳥が一斉に飛び立ち、草原モグラは巣に逃げ込む。他の駿足鳥らまでが、シュウにしがみつかれた個体を追いかけるようにして、草原を駆け去ってしまった。
「行っちゃいました……どうします?」
「追いかけるのは無理だぞ?」
「シュウならしとめて帰ってくるだろ。他の獲物狩ってようぜ」
「他の獲物と言っても、全部逃げられましたよ」
遠くを見渡したコウメイは、草原の騒ぎにも動じず、悠々と草を食んでいる暴れ牛を見つけた。
「ターキーはシュウに任せて、俺らはローストビーフにするか」
残された五人は狩りなれた暴れ牛を手早く仕留めると、街道に近い目立つ場所で昼食の準備をしながら、シュウの帰りを待ったのだった。




